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102話: 他校交流、セラフィオルへのご招待 ⑥

「……お前そんなに刻印に興味あったのかよ」

「やっぱりロマンあるし、運命ってなんか凄いなーって」


 俺がブルージュさんと話し込んでいるとカイが話に入ってきた。


「カイも何か聞いてみたら?ブルージュさん説明上手いし勉強になるよ」

「いや、俺は多分刻印……しねぇしいいわ」

「そんなのまだわかんなくない?前に言ってた魔力量も今の話だと問題ないみたいだしさ」


 俺は今から一年少し前にカイとした刻印の話を思い出していた。それを踏まえて、背中を押すために促したんだけど反応は良くない。


「刻印ってロマンあるしさ、カイ彼女欲しいなら知ってて損はないんじゃない?」


 女の子って刻印に興味ある子も多いし、いい話題になるんじゃないかなって思って俺はそう言ったんだけど


「っ、……ロマンとか言ってっけど、刻印しようとしてできなかった場合そっちの方が気まずくねぇの?」

「そ、それは……」


返ってきたのはどこか冷たいというか、少し怒っている様な返事で俺は戸惑う。


「つまり片方の想いが強くても相手の想いが基準に満たなかった場合のことよね。その場合は確かに成立しないわぁ」

「それなら、最初から試さない方が平和じゃないっすか?」

「そうかもしれないわねぇ」

「なら……」


 カイの態度に怯んで、何も言えなくなった俺の隣でブルージュさんが冷静な解説をする。その答えにカイがどこか冷めた表情で言葉を続けようとしたけれど


「でもダメだったからと言って終わりではないと思うの。そこからどう関係を成長させるかで刻印の確率はあがるわぁ。それが諦められるほどの想いなら難しいかもしれないけれど……」


それより先にブルージュさんはそう言って、カイの目を見つめた。


「っ……変な事聞いてすんません」

「いいのよぉ。私は刻印が好きで研究してるけれど、関係の最高値だとは思ってはいないの。だから、どんな想いでも貫き通してみてから考えてもいいと思うわぁ」

「そう……っすね」


 彼女の言葉に誤魔化しはなく、芯のある意志が篭っていた。それを感じ取ったのかカイは気まずそうに目を逸らす。


「悪い、俺先出てるわ」

「えっ、カイ……」


 そのまま俺が止める間もなく、カイは講堂の扉から出て行ってしまった。


「ブルージュさんすいません。なんかカイちょっと様子が変で……」

「私は気にしてないわぁ。ただ、刻印ってプライベートな事だからもしかしたら彼にとっては踏み込まれたくないことだったのかもしれないわね」

「あ……」


 カイにとって無遠慮な事を言ってしまったかもしれない事に、今更ながら気がつく。カイは刻印しないって言ってたのに無理に聞いたのは俺だ。


「あの、説明ありがとうございました。刻印のこと色々知れて楽しかったです」

「うふふ、そう言ってもらえて嬉しいわぁ。また何か気になることがあったら研究誌に載ってる宛先に連絡してねぇ」


 俺はブルージュさんにお礼を言って講堂の出口に向かう。カイがどうしてあんな態度を取ったのかはわからないけれど、もし俺が嫌な事をしてしまったのならちゃんと謝りたい。

 まだそんなに時間は経っていないし遠くに行ってないといいな。はやる気持ちを抑えて俺は講堂の外に出た。


 ◇


「あ!いた……カイ!」


 講堂を出て割とすぐにカイは見つかった。俺はカイの性格的に1人で教室に入って催し物を見る事は無いだろうと踏んで探してたんだけど当たってたみたい。講堂から続く廊下の先、階段の踊り場で飲み物を飲んで壁にもたれかかっているカイに近づいて声をかける。


「……お前、出るの早かったな。刻印の話もういいのかよ?」

「だってカイ出て行っちゃうし、それどころじゃ無いでしょ」

「あー、悪ぃ。空気悪くしちまったから少し頭冷やしたくなってよ」


 カイはちょっとバツが悪そうな顔をしながらもさっきまでの怒った感じは無くなっていた。思っていたより普通の反応に俺の方が戸惑う。


「……あのさ、俺さっきカイに嫌な事聞いちゃった?それだったらごめん」

「……別にあれはお前のせいじゃねぇよ」

「え、じゃあどうして怒ってたの……?」


 カイは短気ではあるけど、無闇矢鱈に喧嘩したり怒ったりはしないタイプだ。さっきだって何か理由があった筈で、だからこそ俺はそれが知りたかった。


「怒ってはねぇよ。ただ少しイラついただけで……それもお前のせいってわけじゃねぇし……」

「じゃあなんで?」


 今はもう普通の態度なんだから、聞かなくてもいいのかもしれない。だけど、また同じ様な事を無意識にやってしまうのは嫌だったから俺は敢えて問いかけた。


「はぁ、お前ってそういう所あるよな」

「だって、やっぱり気になるし、カイは俺の友達だから。あ、でも本当に言いたくなかったら大丈夫」


 見るからに嫌そうにカイが言葉を返すので一応無理強いはしないって予防線は貼っておく。まあこれではぐらかされるならそれはそれで良いしね。


「……お前さ」


 少し時間をおいて、迷う様に視線を動かしながらカイが口を開く。


「…………俺、刻印できると思うか?」


 どこか苦しそうな顔で絞り出す様に口に出されたのはそんな言葉だった。なんとなく、これはかける言葉を間違えてはいけない様な気がして俺はゆっくり考えて返事を返す。


「俺は、できると思う。カイはちょっとわかりにくいけど、優しくて誠実だし、一緒にいて安心するから。きっとカイが選んだ相手ならそれを返してくれるんじゃないかな」


 言葉遣いは乱暴だし、不良だから素行も良くない。だけど変な所真面目で、不器用だけど優しい。一緒にいると安心する俺の友達。それが俺の知ってるカイって人。そんなカイが刻印をしたいって思う相手ならきっとカイの事を良く理解している人だと思うし、刻印を受け入れてくれるんじゃないかな。

 そこまで考えて、カイが誰かと刻印をする事を想像するとちょっとだけ寂しい気がするのは友達を取られちゃう感じがするから?


「………なら、お前だったらどうなんだよ」


 だけど返された言葉は俺の耳に届く前に掻き消えてしまう。


「え?何?よく聞こえなかったんだけど」

「別になんでもねぇよ。それよりまだ回りてぇ所残ってんだろ。時間ねぇしさっさと行くぞ」


 折角俺がしっかり考えて答えたのにカイの返事はうまく聞こえないし、強引に話題を変えられて消化不良なまま話が終わる。けどこれ以上突っ込むのは流石に無しだし、カイが言う通り見学時間にも限りがあるので仕方なく俺は次の目的地への行き方を調べる事にした。

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