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109話: 文化祭準備、大型新人襲来!?④

「あれ?クロード学校にいるの珍しいね」


 文化祭準備開始から1週間ほど立った放課後、職員室近くの廊下で俺は久しぶりにクロードを見かけて声をかけた。


「ああ、書類の提出があってな。フレンは学園祭の準備か?」

「そうそう!さっきまで学園演劇の裏方やってだんだよね」

「今年も出るのか?」


 クロードにはまだ今回の文化祭のことを話してなかったから、俺はこの機会に色々共有することにして話し始めた。


「それで、マリアに誘われてチアライブにも出ることになったんだよね~」

「そうか……、だがそんなに掛け持ちして体は大丈夫なのか?無理は良くないぞ」


 若干過保護すぎる質問だけど、クロードと比べて俺は体力がないから仕方ないかも。なんとなくだけどクロードって小さい頃の俺のイメージで聞いてそうだよね。


「俺もそれは少し心配だったんだけど、最近体力ついてきたから結構平気!」

「体力……、何かしてるのか?」

「実は先月からカイとトレーニングしてるんだよね。週に2、3回も運動してるの偉くない?」

「………そ、そうか。……偉いな」


 最初はきつかったけど最近は割とついていけるようになった。だからそれを褒めてもらえるかなって思ったんだけど、思ったよりクロードの反応が良くない。


「前はクロードが見ててくれたけど、今は忙しいし、カイってあれでいて教え方上手いから結構続けれてるんだよね」

「……っ、そう、なんだな」


 やっぱり返事の歯切れが悪い気がする。もしかしてクロード、実習続きで疲れてるのかな?あんまり引き留めるのも良くなさそうだし、早めに解散した方がいいかも。


「それじゃ、クロードまたね!………クロード?」


 俺はそのままチアライブの合同練習に行こうと思って歩き始めたんだけど、その俺の腕をクロードが掴んで引き留めていた。


「どうしたのクロード?まだ何か話したいことあった?」

「あっ………いや、なんでもない。急に悪かった」


 別に俺は気にしてないけど、クロードの方がなんだか傷ついたみたいな顔をしていてそれが少し気になった。だけどクロードはそれ以上何も言ってこなかったし、練習の時間が近づいていたので俺は後ろ髪をひかれながらその場を後にした。


 ◇


「カイ!それそっちの方持っていって!違う右のやつ!!」

「どっちだよ……はぁ、めんどくせぇからどっちも持ってくぞ」


 文化祭1週間前のチアライブ練習の今、俺はカイに体育館の機材運搬手伝いをしてもらっている。

 ライブメンバーは俺以外皆女の子だし、俺も非力な方だからこういう時男手が足りなくて困るんだよね。だから、クラスの出し物の準備をサボってたカイに声をかけてライブの裏方手伝いをしてもらってるってわけ。

 ちなみに今日が初ではなく、結構やってもらってるから最初はカイのことを怖がってたメンバーも今では割と普通に接するようになっている。イメージ向上を手伝ってあげたわけだからカイには感謝されてもいいと思う。


「ねえ、今日の裏方いびりどんなだった?」

「相変わらずミカエラってきっついねー」

「あはは、まあ、劇の練習はかなり真剣に取り組んでるし、悪い子ってわけじゃないと思う……」


 あの日以来、ライブメンバーの関心が高まってしまい、練習中はしょっちゅうこの話題になるようになってしまった。ミカエラさんがきついのは事実だけど裏で何か言うのは違うし毎回俺は無難にやり過ごしてる。


「ミカエラ、クロード先輩狙いって理想高すぎじゃない?けど先輩絶対ああいうのタイプじゃなさそー」

「わかる!てかクロード先輩って絶対フレン派でしょ!フレンそこのとこどう?クロード先輩とはどんな感じ?」

「えっ、俺派って何??そこのところ……??」


 あと、女の子ばっかりだからかこういう話題に飛びやすいのも結構対応が難しい。というかこの間から言われてる俺派って本当に何??


「だってさー、クロード先輩あんなに完璧なのに彼女いないの謎じゃん?フレン理由知ってる?」

「てかフレンってクロード先輩のことどう思ってんの?」

「え……どうって」


 脈絡のない突然の質問に俺がぽかんとしてるとガシャンと物が落ちる音が聞こえて、会話が止まる。


「ってカイ!?機材落とさないでよ!急にどうしたの?」


 その音に振り向くと、カイが持っていた機材を派手に取り落としてるのが目に入る。その惨状に驚いた俺は、会話の輪から抜け出してカイに駆け寄った。


「よかった、機材壊れてない……。もー、横着して持つから!気をつけてよね!」

「お、おう……悪ぃ……」


 俺の指摘にカイはバツが悪そうに目を逸らした。多分わざとじゃないんだろうけど、機材って高いから気をつけて欲しいよね。


「……ねえ、今のってさぁ」

「やっぱカイってそうだよね?フレンは否定してたけど今も絶対好きじゃん」

「クロード先輩の話気になっちゃったかぁ。意外とわかりやすくて可愛い」


 ヒソヒソ何か話してる声が聞こえたけど、少し離れた場所でカイと話してた俺には、残ってたメンバーの会話の内容が届く事はなかった。


 ◇


「じゃあ今日の練習はこれで終わり!そろそろ本番も近いから皆最後まで頑張ろうね!」


 ライブ練習が終わって、皆が解散する中俺は同じく帰ろうとしているカイを呼び止める。


「カイ!ちょっと待って!こっち!!」

「……?なんだよ。なんか運ぶもんでも残ってたか?」

「違う!明日カイ誕生日でしょ?明日はお休みだから、これプレゼント!」


 そう言って俺は鞄から箱を取り出してカイに手渡す。


「っ!その……ありがとな」

「ねえ、開けてみて!」


 俺に言われてカイが箱を開き、中からスポーツ用ストップウォッチを取り出す。


「これって……」

「カイ、トレーニングの時よく使ってるでしょ?最近ちょっと故障してきたって言ってたからちょっと良いの選んでみた!」


 カイとのトレーニングってわりと理論的な感じで、タイムとかよく測るんだよね。前に細かい機能の話聞いたこともあったからそれっぽいのを探してみた。


「これ使ってこれからも一緒にトレーニングしてね?」


 これは本心だけど、カイの照れ隠しの口実にもなるかなって思った言葉。俺は、カイが結局お前の為かよとか突っ込んでくれるかなって思ってたんだけど――


「……わかった。大事にする」


 返ってきたのは短いけれど、軽さは感じない返事だった。気のせいかもしれないけど、宝物を見るような目でストップウォッチを見てる気がする。


「じゃ、帰ろっか?来週も機材運搬の手伝いよろしくね?」


 しっかり考えたプレゼントを素直に喜んでもらえたのはとても嬉しい。我ながら良いプレゼントを渡せた気がするし、なんだか良い気分になって俺はカイと並んで体育館を後にした。


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