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ノイズの向こう側

※この作品はNola、Xfolioにも掲載しております。

【ネトコン13参加作】


 はじめまして、またはお久しぶりです。人馬宮マサです。

 本作は、以前「ネトコン12」に投稿していた作品を大幅に加筆・再構成したリメイク版となります。(旧作品は現在削除しておりますのでご了承ください。)

 記憶と感情を巡る、アンドロイドと半妖たちの物語。

 初めて読む方にも楽しんでいただけるよう構成し直していますので、ご安心ください。


 第1話では、“雨”と“記憶のノイズ”をきっかけに、物語の歯車が静かに動き始めます。

 どうぞ最後までお付き合いください。


 急雨に見舞われたフレディは、家族を連れての外出に酷く後悔した。自然というものは抗いようのないものだというのは頭では理解している。だが、フレディはそんな理由で外出を後悔していたわけではなかった。

 フレディは水への耐性を持ち合わせているというのに、雨の日をどうしても好きになれなかったのだ。雨は冷たくて、寂しい気持ちにさせる……寂しいという感情も分からないはずなのに。

 残りのエネルギーで先に動けなくなってしまった弟や妹たちをできるだけ雨に濡らさぬよう、屋根の付いた建物の下へと運ぶ。小さい屋根であったため、自身が雨宿りできるスペースはなかったが、家族が雨に晒される心配はない。フレディには我が身のことなどどうでもよく思えた。

 安堵の息を吐くと同時に雨が更に激しく降り始め、フレディの視界は霞み始めた。その拍子によろけてしまい、近くのゴミ捨て場に身体を強く打ち付ける。この程度の衝撃で壊れる恐れはないが、あまりにも衝撃が強すぎたのか、彼の脳裏に何かの記録映像が流れ始める。

 鉄砲雨の中、青年が赤い液体を流して走っている。濡れたアスファルトに足を取られたのか、激しく転倒をして動けずにいた。いや、動こうにも体力が限界だったのだろう。

 そんな青年の背後で水の跳ねる音と、荒い息遣いが聞こえた。青年は恐る恐る振り返る。そこには黒いレインコートを羽織った何者かが、鈍く輝く物を持って青年を見下ろしていた。

 フレディはその鈍く輝く物を認識しようと目を凝らした。しかし映像が乱れ――視界は闇へと沈み、最後に聞こえたのは断続的なノイズ音だけであった。


 ピッ、ピッ……と単調な電子音に六道(ろくどう)マコは目を覚ました。枕元では端末がアラームを鳴らし続けている。

「……寝すぎた」と呟いたマコは障子の隙間から差し込んでくる光に目を細めた。

 手探りで端末を探し、端末の画面を点ける。時刻は昼時を指していた。日頃の仕事の疲れを少しでも取り除きたいと思って朝食を取った後に布団へ戻ったのが失敗だったとマコは後悔した。

 端末に表示されていた通知を確認すると、友人のルナから大量のメッセージが送られており、試しに一件開いてみると「診てほしいのがあるからラボに来てほしい」とだけ書かれてあった。

「あいつまた発明したのか……?」

 次いで別のものを開いてみれば、返信が来ないことに苛立ち始めたのか今の時間に近いメッセージほど「早く来い」と最早脅迫文に変化を遂げている。

「行かないとまずいな……」

 ルナの怒りに満ちた表情が脳裏をよぎったものの、マコはすぐに頭を振ってそれをかき消し、大慌てで布団を畳んでから身だしなみを整え、クローゼットに仕舞っていた上着を羽織って部屋を飛び出した。

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