71話:体育祭、種族混在大波乱の行方は①
体育祭の朝は、活気がありつつとても静かだった。6月の少し暑い気温が生徒達の熱意に呼応してる様で、何が起こるわけではないけどワクワクする。
チア衣装に着替えて集合した校庭、各ブロックのリーダーが選手宣誓をして体育祭が始まった。
体育祭は10クラスを2クラスずつ縦割りで5ブロック(赤、青、黄、緑、紫)にしているから、生徒席は校庭を囲むように五角形に配置されている。ちなみに俺とカイ、ルカ、エリオ君は紫でクロードは青。
観客席には生徒の家族、それに他校からの見学も来ていてものすごい人数が集まっている。
俺はお昼にお母さんと合流する約束をしているけど、この人数だとこまめに連絡取らないと会うことすら難しそうだ。
競技としての応援合戦は中盤以降だけど、早速最初の競技の応援が始まるので俺はマリア達と合流して準備をする。本番なので髪型も統一、俺もマリアに合わせたポニーテールにしながら合図を待った。
競技が始まってからは一瞬だった。俺は選手一人一人が全力を出せるように声をかけて応援する。これって言葉にすると簡単だけど結構な重労働だ。全競技全員で応援すると応援合戦までもたないのでローテーションで応援する形式になっている。
「あっ、次カイのやつだ」
競技アナウンスが1キロリレーの集合をかけ、応援ローテーションが俺に回ってくる。俺は知り合いが出てる競技中心にシフト希望を出したから結構シフトが変則的なんだよね。
応援席で準備をしながら校庭を眺めると、選手がスタートラインに一列に並んでいるのが見える。その中から紫のハチマキをつけた列を見つけて、俺はカイがアンカーだということに気がついた。
「今年の赤のアンカー、4年のフィジカル特選の人なんでしょ?やばくない?」
「青の1年生ってユニコーン系らしいよ?」
チア仲間から有力選手の情報が回ってくる。結構配点の高い競技なだけあって、実力派が揃っているらしい。カイ大丈夫かな?
そうしているうちにピストルが鳴って第一走者が一斉にスタートする。1人1キロという長距離なのに、みんな俺の全力より全然早い速度で走っている。どんな体力してたらそんなことできるんだろう?
続く第二走者で少しずつ横並びがずれていき差が生まれ始める。だけどまだどこが勝つかは全然予想できない差で俺達は大きい声で応援する。今の所紫ブロックは5人中3番手だ。続く第三層者、ここで話題のユニコーン君が前を追い抜いて2位との差を広げていき1位に躍り出る。そしてアンカー、少し遅れが出て4番手になったうちのブロックにバトンが渡った時、一位との差は200メートルはあった。校庭の4分の一周くらいの差はなかなか大きい。
「カイー!!!頑張れ!!」
本来の応援の言葉じゃないけど、俺はカイに向かって大きな声で叫んだ。この距離じゃ聞こえないはずだけど僅かにカイがこっちを向いた気がして――
「うそ、あの紫の人早くない?」
「赤組のアンカー抜いた!?マジで!?」
カイは文字通り風のようなスピードで加速したかと思ったら、気がついたらゴールテープを切っていた。どよめく様な歓声の中、順位がアナウンスされる。俺はポンポンを持ったまま選手退場口に走った。
「カイ!!おめでとう!!すごくかっこよかった!!」
「っ!!お前っ、馬鹿、今抱きつくんじゃねぇ!おいっ」
走ったばかりだからかカイの体温はすごく熱い。練習サボるとか言ってたけど、きっと本当はしっかり準備してたからこその結果だって俺は知ってる。だからそれも込めて労いたかった。
「俺いっぱい応援したよ!届いてた?」
「っ……、あー、まあ、少しはな」
俺の言葉にカイは照れた様に目を逸らして髪をかきあげる。素直じゃないけど、少しでも応援が役に立ったなら嬉しい。あとでチアの皆にも教えてあげよう。きっと皆もっとやる気になるから。
◇
さて、うちの体育祭の午前のメイン競技といえば言わずとも知れた魔法合戦だ。魔術の名門としても知られるうちの学園らしく、提示されたお題に沿った高度な魔法をどれだけ使いこなせるかを競うこれにはエリオ君が出場する。この競技はリレーと違って各ブロックから代表一名だけが参加するので基本的に参加者は高学年になるのが普通だ。1年生で参加してる人なんて見たことない。俺は応援の為ポンポンを用意しながら校庭に立つエリオ君を見つめる。
「えー!?うちのブロック一年生なの!?大丈夫かな……あっでも可愛い」
「黄ブロック4年の魔法専攻コースらしいよ、やばくない?」
「うちのってあの水色の子だよね、どんな子か知ってる?」
チア内でもやっぱり一年生っていうのが珍しくてエリオ君の事が話題になってる。話を振られたので俺は
「すごく魔法が上手な子だから大丈夫!でも緊張してるかもだから応援頑張ろ!」
とみんなに笑いかけた。
俺達が応援する中、開始のピストルが鳴り競技が始まる。提示された魔法は炎、氷、雷の複合応用魔法。炎を扱いながら溶けてしまう氷をどう処理するか、そして扱いにくい雷魔法をうまく制御できるか、というやり方を考えるだけで頭がパンクしそうなお題だ。
「きゃっ!?」
「今の暴発?」
大きな爆発音が聞こえて観客席がざわつく。
見ると赤ブロックが氷を溶かし過ぎて軽い水蒸気爆発を起こしているみたいだ。幸い規模は小さいけれど、近くにいた参加者の安否が気になった俺は隣のブロックを見た。だけどさすがは魔法のエキスパート達、それぞれシールドを作って事なきを得ていて一安心する。
『そこまで!選手の皆さんは魔法を止めて提出してください』
アナウンスが流れて競技の前半が終わる。この後は審査員による評価の時間だ。いつもならここで誰が1番かななんて議論になるところだけど――
「あの子何者?すご過ぎない?」
「綺麗……雷魔法であんなことできるの知らなかった」
今回はエリオ君が強過ぎた。
彼が提出したのは、氷でできたお城の上に炎魔法と雷魔法を反応させたオーロラが出現する魔法で、技術的にはもちろん、視覚的にもとても美しいものだった。繊細な魔法陣と難易度の高い正確な詠唱で作られたそれは勝敗以前に感動を呼び、観客席は写真を撮る人でいっぱいだ。
審査結果も当然一位、ずっと魔法に真剣で努力していたエリオ君にぴったりの結果だった。遠目で彼が同じ組であろう生徒に囲まれているのが見える。前にエリオ君は友達なんていないって言ってたけど、周りの子達の顔を見たらそれは嘘だってわかる。競技の結果だけじゃないその温かい光景を、俺はこっそり遠くから見守った。




