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70話:体育祭準備④

 ペア授業の監督最終日、俺はルカに体育祭の進捗を問いかけた。


「ルカは練習どう?頑張ってる?」

「……コース?の説明聞いた」


 その返事から今の所ルカの練習も順調そうで安心する。逆境トライアスロンは前日まで会場が設営されないからこの練習期間はコースの予習と後は自主練がメインらしい。普段の授業と違ってちゃんと説明を聞いているところに、ルカなりにやる気が出てきたんじゃないかなと思う。


「エリオ君は?順調?」

「簡単すぎて拍子抜けですね。……せ、先輩はどうなんですか?あまり運動できなさそうですけど」


 予想通りの答えと、若干失礼な俺への見解にエリオ君らしさを感じる。でも事実なので否定もできないところが絶妙だ。


「もー!エリオ君ってば失礼だなぁ。部屋でも自主練してるからちゃんとできるようになってるよ!」

「っ……そうなんですね」


 俺がその言葉にエリオ君の腕を掴んで抗議したら、耳を赤くしてそっぽを向かれてしまった。基本的に態度は丸くなったけど、エリオ君のこのたまに出てくるツンツンしたところもなんだか子供っぽくて可愛いんだよね。


「ルカも自主練してるの?」

「……?」

「えっ、してないの??」


 逆境トライアスロンは陸海の逆境を再現した競技だから水泳とか、登攀とか色々やる事はあるはずなんだけど、ルカはよくわかってないって顔で俺を見つめる。


「ルカ、お願いだから怪我だけはしないでね!」

「……うん」


 俺のお願いにルカは素直に頷いてくれるけど、ルカってぼんやりしている所もあるし、それを信じて良いのかは難しい所だ。


「あのさ、エリオ君、これは本当に大丈夫なやつ?」

「……ちょっと自信無くなってきました」

「そっかぁ……」


 前回は肯定的だった同族のエリオ君でさえこの返答なので不安すぎる。体育祭まで後1週間、勝敗以前に誰も怪我とかしませんように!


 ◇


「じゃあ次、フレンやってみて!」


 体育館でのチア練習中、マリアの声かけで俺は立ち上がる。今はセンターを決めるオーディションの真っ最中。というのも結局チアのセンターは全員でオーディションしてみて、いいと思った人に投票する形式になったから。

 確かに誰でもチャンスがあるこのタイプなら遺恨も残らないし納得感もある。オーディションは俺で最後だからこの後は投票だ。

 俺は自分の番が終わった後、マリアの名前を書いて投票用紙を提出した。これは彼女がリーダーだからっていう理由だけでなく、誰よりも努力してみんなを引っ張ってくれている姿が純粋にかっこいいと思ったから。


 投票後、マリアが開票して集計が始まる。その後チアチームの幹部を集めてマリアが何か話し始めた。それが終わるのを待ちながら、俺はできればマリアがセンターだといいななんて考えていた。


「それじゃあ結果発表するね」


 話し合いがまとまったのかマリアが黒板の前に立って文字を書き始める。


「同率一位で私とフレン、決選投票にするか迷ったけど、話し合いの結果ダブルセンター式にする事にしたよ!」

「えっ!?」


 予想だにしない結果に俺は驚く。

 マリアが選ばれるのは予想通りだった。俺も入れたし、みんなそう思ってるだろうし。意外なのは俺に票が入ってた事。というかダブルセンターとかありなの!?さっきの話し合いってこの事について?


「それじゃ、フレン一緒によろしくね!」

「本当に俺もやるの……?」


 マリアが笑顔で握手してくれるけど、現実味がない。俺だって練習は手を抜かずにやってたけど、選ばれるような立派な熱意とかは無いし……。もし顔で選ばれてるなら前の文化祭と同じだ。文化祭はそれでよかったかもしれないけど、今回は趣旨が違うと思うので辞退しよう。そう思って俺がマリアに理由を聞いてみたら


「フレンへの投票理由、華があるってのは大前提だけどそれ以前にみんなフレンの努力を知ってるから選んだの!」

「俺の努力?」

「フレン最初1番下手だったけど、翌日には良くなってて、その後もずっと自主練してたでしょ?」


 やっぱり俺最初誰から見ても下手だったんだという事実にちょっと恥ずかしくなる。だけど、それよりみんなが俺の顔じゃなくて練習を見てくれていたことに驚きと喜びを感じた。可愛い顔で立っているだけでいい役ではなく、練習を思いっきりしてみんなを応援するセンターならやってみたい。


「ありがとう!俺、頑張るね!」

「うん!絶対優勝しましょ!」


 俺はマリアと指切りして笑い合う。最初は小さな動機で選んだチアだったけど、今はみんなの為にできる限りのことをしたいと、そう本気で思った。


 ◇


 チアの練習時間が終わり、教室に戻ってのホームルーム。いつも通りの流れかと思っていたらエミ先生が少し暗い顔で連絡事項を話し始める。


「最近、近隣で種族特性誘発剤を人にかけて逃走する通り魔が出没しています。外出制限が出ているので注意してください」


 通り魔という言葉に教室がざわつく。

 種族特性誘発剤は、俺達が普段隠している特性を無理矢理活性化させて本来の姿にさせる物だ。俺のように羽だけならまだしも、巨大化やフォルムチェンジまでしてしまう人もいるのでこれはただの悪戯では済まされない。動機もわからないし不気味な話だった。


 俺は嫌な気持ちになりながら帰路に着く。だけど体育祭まで後数日、残り時間が短い中余計なことを考える暇はない。心に不安が残りながらも、俺は今日も自主練をして眠った。今はただ、自分にできることを精一杯するしかないよね。


 ◇


『明日はお父さんと応援に行くわね。お弁当作るから楽しみにしてて!』


 体育祭前日、携帯にお母さんからメッセージが入っていた。冬季休暇に帰省して以来だから会うのは5ヶ月ぶりだ。


『お弁当楽しみ!新しくできた後輩も紹介するね!』 


 明日はいよいよ体育祭本番。みんなの努力が精一杯報われますように。そんなことを願いながら俺は送信ボタンを押して眠りについた。


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