49 出費
落下した場所まで駆け寄ったところ、アズサさんは木に引っかかっていた。
「アズサさん!大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないわよ!ひどい!助けてくれるって言ったのにー!」
「すみません……でもあんなに急に落ちると思ってなくて……」
「落ちるときは急に決まってるじゃない!今から落ちるなんて言わないわよ!」
確かに一理ある。
「とりあえず、一人で降りれますか?」
「ちょっと難しいかも……足が痛くて動かない……」
「分かりました。助けますのでちょっと待ってください。」
僕はすぐに木を登り、救出に成功した。
「足……痛い……」
見ると腫れたりはしてないのだが、かなり足は傷ついており、出血もしている。
「とりあえずポーションを飲んでください。」
「うん……」
体力ポーションを飲んだところ、アズサさんの傷は癒え、すぐに歩けるようになった。
「骨折まではしてなかったようですね。回復してよかったです。次は僕も助けることができるよう気を付けますね。」
骨折となると中級のポーション以上でないと効果が期待できない。
僕らは持ってないので、骨折した場合はすぐに街に帰る必要がある。
「え?まだやるの?」
「え?やらないんですか?」
「え?こんなに怪我したところ見て、まだやらせるの?私女の子よ?」
「ちゃんとできるようにならないとシエルさんにもう教えてもらえませんよ?もう回復したんですからやりましょう。」
「え、やだやだやだ!もう嫌よ!」
「もうわがまま言わないでください。はい、もう一度チャレンジです。」
「えー……ほんと最悪……」
しぶしぶアズサさんは再度フライトをチャレンジした。
しかし、またもやすぐに墜落する。
チャレンジしては、墜落を何度も繰り返した。
僕が助けることができたときもあれば、できなかったこともある。
ポーションを使わずに済んだときもあれば、使わざるを得なかったこともある。
見ている限りフライトは少しは上達しているように見える。
明らかに滞空時間が増えているのだ。
だがまだコントロールはできていない。
僕もアズサさんの練習を見ながら、フレイムアクティベーションの発動を試みており、何とか15分程度まで持続できるようにはなった。
もう少し時間が必要だが、ゴールが見えてきたと思うので安心した。
だが今日はもう街に帰らないといけない。
理由は、体力ポーションの在庫がゼロになったからだ。
つまり所持していた12個を全て使ってしまったのだ。
銀貨5枚×12個、日本円にして5000×12の6万円。
1日で6万円も使ったのだ。
「ポーションなしで練習は難しいので、再度購入して、明日また来ましょう。」
「また来るの……?あんた鬼畜ね……」
◇
結局、僕は翌日にフレイムアクティベーションを完全にコントールすることができたのだが、アズサさんは1日遅れでの習得になった。
僕らはこの練習の間、合計で初級体力ポーションを22個消費した。
11万円の出費だ。かなり痛い出費だ……
また依頼をこなして稼がないといけないな……




