100話: 他校交流、セラフィオルへのご招待 ④
「何これ可愛い!見て見て!!ほら!」
「んな呼ばなくても聞こえてっからもう少し落ち着けよ」
俺が指差したのはホロスコープをゴシックスタイルやメルヘン調に加工した物が教室内にたくさん置いてある星占い研究発表の展示。ホロスコープはうちでも授業で使うことがあるから見慣れてるけど、それを宝石や彫刻で可愛らしくデコってるのは初めて見た。
「星占い研究会にようこそ。私はここのアテンダントのナスタと申します。こちらの展示は私達が普段使っているホロスコープを紹介するものです」
「えっじゃあこれ作ったんですか?凄い!」
「自作する人もいれば職人さんに依頼する人もいます。宝飾系は加工が難しいので依頼が多いですね」
なるほど、じゃあ逆に宝石がついてるの以外は自分達で飾りつけたって事だよね。細工もだけどセンスがいいなぁ。普段使う物をこうやって自分用にカスタムして使うのって楽しそうだし俺も今度やってみようかな。
「ふふ、褒めてくださってありがとうございます。丁度今から発表で使った力作が運ばれてきますから楽しみにしててください!あ、少し教室から出ていていただけますか?」
力作ってどんな凄いやつなんだろう。沢山宝石がついてるとかかな?そう思っていたら教室の天井が開き、空から魔法で支えられた大きな荷物が入ってくる。この教室は結構広いんだけど、荷物はそこいっぱいに広がるくらい大きい。というか教室の天井が開く仕組みになってるのも凄いよね。そのまま教室中央に設置されたそれの横にナスタさんが立って俺達を呼び戻してくれる。
「これは私達の研究会が代々制作をしている巨大スケールホロスコープです。まだ完成していないんですが、今の時点でも普通のホロスコープより正確に未来を予想できるんですよ!」
それは凄い。星占いはプロがやるとものすごく当たるって聞くしこれもそうなのかな。
「良かったら占いましょうか?まだ近い未来までしか占えないんですが当たると評判です」
「えー!いいんですか?じゃあお願いします!」
こんな大きなホロスコープを使った占いとかすごく面白そう。俺はナスタさんに生年月日と名前その他諸々を伝え、彼女がホロスコープの上に刻まれた紋様一つ一つを読み取って紙にまとめていく様子を眺めながら結果を待った。
「あなたの星並びは結構複雑で、細かい所はうまく読めなかったんですが、基本的には少し波がありながらも順調、来年の3月に大きな転機が訪れる星が出ています」
ナスタさんがホロスコープの中心に光る星を指差す。結構強く輝くそれはチカチカと点滅していて、存在感があった。来年の3月は進路を決める月だから確かに大きな転換期といえばそうかも。割と当たってる気がする。
「星の流れを良くする方法は、逃げない事ですね。逃げると運気を逃すので、そのまま信じて進むようにしてください」
確かに逃げてばっかりだとうまくいくものもいかないよね。写真は禁止だから俺はナスタさんに許可をもらってメモを取った。
「……お前、変な占い師とかにハマんねぇようにな」
「ちょっと!ホロスコープは学術的に認められてる方法だし、ちゃんとした占いだからそんな目で見るのやめてよね!それにナスタさんにも失礼でしょ」
俺が熱心に聞いてるのを見てカイが呆れたように言ってきたので俺は強めに主張する。カイだって同じ授業受けてたんだから知ってるはずなのにこの反応はないと思う。
「カイも占って貰えば?」
「俺はそういう柄じゃねぇだろ」
本当、変な所で変なこだわりあるよね。せっかくこんな大きなホロスコープがあるんだからやって貰えばいいのに。こんな機会滅多にないんだから勿体無い。興味無いとは言わなかったから気にはなってはいるはずなのになぁ。
「私達の展示は以上です。何か他にお知りになりたいこと等ございますか?」
「案内ありがとうございました!すごく面白かったです!あの、ここの展示についての質問じゃないんですけど、今回の文化祭で一押しの出し物あったら教えて欲しいなって……」
説明を終えたナスタさんに俺はずっと聞きたいと思っていた質問を投げかけた。この質問は学校の人ならではの視点でおすすめが聞けるからわりと良く聞いてるんだよね。今までは飲食店系で生徒さんが忙しそうだったから聞けなかったけど今回は時間があるから聞いてみた。
「それでしたら、生徒会が主催するセラフィオルの歴史にちなんだ展示がおすすめです。あとは刻印研究会の発表は毎年人気ですね」
紹介してもらった催しはどちらも凄く気になったので冊子で位置を確認して今日のスケジュールに組み込む事にする。というか刻印研究会とかあるの凄い。確かに刻印はみんな興味あるものだけど研究しようとかは思った事ないしどんなのか気になる。
「ありがとうございます!それじゃあ失礼します」
俺はナスタさんと教室内のスタッフさんに挨拶をして星占い研究発表の会場を後にする。結構長居したからまた少しお腹も空いてきた。何か軽食を食べつつ次の見学に行こうかな。
◇
「カイはさ、見たいところとかないの?さっきから俺の行きたい所ばっか見ちゃってるけど」
「特にねぇけど」
「えーっ!?じゃあなんでセラフィオルに来たの?」
他校交流は年に一回しかないイベントだし、うちの学校で参加できるのは3年生の今年までだ。そのせっかくの機会なのに特に見たいものがないなんて俺は信じられなかった。
「……お前に誘われたから」
「え」
「俺別に他校交流興味ねぇし、さぼろうかと思ってたところにお前から声かけられたんだよ」
カイが真っ直ぐ俺を見つめて俺にそう告げる。つまりそれって……
「カイって俺と出かけるの本当はめちゃくちゃ好きだったりする?」
「っ、なんでそんな結論が出るんだよ」
「だってカイさぼるって決めたらさぼるじゃん。俺に声かけられて来るってことは一緒に来たかったんでしょ?」
さぼろうと考えるほど興味のない他校交流にわざわざ参加するなんてこうとしか考えられなくない?今日の様子から、女子校であるセラフィオルはカイにとっては格段に過ごしずらい学校だし。素直にそう言わないのは天邪鬼だなって思うけど、結構可愛いとこあるじゃん。
「仕方ないなー!俺が他校交流を楽しむコツ教えてあげるから感謝してね?じゃ、次はおすすめされた刻印研究会見に行こ!」
「お前何から目線だよ」
カイがぼやくけどそれはスルーして俺はパンフレットの地図を開いて次の目的地に向かって歩き始める。刻印研究会とか初めて聞いたし、どんな展示が見れるのか今から楽しみ。




