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113話: 文化祭、波乱の学園演劇とライブ ②

「凄い人だな……フレン大丈夫か?」

「ありがと、クロード。俺達の席はあっちみたい」


 お昼ご飯を食べた後、俺とクロードは学園演劇の舞台である校庭に出ていた。人混みに押し流されそうになった俺を腕で囲うようにしてクロードが支えてくれて何とか歩ける感じの客入り。そうしてたどり着いた座席はキャストの知り合い用の舞台にかなり近い特等席だった。


「あ!エリオ君だ」


 舞台袖では衣装を着たエリオ君が見えた。かなり集中してるのがここからでも見て取れる。繊細なコントロールが必要な演出を担当してるもんね。邪魔になったらいけないから手を振るのはやめておこうかな。なんて思ってたら、エリオ君のクラスメイトらしき子達が大きな声で彼を呼んでいるのが見える。確かあの子達夏星祭で一緒にいた顔だからエリオ君がチケットあげたのかも。

 ちなみにルカはまだ見える範囲にはいなかった。出番は後半だし裏で休んでるのかもしれない。


「ミカエラちゃーん!!!今日も可愛いー!!」

「L!O!V!E!ミカエラ!!」

「小悪魔族の天使ミカエラ!!最高に可愛いよー!!」


 そんなことを考えてたら突如観客席が大歓声に包まれる。見ると舞台袖で衣装に身を包んだミカエラさんが手を振っている。


「わぁ、凄い歓声……さすがアイドル」


 これだけ見ると本当に天使みたいで、普段の裏方いびりが嘘みたいだ。去年の俺と同じ建国の姫の役だけど、彼女の衣装は胸元が大きく空いていて、セクシーなのに下品じゃない華やかなデザインになっている。


「フレン、知り合いか?」

「え?クロード、ミカエラさん知らないの?人気アイドルだよ??」

「いや、フレンの方に手を振っているから知り合いかと……」


 ここ最近は忙しくてあまり詳しくないんだと言いながら伝えられた言葉の通り、確かに彼女は俺のいる方に手を振っていた。だけどそれは俺にじゃなくて、俺の隣にいるクロードに向けたものだということが俺にはわかる。だけどそれを伝えた方がいいのか勝手にバラさない方がいいのかわからなかったので俺は曖昧に返事を濁すことにした。


「裏方で面識あるから……かな?」

「そうか。同じ役だから仲良くなったのか?」

「うーん……どうだろうね?ほら、ミカエラさん一般人じゃないから……」


 俺が何と言えばいいかわからなくなってちょっと困ってきたタイミングでガネマルが舞台に立ち、開幕のブザーが鳴る。うまく会話が終わったのでホッとしながら俺はこれから始まる物語を見逃さないように舞台を見つめた。


 ◇


 学園演劇はリハーサルの通り順調に進んだ。

 校庭の舞台で、エリオ君の演出する冬の厄災から始まり、建国の王を中心に建国の偉人達がそれを討伐していく伝説通りの流れが再現されていく。


「上着ありがとクロード、もう寒くないから返すね」

「ああ、また必要になったら言ってくれ」


 冬の厄災のシーンで冷えてしまった俺はクロードが貸してくれた上着を羽織っていた。だけどそのシーンが終わってからは寧ろ劇の展開の盛り上がりに体温が上がって熱いくらいだった。

 この間見た時もかなりのクオリティだったけど、やっぱり本番は迫力が違った。その中でも一際凄いのがミカエラさんだった。


「アイドルって凄い……」


 思わずそう呟いてしまうほど、彼女の演技は圧倒的だった。声の張り方、視線の動き一つとっても格が違う。おそらく彼女は小悪魔族の固有能力を全力で使った上で使いこなしている。見るもの全てを虜にするその存在感に俺は純粋に感動していた。他の小悪魔族の芸能人だってこんなにできる人はそういないから相当の努力をしたんだろう。前に盛り上げるのは当然って言ってたし自分の仕事に誇りがあるんだと思う。


「あ!ルカだ!」


 物語の終盤、最後の厄災である夜の厄災が出てくる場面で、演出担当のルカが舞台袖から姿を見せる。ここの演出は校庭全部を覆う空間魔法で、これはルカにしかできない魔法だ。


「嘘……今って昼だよね?」

「空が真っ暗になったんだけど!?」


 リハーサルの時に見たのと同じ本物みたいな夜空が空を覆っていく。それに合わせて観客席はザワザワとし始め、皆空に注目した。そこで夜空が形を変えて夜の厄災の魔物に変化して建国の偉人達に襲いかかるというのが本来の流れ……の筈だった。


「あれ……ルカ、どうしたの……?」


 舞台上にいるルカが観客席に目をやり、俺の方を見たので俺は応援の意味で手を振った。本当にただそれだけのやり取りの直後、舞台の様相は嵐のように一変した。

 本来複数の人間サイズの魔物の幻影が現れる演出だった筈の場面に、夜空を覆うほど大きな竜の幻影が現れる。こんなの予定になかった筈だ。


 (あの後演出が変わったのかな……でも)


 舞台の上にいるキャストの顔を見たらこれが予定外の出来事であることは明らかだった。観客席の盛り上がりとは打って変わって皆明らかに怯えている。それに周囲に蔓延する魔力圧が重くなってるのにも気がついた。


 (もしかしてルカ、暴走してる……!?)


 俺がそんなことを考えてる間にも幻影の竜は空を暴れ回り、一直線に舞台上のキャストの方に飛び込んでいく。


「あ……」


 それに驚いてキャストが散り散りに逃げる中、ミカエラさんだけがその場に残っていた。舞台近くの席に座っている俺からは彼女の表情がよく見えて、それで俺は気がついた。


 (これが事故だってわかったらお客さんが怖がっちゃうから逃げられないんだ……)


 正常な判断とは言えないかもしれない。だけど、彼女はきっと心の底からのアイドルだから、自分から逃げることはしないのがわかってしまった。きっとそれが彼女の種族としての誇りだから。それを止めるのは彼女の誇りを傷つけることかもしれない。


「でも、それでも……っ」


 気がついたら俺は1人観客席から駆け出して、舞台の上、ミカエラさんに襲いかかる竜の前に飛び出していた。


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