106話: 文化祭準備、大型新人襲来!?①
「フレン君、頼む!今年の文化祭も僕に力を貸してくれ!!」
10月初めの朝の教室で、俺は今年も学級委員長と文化祭実行委員をやっているガネマルに拝み倒されていた。なんだろうこの状況すごくデジャヴなんだけど。ちなみにガネマルは今年、文化祭委員長だから着実に出世をしている。
「……話は聞くけど、俺今年は絶対女装しないからね!」
「ありがとうフレン君!その点においてはすでに手を打ってるから安心してくれ!!」
去年は流れで苦手な女装をして劇に出ることになったから、今年はそれを防ぐため俺は先手を打つことにした。その申し出が受け入れられたので俺は話の続きを促す。
「それで、協力って何したらいいの?またルカに劇に出て欲しいとか?」
「ああ、その通りだ!それに加えて今回はもう一人協力してもらいたい人がいる!」
「誰?クロードは今年忙しいから無理だと思うけど」
というか今年はどんな劇をするつもりなんだろう。実習で忙しいクロードは出れないだろうし、去年とまるっきり一緒の内容は難しそう。
「一年生のエリオ君だ!フレン君はペア授業監督もしていたから仲がいいだろう?ぜひ彼にも協力を頼みたい!!」
「あー、なるほど。確かにエリオ君の魔法凄いもんね」
エリオ君は体育会の魔法合戦でも目立ってたし、ガネマルが目をつけているのも納得だ。実力があるし話題性もあるいいキャスティングだと思う。まあ、彼が劇とか出るタイプかどうかと言われたら微妙なところではあるけれど。
「了解!また打ち合わせだけは設定してあげるから説得とかはガネマルがしてね」
「任せてくれ!協力感謝する!!」
ガネマルがものすごい角度のお辞儀をするのを見ながら俺は今年もこの季節がやってきたなぁなんて呑気な事を考えていた。
――今年も今年で一波乱あることをこの時の俺は予想もしていなかった。
◇
そして迎えた劇出演の交渉日、前回と同じく中庭のテーブルに並んで座った俺たちは打ち合わせを始める。
「僕は文化祭実行委員長、3年のガネマルだ!!ルカ君、エリオ君、今日は時間をくれてありがとう!!早速だが君達には文化祭実行委員の主催する学園演劇に協力してもらいたい!!頼む、出演してくれ!!」
「………」
「……先輩、これどういう事です?」
開始早々熱いガネマル節が炸裂した概要説明は、俺の両隣に座る竜族兄弟2人には全く響いてないようだった。熱血さは過剰だけど一応ガネマルは要点を押さえて説明してたんだけどね。仕方ないので俺は2人に噛み砕いて説明をすることにした。
「ガネマルは去年から学園演劇の監督をやってて、今年も成功させたいから2人に協力して欲しいんだって!ほら、ルカは去年も出てて凄かったしエリオ君も今年の体育会すごかったじゃん?」
「それはまあ、分からなくもないですけど……なんで僕が協力する必要があるんですか?僕ほどじゃなくても魔法が得意な人なら他にもいるでしょう?」
わぁ、これもまたデジャヴ。エリオ君の容赦ない意見に俺は背筋が震えた。ルカなんて返事すらしてないし、これ協力を取り付けられる気がしないんだけど。
「いや、君達じゃないとダメなんだ!」
この絶対零度の拒絶の空気の中、テーブルに手をついてガネマルが立ち上がる。毎回思うけどガネマルのこの不屈のガッツってすごいと思う。やっぱこれがあるから出世できるのかな?
「何故ですか?今までの説明だと僕が出る必要性が見えませんけど」
「僕は、去年を超えたい!!」
「去年?」
ガネマルの主張にエリオ君が首を捻る。確かにエリオ君は去年いなかったしイメージつかなくても仕方ないよね。もしかして学園演劇の規模とか説明したら納得してくれるかも?
「去年の学園演劇凄い評判だったんだよ!他校からも絶賛されて、今年も多分凄い期待されてると思う!」
「そうなんだ!去年の学園演劇は大成功だった。だから今年はそれを超えるさらなる大成功を目指したい!」
「まあ気持ちは分かりましたけど、それ僕に関係あります?」
さっきよりは若干理解してもらえたみたいだけど相変わらずエリオ君の反応は芳しくない。ちなみにルカなんて席にちゃんと座ってすらいない。さっきからずっと横向きになって俺に抱きついてるんだけど。
「去年を、去年のクロード先輩を超えるには2人の協力が不可欠なんだ!!」
「えっクロード??なんで??」
「っ!!」
「……」
その発言で、皆の視線が一斉にガネマルへ集まる。確かに去年の学園演劇はクロードも出てたけどクロードを超えるって何??
「去年の文化祭アンケートの結果、これは委員会でのみ閲覧していたんだが、感想の半数が学園演劇について、そしてその8割がクロード先輩の演舞への賞賛だったんだ!!」
「えっ嘘!?クロード凄すぎない!?」
文化祭の後は色々あったから、その手の話は今回初めて聞いた。感想の半数の8割ってつまり文化祭全体の4割だよね?それがクロード1人に対してって凄いどころじゃなくない!?
「今年はクロード先輩が出られないから半端な出し物では去年を越えることができない……だからなんとしても魔法トップレベルの君達に協力して欲しい!!」
確かにそれならこの2人にお願いするのは理にかなってる。正直他の騎士コースの人で代理を立ててもクロードとの差が出ちゃうだけだろうし、2人の魔法特化の演出に変えた方が去年との差別化もできるだろう。ただ問題は2人が全く乗り気じゃないってことで――
「劇、どんな内容なんです?ちゃんとした脚本できてるんでしょうね?」
「……何したらいい?」
「勿論だ!!協力感謝する!!2人ともありがとう!!」
悩む俺の隣でエリオ君とルカがガネマルの目を見て身を乗り出す。その光景に俺は目を疑った。
「………え?エリオ君?ルカ??どうしちゃったの!?」
さっきまで拒絶一色だった2人がいきなり乗り気になった理由が本気で分からなくて俺は1人取り残される。俺だけがぽかんとしてるまま、ガネマルの説明は続き、今年も学園演劇の計画がスタートしたのだった。




