14 魔法
目の前にはホブゴブリンが4体いる。
前回はホブゴブリンは1体しかいなかったので、普通に考えれば今回は、前回に比べると戦力は高い。
だが僕は全く怖さを感じなかった。
僕はサタのチカラを知っているからだ。
負けるはずがない。そう確信していた。
気をつけることといえば、討伐証明として必要な左耳である。
頭部を傷つけないように、胴体を狙って殴りかかった。
僕の拳が当たれば、ホブゴブリンどもの胴体は破裂し、頭部だけが残り絶命した。
相手は4体なので数的には僕は不利なのだが、なぜか相手の動きが遅く感じ、あっという間に戦闘は終了した。
思った通り、ホブゴブリンであれば怖がる必要はない。
何体来ようが負ける気がしない。
ギルドに借りたナイフで4体の左耳を切り取った。
普通に考えれば耳を切り取る行為は、血も出るし、気持ち悪いはずなのだが、今は不思議と何の躊躇いもなく出来る。
魔人になったため、精神にも影響が出るのだろうか。
まぁ答えは分からないので、考えても仕方ないのだが、少し気になった。
そういえば、切り取った耳をどこに収納しようか。
ギルドに借りた袋に収納は出来るが、確実に袋が汚れる。
借りた袋を汚して返すのは気がひけるし、魔物図鑑も汚れることや、今後採取する予定の薬草まで汚れることが懸念点である。
どうしようか考え込んでいると、
【主よ。どうしたのじゃ。】
サタに事情を説明したところ、思わぬ解決法を提案された。
【魔法で収納すれば良いだけじゃろう。】
「魔法……?」
そういえば能力鑑定のときに、MP(魔力)とか、魔法属性とかあったな……
完全に忘れていた……
「僕に魔法が使えるのか。どうすれば使えるんだ?」
【主は魔力を既に持っておるので、間違いなく使えるぞ。身体に魔力を纏っていることを想像するがよい。そこから主が魔力を込めたい部位に、その魔力を集まるように想像するがよい。今回の場合であれば、目の前に架空の収納スペースがあることをイメージするがよい。そのイメージを保ったまま手に魔力を集め、収納スペースに手を伸ばしてみるのじゃ。】
完全には理解できなかっが、とりあえずはサタの言う通りに試してみよう。
目の前には収納スペースがある。
右手に魔力よ集まれ。
そう僕は自分に言い聞かせるように念じた。
右手を伸ばして……
「あ……」
確かに前方に伸ばした右手が、別の空間に繋がっている。
「出来た!」
【当たり前じゃ。こんなことは誰だって出来るぞ。早く収納したいものをしまうがよい。】
誰でも出来るのか。
すごい世界だ。
僕はホブゴブリンの耳と、持っていた袋を、目の前の別空間に収納した。
取り出せるかが不安だったで、出し入れを試してみたが、問題なくできるようだ。
別空間は実体としては見えないのだが、手を入れてみると収納スペースの中が脳内にイメージとして浮んでくる。あとは欲しいものに手を伸ばすだけである。
こんな便利なものがあるのか。
「助かったよ、サタ。こんな便利な魔法があったんだな。」
【さっきも言った通り、誰でも使える初歩的な魔法なのである。だが、我に感謝するというのであれば止めぬぞ。敬うがよい。】
サタの奴。ちょっと礼を言ったらすぐに調子に乗るな……
「これでもっと狩りが出来るな。どんどんいこう。」
そこからは魔物を探し回った。
すぐには見つからないため、走り周った。
5、6時間は探し回っているだろう。
サタは魔物の気配を察知するのが得意みたいで、ある程度近くに魔物がいると、教えてくれた。
ゴブリンとホブゴブリンだけしか出会わなかっが、見つけ次第、殲滅した。
ゴブリン: 53体
ホブゴブリン: 35体
数えてみると結構討伐出来ていると思う。
途中からは魔物どもがお金にしか見えなくなっていた。
銅貨1枚×53体+銅貨5枚×35体なので、銅貨228枚。
ということは、日本円で22800円となる。
大儲けだ。
これでまともな宿にも泊まれるし、飯も食える。
「サタ。帰って飯でも食おう。今日はぐっすり眠れるな。」
【主よ。薬草はよいのか?】
「あ……」




