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19 ゴブリンの巣

僕がお風呂に入る方法について調べて欲しいと伝えたところアンジュさんが戸惑っているようだ。




「えっと……聞いた話によるとお風呂って貴族の方しか持っていないらしいんですが、どうしてもお風呂に入りたいんです。どうにか入る方法を調べて欲しいなと思いまして……」




「おっしゃる通り、この街ではグティ男爵くらいしかお風呂を持っていないと思われます。そのため、グティ男爵と交渉する必要があるのですが、男爵に対してお風呂に入れて欲しいと伝えるのは少し難しいと思われます……」



やはりそうか……

現状諦めるしかなさそうだよね……




「ちなみに貴族の方しかお風呂を持っていない理由って何かありますか?」




「理由と言われましても……お風呂と言えば貴族の家にあるものという常識があります。貴重な水を大量に使いますので贅沢なものです。庶民では通常持たないですね。」




「なるほど。あと僕は水浴びで頭や体の汚れを流しているんですけど、どうしても汚れが取れた気がしなくて……汚れを落とす良い方法ってあるでしょうか?」




「それならばちょうど良い魔法があります!」




「魔法⁉誰でも使える魔法でしょうか?」




「ウォッシュという魔法があります!身体の汚れを落とすことができる魔法なんです。魔力さえあれば、魔法書などで学び使えることができる思います。」




なるほど。それは良いことを聞いた。

当面は魔法で汚れを落とすことを優先し、お風呂の問題はあとで考えよう。




「では魔法書がどこにあるかを調べていただくことができますか?」




「分かりました!それでは魔法書店もピックアップしておきますね!」




「宜しくお願いします。それではゴブリンの巣の殲滅に行ってきますね。」




アンジュさんに笑顔で見送られながら僕がギルドを出た。




とりえあえず一旦向かうのはカタン村という村で、村長に話を聞きに行く必要がある。

できるならば攫われた人たちも救えればいいな。



 

「サタ、ゴブリンメイジっていう魔法を使う魔物がいるみたいなんだが知っているか?」




【知っておるぞ。雑魚じゃ】




「言うと思ったよ。僕は防具もつけてないんだが、魔法に当たったりしたらマズいよな?」




【大丈夫じゃ。今の主であれば当たったところでほとんどダメージにならん。蚊に刺された程度じゃ。そもそも当たらんと思うがな。】




「そうか。安心したよ。強い相手じゃないみたいだが、すまない。もう少し我慢してくれ。」




【今回は仕方ないと分かっておるぞ。まぁ我だけでなく、主も強い相手とやりたいと思っているのは我も分かっておる。戦いに関する強い願いは、引き寄せ合うものなので、自然と強い相手が寄ってくるはずじゃ。心配しておらん。】




「そうか……納得してくれて助かるよ。」




僕の考えもサタにバレているのか。

同じ身体を共有していることも影響しているのだろうか。




とりあえず村に向かおう。







街を出て2時間程度歩くと、目的地であるカタン村と思われる場所に到着した。




村の衛兵に声を掛けた。




「イニシオの街のギルドから来たヒロキという者だ。カタン村で合っているか?ゴブリンの巣の殲滅依頼を受けた。合っていれば村長に取り次いでもらいたい。」




「お待ちしておりました。有難うございます。すぐに村長の元にご案内いたします。」




そうして、すぐに村長の元に案内された。




「お越しいただき有難うございます。村長のフラジルと申します。恐れ入りますが、お一人でお越しになったのでしょうか。」




「ヒロキと申します。今回は一人で依頼を受けましたが、問題ありません。すぐに殲滅しますのでご安心ください。ゴブリンの巣の近くまでご案内いただきたいのと、今まで攫われた方の状況を教えていただきたいです。」




「すぐに殲滅……お気を付けください。巣にはすぐにご案内いたします。攫われたのは今までに若い女が6名です……攫われ始めたのは1週間ほど前からです。生きていればいいのですが……」




「分かりました。それでは巣の近くまでご案内をお願いします。生きている限り、攫われた方は救出します。」



 

「宜しくお願いいたします。」






若い男に案内され、ゴブリンの巣が見える位置にまで近づいた。



 

「本当に一人で大丈夫なのか?いくらゴブリンといっても数が多いのでやっかいだぞ。」




「大丈夫だ。心配するな。」




「そうか……それならいいんだ。今回攫われた女の中に、俺の好きな女がいるんだ……俺が強ければ助けに行けるんだが……情けねぇよな。はは……」




「そうか。それならその女が生きていることだけ祈っておけ。生きてさえいれば絶対に救出する。僕が負けることはないし、僕は出来ないことは絶対に言わないんだ。」



情けなくはない。

僕だってサタの力がなければ救出なんて到底できないだろう。




「宜しく頼む。」



涙目になりながらその男は頭を下げた。




それでは行くか。

どうか生きていてくれ。




ゴブリンの巣は洞窟の奥にあるようであり、中はどこまで続いているかは分からない。

今回は人命がかかっており、時間の猶予はないため、僕は駆け足で巣に突入した。




巣に入ると狭い道が奥へと広がっており、通常のゴブリンがギャーギャーと喚きながら奥から数体集まってくる。

ほとんど立ち止まることなく攻撃を加え、全て絶命させた。




巣は思ったよりも長く、もう5分程走っただろうか。

どのようの作業は何度か行い、30体以上は倒しているだろう。




どこまで続くのかと思っていたところ狭い道が奥の方で、大きな広場へと繋がっているようだ。

そして広場に出ると、大量のゴブリンと攫われたと思われる女がいた。




女は檻の中に入れられている者が2名、組み伏せられている者が2名、広場に横たわっている者が2名いるようだ。

攫われた人数と一致しているな

生死については正直分からないが、少なくとも4名は生きているだろう。




ゴブリンどもは僕を一斉に見ている。

杖を持っているゴブリンがいる。事前に魔物図鑑で確認しておいたが、ゴブリンメイジで間違いないだろう。

数は分からないが、結構な数がいる。




事前に聞いていた20-30体を大きく超えた数のゴブリンどもが、この巣にいたことを意味する。




「サタ、殲滅するぞ。生まれてきたことを後悔させてやる。」




【うむ。主よ、蹴散らすがよい。】




僕は女を組み伏せているゴブリンをまずは蹴散らし、その後、女を守るように全てのゴブリンを絶命させた。

遠くからゴブリンメイジが魔法を撃ってきたが、サタから事前に聞いていた通り、まるでスローモーションのように遅く、到底僕に当たりはしない。

今回の戦いも、僕にとっては弱すぎる相手となった。



ただ前回のゴブリン討伐の際には、ゴブリンがお金に見えたが、今回は違った。

あくまでも魔物だ。傷ついている人を近くで見ることで、それを実感した。



戦いが終わり、横たわっている者の生死を確認した。

1名は辛うじて息があるようだが、残りの1名はどうやら手遅れだった。


 


「遅くなってすまない。」




そうとしか言えなかった。



僕が請けた依頼は巣の殲滅だ。救出ではない。

ただ出来れば全員を救出したかった。



僕は無力だ。

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