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33 伝説の魔法

目の前の老婆は契約という言葉を口にした。




この老婆は魔女の様な格好をしている。

異世界から来た僕らから見ると魔女の様な格好をしている時点で胡散臭い。

しかもこの老婆は先程まで僕のことを散々罵っていた。



信用に値しない。




「いえ、やめときます。」





「なんだいあんた。内容も聞いてないのに断るのかい。」





「はい。嫌な予感がしたのでやめときます。」




 

「つれないこと言うねぇ。あんた達にはメリットが大きいと思うよ?かなりお得な話なんだがねぇ。」




「いえ、僕らは堅実に生きていこうと思っているので。」




こういう話は一切聞かないのが一番だ。

少しでも興味を持つと、付け込まれるかもしれない。



 

「はい!はい!はい!お得な話、聞きたい!教えてよ。」




「アズサさん、ダメですよ。話を聞いちゃ。」




「なんでよ。お得な話って言ってるんだから話聞いてもいいじゃん。」



 

「そういう話は大抵ウラがあるんですよ。結局こっちが損することになるんですから、もう帰りましょう。」




「なんでよ。損するかは話を聞いてみないと分からないじゃない。ウォッシュの魔法書買いに来たのに、買わずに帰るの?何をしに来たのよ。」




「あんたたち、そのウォッシュの魔法書の値段、知ってるかい?」



 

確かに値段は全然調べずに来てしまったことに気付いた。

魔法書って高いかもしれないな……




「さぁ……知らないですけど金貨1枚くらいですか?」




「馬鹿だねぇ。そんな安いわけないじゃないか。そんな安かったら街中の誰もが使ってるさ。」




「え?ちなみにいくらなんですか?」




「1冊で金貨10枚だよ。あんた達2人分だと金貨20枚になる。」




高すぎだろ……

1人分も買えないよ……




「そんなに高いんですね。今回は手持ちがないので諦めます。アズサさん、帰りましょう。お得な話とか聞いてる場合じゃないです。」




「えぇ……せっかく身体を綺麗にできると思ったのに……」



 

かなり残念そうだが、仕方ない。


 


「あんたたち、話はまだ終わってないよ。」




「なんですか?」




「私と契約してくれたら、あんたたちにウォッシュの魔法書をタダであげよう。」




「え⁉」




「それだけじゃないね。今後あんた達は他にも魔法が必要になるだろ?私と契約したら魔法書を融通してあげよう。」



 


「融通とは……?」




「あんたも細かいねぇ。初級魔法程度なら全部タダで教えてあげる。中級以上はタダでいいのもあるし、値段を安くしてあげたり、魔法によって違うわね。まぁ色々配慮してあげるってこと。言っとくけどね。魔法書は高いのよ。ウォッシュの金額でも一番安いレベルよ。」




金貨10枚で安い……か。

魔法は金持ち御用達って感じだな。




「かなり至れり尽くせりですね。僕たちは代わりにどんな要求をされるんですか?」




 

「あんた達にはね。使って欲しい魔法が一つだけあるんだよ。」





「魔法を使うのはさっき聞きましたよ。どんな魔法かを僕は聞きたいんです。」





「せっかちな男だねぇ。だからモテないんだよ。」




うるさいよ。

あんたにモテても嬉しくないからな。




「いいから、早く教えてください。何の魔法ですか?」




「使って欲しい魔法はね。『死者蘇生』っていうのよ。」




死者……蘇生……




「やっぱりこの話はなしです。帰りますよ、アズサさん。」


  


「なんでよ。面白そうじゃない。」




「死んだ人を生き返らせるんですよ?絶対ヤバいじゃないですか。どんだけリスクがあるか分からないですよ。」




 

「そうなの?」




「古い文献を調べてみたけど、私が知っている限りヤバそうなリスクはないね。」




「ほんとですか?何か隠してないですか?」




この婆は信用ならないからな。




「隠してなんかないさ。そもそも隠しようがないね。」




「どういうことですか?」




「伝説の魔法、おとぎ話の中の魔法、色々な呼び名があるね。本当に実在するかどうかも分からない魔法なのさ。使用したと載っている文献は千年も前の話。この魔法を見たことがある奴なんか、誰もいないのさ。だから隠しようがない。」




「なるほど……じゃあどうやって僕らがその魔法を使用するんですか?実在するかも分からない魔法なんですよね?」




「私はね。死者蘇生を発動するために必要と言われている魔法陣は知ってるんだよ。」




「知ってるんでしたら、それを使えば……」




「だから言っただろ?使える魔法の種類は、魔力量に依存する。死者蘇生を発動させるためにどれだけの魔力量が必要かも分からない。つまり、試したものは何人もいるが、誰も発動できなかったんだよ。」



 

「なるほど……理屈は分かったんですが、僕たちはまだまだレベルが低いので、お役には立てないと思いますよ……」



 

「今すぐにやってもらおうなんか思っちゃいないさ。あんた達レベルは?」




「隠すものでもないんでいいですけど、レベルは8です。」




「お、思ったよりも低いね……MP(魔力)はどんなもんだい?」




「1200……です。」




「……」



 


「あの……」




「ヒャッヒャッヒャッヒャッ……あんた……」




「何ですか?」




「あんた、化物だ。間違いないさ。」




「人間ですけどね。」




魔人だけどね……




 

「いいや、化物さ。でも最高さ。あんたならできる。」




「いや、でも僕みたいなMPはゴロゴロいるんじゃないですか?」




「確かに高レベルの者ならいるだろう。でもレベル8でそのMPは化物以外の表現がない。そんなの見たことないさ。」




「でも……ですね……」




「あんた、やっぱり私と契約しな。」




「でも……」

 



「あんた強くなるまで、死者蘇生を発動できる魔法力に達するまで、私があんた達をサポートしてあげる。」




「発動できるか分かりませんよ?」




「発動できなくても別にあんたを恨みをはしないさ。その時はその時。あんた達にデメリットはないよ。まぁ死者蘇生の発動時のリスクがないかは誰も保証できないけどね。」




この老婆の言う通り、僕たちのデメリットがない気がしてきた。




「(サタ、死者蘇生って魔法知ってるか?)」




【そんな魔法は知らぬな。少なくとも我は見たことがない。】




「(サタでも知らないか……この話どう思う?)」




【この女が主に嘘をついているようには感じなかったぞ。まぁ我ならばあの女の話に乗るだろう。我が目指すは最強。そのために利用できるものは利用する。リスクなんて考えるだけ無駄じゃな。全て蹴散らせばよい。】




「(サタらしいな)」




アズサさんの方を向くと、笑顔で頷いている。

まぁこの人はあんまり何も考えていないだろう。




「あなた……名前を教えてください……」




「私かい?フフっ……私はシエル。」




「僕はヒロキです。シエルさん……」




「何だい?覚悟は決まったかい?」




「あぁ。シエルさん、あなたの口車に乗せられてみようと思います。」



 

なんか……厄介ごとに巻き込まれた気はするが……



 

「いいねぇ。それじゃあ、契約成立だね。ヒロキ。」

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