06 契約
少しは抵抗しようと考えていた。
先ほど相打ちとなって力果てたゴブリンを見たため、僕でも1体くらい倒せると思っていた。
そんな考えは甘かった。
ゴブリンっていうのは小鬼と書く通り、背が低い鬼のはずだ。
目の前には4体の人外が存在しており、内3体は身長も120センチほどであり、僕の知ってるゴブリンなのだが、1体は明らかに違う。
身長は僕より高いので180〜190センチくらいだろう。
筋骨隆々であり、大きな剣を握っている。
勝てるわけがない。化け物である。
嫌だ……
来るな……
足が震えて尻餅をついた僕を眺めて、そいつらは笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいてきた。
あえて武器を置き、殺さないように加減をしているのか何度も蹴られ、殴られた。
僕を虐めて楽しんでいるのであろう。
痛い……
やめてくれ……
どれだけの時間殴られ続けただろうか。
もう身体は痛くて一切動かない。
骨も折れているだろう。
目も開かない。
いよいよ僕が死を覚悟したとき、
【死にたいのか?】
ふと誰かに問いかけられた。
どこから声が聞こえるかも分からない。
僕にとっての希望であった。
「タ……スケテ」
必死に声を出す。
【我は問うておる。死にたいのか?】
「シニ……タ……クナイ」
僕は必死に答えた。
死にたくない。
【ほう。ではチカラが欲しいか?其奴らを滅ぼすことのできるチカラを】
「ホシ……イ」
【では我が魂の器として、身を差し出せるか?】
「シ……マ……ス」
【なるほど。最後の問いじゃ。お前の名は】
「ヒ……ロ……キ」
【契約完了じゃ。我が主よ。】
【我が名は’サタ’】
【殲滅するぞ】