43 天才
光が横に走った。
何が起こったと思ったのだが、すぐに分かった。
目の前のスケルトンクイーンの首が切断され、胴体も崩れ落ちた。
そして大きな魔石を残し、それまであったはずの実体は静かに消滅した。
「助かりました。死ぬかと思いました。」
「何やってるのよ。気付いたらあんた倒れてるし、殺されそうになってるし。」
「いや……結構強くてですね……アズサさんとパーティ組んでてよかったです。」
「ほんと良かったわね。もうあんたの方が足引っ張ってるんじゃない?パーティ解散しよっかなー。」
「いや、ダメですよ。アズサさんがなんと言おうと、解散はしませんよ。もう離しません。」
「は、離さないって……な、何言ってんのよ!調子狂うわね。冗談よ。解散なんて考えてないから!」
「安心しました。それより、他のスケルトンはどうしましたか?」
「全部倒したし、この一帯で気配も一切しないわ。弱かったんだけど、数だけは多かったから、魔力がほとんど残ってないの。ほんと疲れた。」
「全部倒して……凄いですね。」
「まあね。というかあんたいつまで寝てんの?早く起きなさいよ。」
「起きれないんですよ……力が入らなくて……回復するまで少し待ってください……」
「分かったわ。じゃあ、その辺に落ちてる魔石を拾って集めておくわ。ゆっくり休んでなさい。」
◇
しばらくして、アズサさんが魔石を集め終わった頃には、僕の体力も回復し、動ける程度にはなっていた。
「今日は本当に有難うございました。アズサさんに頼りっきりでした。」
「ほんとよね。一つ貸しにしとくわ。またいつか返して。」
「はい。借りは絶対に返します。」
「うん。期待しとく。」
「そういえば、最後のクイーン相手に、よく物理攻撃が通りましたね。アズサさんってSTRのステータス、そこまで高くなかったですよね?」
「あぁ、あれはね。魔法も使ってるわよ。」
「え?でもそのダガーで攻撃したんじゃなかったんですか?」
「そうなんだけどね。風魔法をね、ダガーに纏わせて攻撃したの。そうするとよく切れるのよ!」
「え……そんな技、いつ習ったんですか?」
「習ってはないわ。スケルトンと戦ってたときにね、ウインドカッターとかばっかり使ってたら、どんどん魔力減るなぁって思ってたの。だからダガーで攻撃したけど、あんまり効かなくて、魔法と合体したらどうかなって思って。やってみたら、魔力の消費も少なくて、スケルトンもどんどん倒せて、ほんと便利よ。」
この人……天才かよ……
「凄いですね……僕も今度試してみたいですね。そんな簡単にできるんですか?」
「簡単よ。やってみたらすぐ出来たから。」
【アズサはもともと魔力操作の才能があるみたいじゃ。主は……すこし時間がかかるかもしれん。】
「そういうことか……まぁ予想はしてたけどな。時間かけてでも使ってみるよ。」
【頑張るがよい。】
「やっぱり私って天才なのね!凄いでしょ?」
「はいはい。凄いですよ。それじゃあ帰りますよ。」
魔石は僕の魔法で収納し、とりあえず街に帰り、依頼達成の報告のため、ギルドに向かうことにした。




