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1Day探偵  作者: 如月いさみ


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15/21

その8-1

8月に入って直ぐの午後であった。


楠木明日は自室で読んでいた本を机に置くと

「え?」

と声を零した。


彼の母親の日和子は困ったように

「その…美和が気にしていて」

私も少し心配なの

と告げた。


明日は息を吐き出すと立ち上がり

「わかった」

叔父さんには色々世話になってるから話聞いてくる

と言い鞄にICレコーダーや手帳を入れると部屋を後にした。


夏の強い日差しが地表を温め、むんむんと熱気が立ち込める午後1時の事であった。


1Day探偵


明日の姉の美和は母親から連絡を受けていたらしく明日がインターフォンを押すと同時に飛び出してきた。

「明日、ごめんねー」


明日は笑いながら

「いいさ」

それより話を聞かせてくれるか?

と言い的場家の中へ入るとクーラーの入った涼しいリビングで汗を拭いながらテーブルに座った。


美和は冷蔵庫を開けながら

「紅茶でいいわよね」

と言いペットボトルから紅茶をコップに移すと明日の前に置いた。


そして、息を吐き出すと

「研一さんは話さなくて良いって言うんだけどね」

凄く悩んでいるみたいで

「明日はほら探偵してるでしょ?」

力になってもらえたらと思って

と告げた。


明日は頷く

「ああ、大丈夫」

叔父さんには仕事もらったりしてるし

「母さんも心配してたからな」

とさっぱりと答えた。


美和は両手を組み合わせると

「ありがとう、明日」

でも無理はしなくて良いからね

と笑顔で告げた。


楠木家は明日と姉の美和と父親の功に母親の日和子の4人であった。

その姉の美和が2年前に20歳で結婚した相手が的場研一…警察庁の刑事であった。


研一は当時30歳で10歳も若い美和に対して『こんなオジサンと結婚しても』と言う気持ちがあったらしいがそこは惚れた美和の押しの一手で見事ゴールインしたのである。


現在もラブラブ…明日から見れば『何時まで新婚しているんだよ』のような愛妻愛夫ぶりであった。


明日も研一には依頼を貰っているという恩もあるので出来る限り力になるつもりであった。


美和は明日を見ると

「明日は一月前くらいに拘置所内で亡くなった女性のこと知ってる?」

と聞いた。


明日は三木厚美のことを思い出して

「ああ、それは他から聞いた」

複雑な話らしくて

「報告だけだったな」

と答えた。


美和はそれに

「研一はその事を内々に調べていて…それを上司に知られて厳重注意を受けたの」

ほら研一さんって納得できない事は納得できるまでってところあるでしょ?

「そこが素敵なところなんだけど」

と照れたように言い

「でもそれが原因では今はずっと内勤させられていて身動きが取れないらしいの」

と告げた。


明日は腕を組むと

「俺もその事件について多少は知識を持ってるけど」

止められた口だからな

と言いつつ

「けど、他ルートから調べられないわけじゃないから」

一応調べてみる

と告げた。

「宛てはある」


美和は笑顔になると

「ありがとう!」

依頼料払うからね!

