98話: 他校交流、セラフィオルへのご招待 ②
「すごーい!本当にお城みたい……」
「おい、上ばっか見て転ぶなよ。お前いつも足元危ねぇんだから」
他校交流会当日、俺はカイと並んでセラフィオル女学園の校門の前に立っていた。
去年行ったルナソールもお金持ち学校で凄い門構えだったけど、セラフィオルはそれとはまた違った物々しさがあった。
便宜的に校門って言ったけど、ここはまだ学校の敷地と外を隔てる橋を渡る為の門で、本当の校門はその先にあるみたい。
ちなみに俺とカイはその橋の前に設置された関門みたいな所で招待状と所持品のチェックを受けているところ。
「校内は撮影禁止だって!携帯しまっとこうかな」
「お前すぐ写真撮るもんな。気ぃつけろよ」
流石は現代の秘密の花園、この他にも色々な注意事項を受けて俺達はやっと橋を渡る事を許された。
橋を渡った先はいよいよセラフィオルの正門。外部からの視線を遮断する高い外壁が広大な敷地をぐるりと囲むこの学園に外部の客が入るための唯一の門であるそこは、屈強なガードマンが立っていて彼らの許可がないと開かれないらしい。何もやましいことはないけど、こんなに厳重だとなんか緊張するよね。俺はカイの後ろにちょっと隠れるようにして扉が開くのを待った。ゆっくりと開く正門の先には――
「わぁ……綺麗」
夢のように美しい、チューリップが咲き誇る豪奢な空間が広がっていた。
そのあまりに非現実的な美しさに俺は思わず圧倒される。まるでお伽話の中に入ったみたいだ。
「これって春の花だよね?なんで今の時期も咲いてるんだろ……」
「それは、花壇にかけられた気候魔術のお陰でございますのよ」
「え?」
何となく口にした疑問に答える声が聞こえて、俺は思わず後ろを振り返る。
「ご挨拶が遅れましたわね。私は本日、来訪者様のご案内を務めさせていただきますアテンダントのメイギスと申しますの」
そう言ってミルクティー色の巻毛を揺らしながら優雅に挨拶をする彼女はセラフィオルの特徴であるグレーのブレザーを身につけていた。
「は、はじめまして。クリスフィアさんからご招待いただいて来ました!フレンです」
俺が彼女の挨拶に返事を返すと彼女はにこりと笑って説明を続ける。
「セラフィオル女学院では本日、中央に見える校舎棟にて様々な催し物をご用意しておりますの。詳細はこちらの冊子でご確認なさってくださいな」
手渡された冊子は文化祭で配るには豪華すぎるハードカバーの本だった。表紙も売り物みたいで綺麗だ。
説明の中でメイギスさんが指し示したお城みたいな建物が校舎らしい。じゃあその周りのお屋敷みたいなのは何なんだろう?
「周囲にある学生寮には立ち入りが禁止ですのでご注意なさってくださいまし。寮以外の学内施設は見学のみ可能ですわ」
なるほど、さすがセラフィオル。寮一つとっても規模が違う。きっと一部屋の大きさもうちとは全然違うんだろうな。クリスフィアさんもあの中のどれかで暮らしてるのかな?
「説明は以上になりますわ。あちらのゲートから校舎内に入れますからどうぞ1日楽しんでくださいまし」
「あっ、ありがとうございました!」
流れるような説明と歓迎の言葉を告げて彼女は俺達にお辞儀をする。最初から最後までとても優雅でお手本のようなお嬢様だ。俺は彼女にお礼を言いながら改めて目の前に広がる広大な敷地を見回した。こんな凄い学校の見学ができるなんて本当に貴重な機会だ。他校交流って目的もあるけどそれ以上に純粋な好奇心で今から入るのが楽しみだ。
「そういえば、メイギスさん。クリスフィアさんがどこにいらっしゃるかご存知ですか?」
招待状には招待の言葉しか書いてなかったから、彼女がどこの組か俺は知らない。一言招待のお礼が言いたいと思い俺は聞いたんだけど
「クリスフィア様は本日は校内を回覧される予定ですから何処にいらっしゃるとはお伝えできませんの。理事長室なら伝言を賜ることもできると思いますわ」
メイギスさんも知らないみたいで、校内で偶然会うか、伝言を頼むしかないみたいだ。できれば直接お礼を言いたいけど運頼みになりそう。
「わかりました!ありがとうございます」
メイギスさんが上品な笑顔でこちらに手を振って見送ってくれる中、俺達は文化祭の会場である校舎内に入る為にゲートに向かう。もらった冊子に書いてある紹介もまだ読み始めたばかりだけどすごく凝ってて面白そう。どんなものが見られるのか今からすごく楽しみ。




