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72話:体育祭、種族混在大波乱の行方は ②

 午前の競技が全て終わって、体育祭は1時間のお昼休憩に入る。俺は携帯で両親と連絡をとりながら待ち合わせ場所に向かいつつ、エリオ君とルカを探した。


「ルカ!エリオ君!こっち来て!」

「……フレン?」

「なんですか、先輩?」


 不思議そうにする2人を見つけて回収しつつ俺は両親と落ち合う。


「久しぶり!迷わなかった?」

「大丈夫よ。衣装似合ってるわねぇ」

「遠くからでもよく見えたよ。疲れただろうからゆっくりご飯食べてね」

「えへへ!そうでしょ!お弁当楽しみ~」


 お母さんとお父さんからそれぞれ声をかけられて、俺は久しぶりに2人に会えた嬉しさから自然と笑顔になる。応援を見てくれたのも嬉しい。


「先輩ってご兄弟いらっしゃったんですね。」

「え?」


 両親と話している俺に、エリオ君が話しかけてくる。俺は最初エリオ君が何を言ってるのかわからなかったけど、すぐに彼の勘違いに気がついた。


「もー!エリオ君ってば、冗談が上手なんだから。これはうちの両親!こっちがお母さんで、こっちがお父さん!似てるでしょ?」

「……は?え、ご両親……?若っ、そんな事あります!?」


 俺と同じ春薔薇色の髪をショートカットにしてるお父さんと、薄灰色の瞳のお母さん。俺は全体的な雰囲気はお父さんに、目元や笑い方はお母さんに似てるってよく言われる。


「まぁ、学生さんと間違えられちゃった!嬉しいわぁ」

「僕もまだまだ若く見えるんだね」


 エリオ君の勘違いにまんざらでもない2人に俺は連れてきた後輩達を紹介する。


「こっちが去年の俺のペアのルカ。それでこっちはルカの弟のエリオ君。2人ともすごく魔法が上手なんだよ!」

「はじめまして、エリオです。先輩にはお世話になっています」

「……」


 優等生らしく綺麗なお辞儀で挨拶をするエリオ君と、いつも通りぼんやりと立っているルカ。エリオ君には両親を紹介する約束をしてたけど、ルカには言ってなかったから急に連れてきてびっくりさせちゃったかも。そう思って俺はルカの方を見たけれど、ルカは俺のお父さんの方を眺めて静かにしていた。


「お母さん、ちょっといい?後ろ向いて!ほらエリオ君、これが妖精族の羽」

「あっ……ありがとうございます」

「うふふ、私ので良ければどうぞ」


 前にエリオ君は妖精族に興味を持ってたから、この機会に純血の妖精であるお母さんの羽を見せてあげようと思っていたんだよね。


「それじゃ、お互いに挨拶もできたし行こっか!」

「先輩?行くってどこに……?」

「2人ともご飯まだでしょ?俺達と一緒に食べよ!」


 俺は2人の手を引いて両親が確保してくれたスペースに進む。


「えっ……いいんですか?」

「もちろん!」

「……フレンと一緒ならいい」

「うん、一緒だよ。でも今日は膝に乗るのなしね!」


 それぞれの反応を見ながら俺は返事をして笑いかけた。ご両親が来ないって言ってた分、一緒に楽しく食べてくれたらいいな。この計画は事前にお母さんに相談してたからお弁当の量も十分だ。


 (好きなおかずたくさんあるといいなぁ)


 そんな穏やかな気持ちでレジャーシートに座る。午後からもたくさん応援する為に、俺はお弁当を口いっぱいに頬張った。


 ◇


 ご飯を食べてひと段落した頃、俺は応援席に戻るために一足先に席を立った。午後1番の競技の応援があるから、段取りを見返そうと思ったんだよね。そうして昼休みでまばらになった観客席を通りがかった時――


「チア衣装似合ってるね、フレン」

「……っジ、ジン!?どうしてここに……」


 聞き慣れた、甘く、軽い笑い声が耳に入る。スルーしたいけど、無視できないその声に俺は足を止めて振り返った。


「他校交流の一環。フレンともっと仲良くなりたいから応援しにきたよ」

「俺はジンと仲良くするつもりはないんだけど……」


 正式なルートで発行される入校証明を片手にジンが俺の隣にくる。この行事は外部からの人も来るからこの可能性は考えるべきだった。でもこんな大人数の中ピンポイントで俺のこと探せるなんて事ある?


「そうかなぁ?俺とフレン、だいぶ仲がいいと思うんだけど、だってほら……」

「……だからこれは使いやすいから使ってるだけだってば!」


 ジンの真紅の瞳が見つめるのは俺の髪を纏めている髪留め。去年の冬月祭の時にジンから押し付けられたそれは今まで使ってたどのヘアアクセサリーより使いやすくて、送り主というマイナスを差し引いても十分なほど使い込んでいる。


「午前中の応援見てたよ。フレンって華があるからこういうの似合うね。今度俺にもやってくれない?」

「なんでジンにしなきゃならないわけ?……それに、今回は立ってるだけじゃないし、なんか文句ある?」


 前回の文化祭ではジンからちくりと胸を刺す一言をもらったので、俺は先手を打って強めの言葉を返す。


「文句なんてないよ。すごく上手だったし、可愛かったしね。あぁ、でも気をつけて。今のフレン、とても魅力的だから」

「は?それってどういう……?」


 返ってき不可解な言葉に俺が首を傾げていると、急に腰を抱かれてジンと顔が重なりそうになる。今更だけど、ジンって距離近過ぎて怖い。


「なるべく、今日はお友達と一緒にいたほうがいいと思うなぁ。俺が近くにいてもいいんだけどね?」

「誰があんたと!……ていうか、外部客は応援席には入れないでしょ。さっさと外部席に戻ってよ」


 言ってる途中、一瞬真紅の瞳からヘラヘラとした雰囲気が消えた気がしたけど、振り払っているうちにいつものジンに戻ったので気のせいかもしれない。


「それじゃ、またね、フレン。応援合戦頑張って」


 ヒラヒラと手を振って人混みに紛れるジンの姿はじきに見えなくなって、俺は釈然としないまま、午後の応援の準備に戻った。


――まさかこの後あんなことが起きるなんて、この時の俺は全く予想していなかった。


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