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119話:文化祭反省会②

「昨日の学園演劇、トラブルはあったが、その分盛り上がりは凄かった!大成功だ、皆ありがとう!!」

「ミカエラさんやっぱり圧巻だったよ!流石プロアイドル!!」


 わいわいと感想を話しながら反省会は進んでいく。去年と違い、出演後のキャストの安全まで考えられていたからポジティブな意見が多い。


「てか今日クロード先輩来てないんですか?一緒に打ち上げしたーい!」

「クロード先輩はキャストではないからな!だが僕も感謝を伝えたいぞ!今度皆でお礼しに行こうじゃないか!」


 俺は元々ここの裏方だから参加してるけど、クロードはそうじゃないので今日は来ていない。だけどあれだけ大活躍してたから来て欲しいという気持ちもわかる。

 そんな感じで盛り上がってる中、俺は端っこの方に座っているエリオ君に近づいて声をかけた。


「エリオ君もお疲れ様!皆も褒めてたけど魔法凄かったよ!シールドもありがとね」

「あ、ありがとうございます……。その、先輩、脚……」


 俺の脚を見てエリオ君が眉を歪める。昨日舞台で痛めてしまったそこは、制服のズボンで隠れてはいるけど、隙間から包帯が見えてしまっていたみたいだ。責任感の強い彼の事だから、自分の力不足だって勘違いしてしまってるのかも。


「あー、これは飛び込んだ時に自分でやっちゃったやつ!エリオ君のおかげで他の怪我はないよ!ありがとう」

「そうなんですね……。でも、僕にはあれくらいの事しかできなくて……」


 その、いつになく気弱な言葉に、俺はエリオ君がルカの暴走を止められなかった事に責任を感じているという事に気がつく。


「十分凄い事だよ!あんな大きくて分厚いシールド普通作れないし、あれのおかげでクロードも戦いやすかったと思う」

「……っ、そう、ですね。……僕ではあれを、倒す事はできませんでしたから」


 フォローしたつもりだったけど、エリオ君の返事は弱々しく、余計に暗くなってしまった。いつもは声から感じる自信も今日は感じられない。暴走したルカが生み出した竜は規格外の魔力を持っていたし、あんなの彼じゃなくても対応できなくて当たり前なのに。


「ほら、クロードって四年生だし、エリオ君はまだ一年生じゃん。比べちゃダメだよ」

「……っ、そんな次元の話じゃないのは先輩だってわかってるでしょう?あの竜は僕よりも大きな魔力を持っていました。あんなの倒せるわけがないんです。なのに……」


 そう言ってまたエリオ君は俯いてしまう。

 前にエリオ君は言っていた。竜族は自身の強さにプライドを持った種族だと。そんな彼が邪竜以外に自分より強い相手を目にしてしまったショックは俺が考えるより大きいのかもしれない。弱さを見下す事は無くなったけど、今でも彼にとっては強さこそがアイデンティティなのだろう。


「でも、あの時一番最初に動いたのはエリオ君だったよね」

「え……」


 それでも、俺は伝えたかった。強さだけが価値じゃないよって事を。


「クロードが飛び出す前にシールドを貼って、俺を守ってくれたのはエリオ君だよ」


 自分だって危険な場所にいたのに他の人を守る事を優先してた勇気はエリオ君にしかないものじゃないかな。それに気づいて欲しくて俺は言葉を続ける。


「守ってくれてありがとう。誰がなんて言ったってエリオ君は凄いよ。エリオ君が否定しても俺が保証する」

「せんぱ……い」


 エリオ君の目が見開かれてその深緑の瞳と目が合う。それはまだ自信なさげに揺れていたけど、俺の言葉は届いたみたいだった。


「ほら、まだエリオ君昨日の感想言ってないでしょ?反省会なんだから何か言おう?」

「は……はい」


 俺はエリオ君の手を引いて前の方の席に連れて行く。エリオ君は昨日とっても頑張ってたから皆からもたくさん褒めてもらえるはず。それで少しでも元気になってくれたらいいな。


 ◇


 こうして、色々あったけど反省会は無事に終わった。――筈だった。


 帰る準備をしていた俺に、天使と称される完璧な笑顔を浮かべたミカエラさんが声をかけてくる。


「フレン先輩、この後少し時間いいですかぁ?」


 一見都合を伺っているようで、断るという選択肢を許さない物凄い圧がここにはある。

逃げ場のない教室の片隅で、俺は首を縦に振る事しかできなかった。

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