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115話: 文化祭、波乱の学園演劇とライブ④

「遅くなってごめん!今着替えるね!!」

「前の演奏押してるからまだ大丈夫!フレンの衣装これだよ!」


 駆け足で入った会場である体育館の控室ではライブメンバーがバタバタと忙しなく動き回っていた。特にマリアは数人に囲まれて打ち合わせもしててかなり忙しそうだ。


「遅かったな、なんかあったのか?」

「あ、カイ。学園演劇見てたらちょっとね……」


 俺が荷物を置いて更衣室の空きを待っていたら、機材の準備をしているカイに声をかけられる。余談だけどカイはいつの間にかすっかり機材係として定着していた。多分このままだと打ち上げにも誘われると思う。


「……ていうかお前、脚……」

「フレン!!個室更衣室開いたよ!!すぐ人来ちゃうから早く!!」

「わかった!!……じゃあまた後でね、カイ!」


 俺は衣装を持って開いたばかりの更衣室に飛び込む。狭い更衣室で、ちょっと着るのが難しい衣装を悪戦苦闘しながら身につけて外に出た。


「音源確認して!ローテーション表最後に目を通して頭に入れてね!緊張で飛んだらその時は元気に踊ってくれたらいいから」


 マリアがよく通る声でメンバーに声をかける。ローテーションは昨日も確認したけど、最後にちゃんと目を通して安心したい。


「チアライブ出演まで後5分です!入場ゲートに並んでください!」


 係員の人の声で俺達は舞台袖の入場ゲートに並ぶ。緊張もすごいけど、どこかワクワクとした高揚感に包まれて俺は入場アナウンスを待った。


 ◇


 チアライブは練習以上に順調に進んでいった。

 マリアの心に届く力強い歌声に合わせて、ライブメンバーが全力のチアパフォーマンスを繰り広げる。その動きに合わせて会場は歓声に包まれ、見ている人が皆笑顔になっていく。


 (よく見えないけど……あれ、ルカとエリオ君だよね?)


 会場の端の方に見慣れた白黒と水色が見える。兄弟でお揃いの緑色の瞳とそれぞれ目があった気がしたので俺はアドリブでその方向に手を振りながら小さく小指を立てるポーズをした。細かい表情までは見えないけど、少しでもこれが学園演劇で頑張った2人の力になったらいいな。


 (……え、もしかしてあれ、ミカエラさん!?)


 会場のVIP席、満席の会場内でも少し余裕を持って作られたその席で見覚えのあるダークレッドが目に留まる。彼女とは仲がいいというわけでもないし、むしろあんまり好かれてない気もするから下手なことはできない。だけど少しでも楽しんで欲しいからその気持ちを込めて笑いかける。その直後俺はポジションを変えるために振り返ったから彼女がどんな反応をしたのかは確認できなかった。


 (あ!クロードも見てくれてる!)


 俺は会場の割と前の方の席にクロードを見つける。この距離だと表情がよく見えるんだけど、クロードは心配そうに俺を見つめていた。一応学園演劇会場を抜ける時にライブに行くって連絡のメッセージ入れてたけど、それでもさっきの今で心配かけたままだから仕方ないよね。でも、心配ばかりで楽しめないのは申し訳ないから俺はクロードに向けて特別なアピールをすることにした。ちょっと恥ずかしいけど、マリアからここぞって時にするといいって言われていた投げキッス。歌うパートじゃないから口パクで助けてくれてありがとうって伝えるのも忘れない。まあクロードに上手く伝わったかはわからないけど、やれる事はやったはず。


 そんな感じで、全力を尽くしてパフォーマンスをする中、3曲目の俺のジャンプパート。俺は舞台に用意された台から普段通り跳ぼうとして、突如右脚に妙な違和感を感じてバランスを崩す。


 (あ……これ、着地まずいかも……)


 重心が崩れて上手く着地の脚が出せない。もしかしてこのまま床に落ちてしまうかもしれない。

 怖くなって目を瞑った瞬間、俺は温かい感触に包まれていた。


「……え?」


 目を開けると俺はカイにお姫様抱っこの体制で受け止められていた。機材ブースが近かったから、異変を察知したカイが咄嗟に助けてくれたみたいだ。


「さっきお前動き変だったから……立てるか?」

「う、うん。ありがと……カイ」


 ジャンプはできないけど後の動きは基本のチアだけだからなんとかなりそう。俺はそれを手早く伝えて、カイに下ろしてもらい、何事もなかったかのようにライブを続けた。観客の皆は今のも演出だと思ったみたいで、さっきより歓声も大きくなっている。

 そのままの勢いでマリアがラストスパートを歌い上げ、チアライブは大歓声の中幕を閉じた。


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