39 趣味
気付いた時には外は明るくなり始めており、どうやら昨日はいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
サタと話しをしていたはずだが、途中で寝落ちしてしまったのか?
昨日は何か重要な話をしていたような……
あ⁉
そうだ!魔人の話を聞いていたんだ。
魔王がどうとか言っていたな。
「サタ、昨日の話なんだけど……」
【どうしたのだ主よ。】
「魔王とかいう話してたと思うんだけど……」
【何のことじゃ?知らぬぞ。】
「そんなことないだろ。魔人の話をしたときにサタが言ってただろ?」
【主の勘違いではないか?我は知らん。】
おかしいな。確かに魔王の話は出ていた。
勘違いのはずはない。
そもそも僕はいつの間に寝てしまったんだろう……
興味深い話をしているときに絶対に寝落ちなんかするはずない。
「昨日僕に何かしたか?」
【何もしておらんぞ。話をしているときに、主が急に寝たんじゃ。我のせいにするではない。】
「……そうか。勘違いだったよ。僕が悪かった。」
【分かったのならよいが、あまり我を疑うでないぞ。】
「悪かったって。気つけるよ。」
そうか。今ので大体分かった。
サタが僕を眠らせたんだろう。
何度聞いてもサタは白を切るだろうし、問い詰めても意味がないことも分かった。
理由はさっぱり分からないが、サタにとって魔王というのはかなり重要なキーワードなんだろう。
僕を強制的に眠らせることができるというのも分かったし、
少しであれば僕の身体を動かせると以前も言っていたし、身体を乗っ取るつもりなのだろうか?
サタには注意する必要があるな。まぁ注意しても何もできないと思うのだが……
とりあえず、今日はスケルトンの調査だ。
気合いを入れていかなければいけない。
◇
その後、アズサさんと合流し、調査対象の廃村に僕らは来ていた。
「どうですか?何か気配は感じますか?」
「全然感じないわね?デマなんじゃない?」
「ほんとですか?面倒だからって嘘ついてないですよね?バレますからね?」
「嘘じゃないわよ!私だって真偽官に関する話しを聞いたんだから!あの話しを聞いて嘘つく訳ないじゃない!懲役なんて絶対に嫌だもの。」
まぁ確かに、さすがのアズサさんも嘘はつかないか。
僕は敵の気配なんて分からないからな……アズサさんを信じるしかないか。
「念のための確認だが、サタは気配感じるか?」
【ふむ……感じぬな。】
前も気配察知に関してはアズサさんの方が上だったからな。
それじゃあ、村を一周して何もなければ撤収するか。
【主よ。スケルトンの有無を確認しに来たのじゃな?】
「そうだけど……どうしたんだ?」
【主よ。スケルトンの出現時間は主に夜じゃぞ?まだ昼にもなっておらぬのに、気配を感じぬのは当然じゃと思うが……】
あ⁉ そいえば夜に出現ってどこかで見たな。
アンジュさんが言ってたんだっけ?
思い出せないけど、忘れてた……
「そうだったな……」
「アズサさん、スケルトンは夜に出現するらしいです。夜まで待ちましょう。」
「は?夜?まだまだじゃない!夜まで何するのよ。」
「適当に魔物でも探して狩りましょう。それくらいしか思いつかないです。あ、魔法は禁止ですよ。スケルトンとの戦闘のために魔力は温存しといてください。」
「えー。魔法禁止?返り血で汚れるから嫌なんだけど……」
「武器屋でダガーも買ってたじゃないですか。まだ使ってないでしょ?慣れるためにこの機会に使いましょう。僕もロングソードを使ってみたかったんです。」
「えー、、、」
「他にやることないでしょ?」
「まぁそうだけど……」
「じゃあ行きますよ。お小遣い稼ぎです。」
ほぼ無理やりな形で時間つぶしに廃村近辺で魔物狩りを行った。
◇
結局日が落ちるまでぶっ通しで魔物狩りを行った。
廃村近辺にはゴブリンすらおらず、角ウサギというFランクの魔物しかいなかった。
角ウサギは名前の通り、角を持ったウサギなのだ。
最弱の魔物と言われるほど弱いはずなのだが、意外と素早いので個人的にはゴブリンよりも強いんじゃないかと思った。
素早い敵に武器を与える練習にもなり、僕らはある程度新しい武器に慣れることができたと思う。
実際アズサさんは最初は手こずっていた。本当に最初だけだが……
最終的には戦いにも慣れ、殺戮に快感を覚えたサイコパスになっていた。
「次の獲物はどこ?もっと殺したいの!どこなの?」
この人、本当にヤバい人だよな。
異世界に来てよかったんじゃないかな。日本にいたら、いつか逮捕されてるよ。
「暗くなってきたので、そろそろ廃村に戻りますよ。仕事しましょう。」
「えぇー……残念……あんたは仕事仕事ってうるさいわね。趣味も大切にしなさいよね。」
名残惜しそうにしてる。
角ウサギを殺すことが趣味なのか?
この人と将来分かりあえる日は来ないだろう。
「……はい。」
適当に返事だけしといて、目的地に向かうことになった。
◇
廃村に着いた時にはかなり周りは暗くなっていった。
相変わらず僕には気配なんて一切分からない。
やっぱりいないんじゃないかな?
そう思い、後ろを歩いているアズサさんに問いかけた。
「どうですか?いますか?」
「…………」
聞こえてないのか?
振り返り声を掛けた。
「気配しますか?」
「あんた……マジ?」
「何がですか?」
「いや……気配だらけなんだけど……分からない?」
あ、いるんだ……
「すみません……僕には全然で……どれくらいいるんですか?」
20~30体くらいいるのだろうか。
群れで出現する傾向があると書いてたので、そんなところかな。
「100……」
「は?」
「100以上はいる……と思う。」
「は??」
想像を遥かに超えていた。




