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21 初めての酒場

全部依頼を請けると言っているのだが、アンジュさんはよく分かっていなさそうだ。




「もしかして、一度に複数の依頼を受けることは出来なかったりしますか?」




「いえ、そういう決まりはないのですが……本当に6件の依頼を全て請けられるのですか?聞き間違いかと思いまして……」




「あ、大丈夫なんですね。では全部請けますよ。ちなみにこの依頼を全て完了したら、上のランクに昇格できそうですか?」




「立場上お約束は難しいですが、ほぼ間違いなく昇格はできるかと……パーティで請けることを想定された依頼を、ソロで何度も達成するとなると、このランクに留まるべきではないと判断されるかと……」




「そうですか。それならちょうどいいですね。」




「もしかすると昇格まで6件も必要ない可能性もあるので、まとめて請けられなくても……」




「いいんです。魔物の巣は早く殲滅した方がいいと、今回の依頼でよく分かりました。できることはやってから、昇格できればいいかなと思います。」




「そういうことなのですね。ヒロキ様は、とても良い人なのですね。尊敬します。それでは依頼の手続きをさせていただきますね。」




「良い人……僕は良い人ではないですよ。一応否定しておきます。」




やめてくれ。その言葉は僕は嫌いだ。

勝手に期待されても碌なことがない。




「えっと……」




「あ、気にしないで下さい。手続きを進めてください。」




アンジュさんは僕の言葉にきょとんとしながらも、手続きを進めてくれた。



 

「ヒロキ様であれば問題ないと思いますが、十分にお気を付けてくださいね。」



 

「はい。それは行ってきますね。あとお願いしていたお店のリストアップはお願いしますね。」




「はい。急いで行うようにします!」




アンジュさんに念押しして、僕がギルドを後にした。  




全ての依頼を完了した頃には、ある程度手持ちのお金も増えているだろう。

装備品も最低限は揃えることができるかもしれない。




今はゲームでいうと無課金ユーザーだ。

サタというチートを備え付けてはいるが……



 

いずれにしてもこのままでは今後が不安ではあるし、備えておく必要があるだろう。


 


依頼は全部で6件だ。




「とりあえず要領が分かっているからゴブリンの巣の殲滅依頼を先に全て終わらせてから、コボルトを討伐しようと思うがいいか?」




【うむ。どちらの魔物も雑魚なので、順番は主に任せる。】



サタの言葉には少しトゲを感じる。気のせいか……


 


「すまないな。これが終わって昇格できれば、もう少し強い魔物と戦える。それまで辛抱してくれ。」




【うむ。期待しておるぞ。】



 

「ああ。とりあえず今日はもう宿に戻って明日から急いで依頼をこなしていこう。緊急の依頼はなさそうだから十分間に合う。」





 


僕は宿屋オアシスに戻り、宿泊期間の延長手続きも行い、夕飯をいただいていた。



 

そんなとき、酔っぱらった客が宿屋に入ってきたのが見えた。

酔っ払いか……そういえば長らく酒を飲んでいないな……



  

筋トレを趣味にしてからお酒をあまり飲まなくなったのだ。

でも、なぜか無性にお酒を飲みたくなった。



 

「店員さん、ここってお酒はおいてたりするんですか?」




「ごめんよ。お酒はおいてないんだよ。近くに酒場があるから、場所を教えようか?」




「そうなんですね……一応、場所を教えてください。」





店員に酒場を教えてもらった。

どんなお店か興味もあったので覗いてみることにした。




教えてもらった場所の近くまで行くと、明らかに酔っぱらいが出入りする店があり、すぐに酒場であることが分かった。

店の中を覗いてみると広いホールに、テーブルがいくつも並んでおり、酔っ払いどもがにぎやかにお酒を飲んだり、食事をしている。




ここに一人で入るのもな……と思ったが、どうやらカウンターもあり、一人客もちらほらといたので、1杯だけでも飲んでいくことにした。




この世界のお酒に興味があったのだ。

周りを見るとビールらしきものを飲んでる人がいるが、あれはビールなのだろうか。




「すみません。今日初めて来たんでメニューが分からないですけど、あの人が飲んでるものって何ですか?」




他人が飲んでるものを指さして、店員に聞いてみたところ、「ビール」らしい。




「あんたビールを知らないのかい?若そうに見えないが、お酒は初めてかい?」




この店員、一言多いな。確かに若くないので、合っているのだが……




「ああ、酒は初めてなんだ。じゃあ、ビールを一杯もらいたい。いいか?」


 


「はいよ。」




しばらくするとビールが目の前に運ばれてきた。

一口飲んでみると……これが思ったより美味い。

元の世界のビールよりも美味しいかもしれない。




「どうだい?初めての酒は?」




店員は僕が飲むのを見ていたようだ。


 

 

「美味いね。思ったよりも辛口だが、キレがあっていいね。最高だよ。つまみも食べたくなるね。」




「あんた初めての酒なのに辛口とか、キレがあるとか、よく分かるね。変な人だよ。」




店員は笑いながら、接客に戻っていった。

確かに初めて酒を飲む人間のコメントではないな。


 


久しぶりの酒、しかも今までで一番美味しく感じる酒ということもあり、僕は同じ酒を立て続けに注文し、今は5杯目を飲んでいるところだ。

結構酔っぱらってきたな。

でも気分が良い。




【主よ。酒はほどほどにしておけよ。】




「ああ、これで最後にするよ。でも久しぶりの酒で、元の世界の酒よりも美味しいんだ。少しくらい許してくれよ。」




【うむ。あまり気を抜くなよ。】




サタとそんな会話をしていたとき、隣の席に誰かが座って来た。




「あんたに聞きたいことがあるんだけど……」




急になんだ。

こっちは気分よく飲んでるんだが……




「聞きたいこと?なんだよ。」




 

「プレミアムドライとスーパーモルツだったらどっちが美味しいと思う?」




 なんだそんなことか……





 



 「プレミアムドライに決まってるだろ。異論は認めない。」

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