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ミシハセ  作者: 金子よしふみ
第二章
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調べてみて

 簡単に意味を知ることができる。図書館に行かなくても、辞書が手元になくても、スマホがある。結果は一目瞭然。昔話のフィクションの固有名詞かと思ったら、歴史に関するワードだった。ミシハセ。『日本書紀』に載っているらしい。欽明朝の粛慎が最も古い報告だそうだ。西暦で言うと、五四四年にあたるらしい。千五百年も前のこと。スマホどころか、カメラもテープもテレビもラジオも新聞もない。

「あてにならんな」

 実際、ウィキペディアには「後付けで作られた」と記載されてもいた。実に「ご丁寧にお書きになってでございますね」くらいの感想にもなる。歴史は得意な科目ではなかった。地理の方が興味があって、だからこそ今の職にもつながっているわけだ。それなのに、暇で見た単語、歴史用語が気になるなんて、

「ミシハセの仕業かな」

 なんて自嘲にもなる。漢文は読めない。現代語訳を読んで

「鬼じゃん」

 とはつぶやいたものの、実際には鬼とも言い定め難かった。明快である。文章の意味がわからなかった。主語が取っ散らかっていたし、そもそも文責は誰やねんって思ったのである。

「でもまあ、早い話。七右衛門様は鬼退治に向かわれたわけでございますか」

 昔話は昔話だった。フィクションだろうが、ノンフィクションだろうが、作屋守にとってはちょうどよい、本当に暇つぶしになってくれたのだ。雪女は雪国の話として出て来る。高僧が錫杖で突いた地面から水が溢れたと言う話は全国各地にある。同じように鬼は全国に流布されている話だ。幽霊もいるし、妖怪もいる。お話の中で。いや見たと言う人もいる。作屋守は霊感がないと自覚している。周りにも霊感を持っているという人はいない。だからといって霊感を否定することはない。天気予報を見なくても雨が降るのがわかる人がいると言う。機材を使わなくても魚のいる位置がわかる漁師がいると言う。あるいは感覚を肉体を研ぎ澄ませるとその行きつく先としてオリンピックで金メダルを取ることもできる。そんな小難しい例を挙げなくても、中間テストや期末テストで妙に山が当たるクラスメートがいた。いろいろな人がいる、と言ってしまえばそれまでだが、たしかにその通りなのだ。だとしても、やはり読んだ話でしかなかった。桃太郎や一寸法師と同じカテゴリーの読み物だった。ただ一点だけ創造物と片付けられない、気がかりと呼ぶような状態であったのは、言い伝えとして現存し、あたかも見てきたように話す人が一人ではなかったからである。


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