と告げた。

が、明日は嫌そうに

「姉さんから貰う訳に行かないだろ」

ほんとーに

と肩を竦めた。


美和は「じゃあ、今度ランチ行きましょ」と笑顔で告げ

「でもくれぐれも無理はしないでね」

と告げた。


明日は頷くと

「わかった」

ああでも

「叔父さんには内緒で」

でないと叔父さんから止められるかもしれないからな

と告げた。


美和は頷いて

「わかったわ」

と告げた。


明日は的場家を出ると青く澄んだ空を見上げ

「…俺も気になっていたし」

東京グランデュオ大手町ホテルのアクロバットからだな

と手帳を出して呟いた。


同じ時、芹と春香は原口真由美について調べ始めていたのである。


そう、中田操江の元へと訪れていたのである。

4月の毒殺事件。

原口真奈美が犯人だった事件である。


その被害者中田達雄の妻である。


芹がずっと心に残していた疑問を解くために二人は動き出していた。

中田操江は引っ越しをしており田園調布の高級マンションで一人暮らしをしていたのである。


訪ねた二人に彼女は

「あの時の…探偵だった子ね」

と言い

「感謝はしているわ」

あの女を捕まえてくれたんですもの

と告げた。

「あの人がいなくなって一人暮らしには広すぎるでしょ?」


春香は頷き

「実は貴女が事件の時に言っていた『騙された』と言う言葉がずっと引っ掛かっていて」

その真意を聞きに

と告げた。


操江は少し驚き

「…そう」

と言うと少し考えて

「良いわ」

どうぞ

と二人を招き入れた。


操江は二人にお茶を出すと

「それで…騙されたと言った話ね」

と告げた。


芹はそれに

「はい」

と答えた。

「騙されたっていうのはその…」


春香が冷静に

「痴情ではなく他の意味の騙されただと俺達は思いました」

だから殺人の動機が一見痴情の縺れに見えて

「本当は違うところにあったのではないかと」

気にかかっていたんです

と告げた。


操江は瞬きしてフッと静かに笑むと

「そうね」

もう過ぎたことだし

「警察がそう結論を出したしあの女も捕まったからと思ったけど」

と言い

「でも私の中にもくすぶっていたから」

調べて頂戴

と告げて立ち上がった。


…夫が騙されて取られたものをお見せするわ…


そう言って書類封筒を棚から取り出したのである。


2人が原口真奈美を調べているとき明日は姉の家を出てその足で東京グランデュオ大手町ホテルへと向かっていた。


三木厚美はアクロバットの店員なのだ。

警察から彼女の詳細情報を聞き出すのは難しいと思われた今はアクロバットのオーナーもしくは同僚から聞くしかなかったのである。


明日はホテルに着くとエレベーターに乗って12階へ行き準備中のラウンジ・アクロバットの中へと入った。


真昼間ということで客の姿は殆どなかった。

窓際の方にアルコールではなくコーヒーなどを飲んでいる客が2、3人いる程度であった。


明日はカウンターに立っている男性に

「あの、マスター」

と呼びかけた。


それに男性は「いらっしゃい」と営業スマイルを浮かべた。

明日はカウンターに座り

「三木厚美さんのことで話を聞きに来ました」

と告げた。


男性は手を止めると息を吐き出し

「警察には散々話をしたんだけど」

まして彼女は捕まって今更

と告げた。


明日はICレコーダーを置いて

「実は彼女は亡くなりました」

と言い驚いた男性を前に

「それで彼女がここへ勤めることになった経緯と事件の前で気になったことが無いかを」

と告げた。

「俺は彼女が犯人だと割り出した探偵です」


男性は驚いた顔で明日を見た。

明日は真剣な顔で

「お願いします」

と告げた。


男性は息を吐き出すと

「まあ、俺が知っている範囲だが」

と告げ、話を始めた。


男性はアクロバットのマスターで開店当時から勤めていた。

三木厚美は普通に面接に来て雇い入れた女性で彼から言わせれば『そんなことに手を染める子じゃなかった』と言う話であった。


ただ…と男性は息を吐き出すと

「あの事件の3、4か月前くらいに親友から素敵な男性を紹介されたと喜んでいたが」

変わった話と言うとそれくらいか

「それから彼女は男性から色々な贈り物をされたとか幸せそうに言っていたんだが」

とぼやいた。


明日は小さく

「3、4か月前か」

とそれに

「彼女の親友か」

と言い

「その親友の名前は?」

と聞いた。


男性はう~んと唸りながら

「何だったか…一度だけ聞いた覚えが」

上條?だったかなぁ

と呟いた。


明日は男性に笑顔で

「ご協力ありがとうございます」

と告げた。


男性は明日を見ると

「彼女は普通の子だったんだ」

ニュースでは酷く言われていたけどね

「真実を見つけてくれ」

と告げた。


明日は笑顔で

「俺はそのつもりです」

と答えラウンジを後にした。


そして手帳に彼女が変わった4か月前と上條と言う親友の名前を書いた。

「4か月前にその怪しい男を紹介されたことはきっと偶然じゃないんだろうな」

元々そのつもりで彼女に紹介したんだ

「つまり」


明日は「ちょうど良い序だ」と言うとエレベーターを降りてフロントへと向かった。

フロントの女性に声を掛けると

「すみませんが、先月襲撃事件にあった上岐田陽一氏の会場の申し込みは何時でした?」

と話をしたのである。


女性は明日を見ると

「あら、貴方は警察の人と」

と言い

「少しお待ちください」

と奥に入るとファイルを手に

「ええと、申し込みは2月ね」

と告げた。

「2月の21日になってるわ」


明日は「やっぱり」と言うと手帳に書き込み

「ありがとうございました」

と頭を下げた。


その時、フロントマネージャーの男性が困ったように

「酒谷さん、警察官と一緒じゃない時は探偵と言ってもお客様情報を教えてはいけないからな」

個人情報だ

と注意し

「君も今後は気を付けてくれ」

と告げた。


彼女はハッとすると

「あ、すみません」

桂マネージャー

と頭を下げた。


明日も頭を下げ

「わかりました、次からはそのようにします」

と答えた。


確かにそうだろう。


桂光也は

「以後気を付けるように」

と言うとその場を立ち去った。


明日は肩を竦めてホテルを出ると人込みに紛れながら歩き

「つまり、その上條と言う三木厚美の友人はJDWの人間で上岐田陽一の会合が入った情報を聞き利用したんだな」

と呟き、東京駅前の交差点で信号待ちをしながらハッとすると

「いや、だとすれば…誰が…その会合のことをJDWに…」

と言い不意に感じた気配に顔を向けて背中を押されると前へと体勢を崩した。


駅前の交差点には多くの人が垣根を作っており、誰も渡る先を見ており自分に関係のない人間の動向など気にも留めていない。


激しいブレーキの音が響き、明日は衝撃を感じると体に走った痛みに意識を失いかけた。

悲鳴とざわめきと。

明日はポケットに入れていた携帯を揮えた指先で押して、そのまま意識を手放した。


「…芹…春香…」

…頼む、ぜ…


明日の倒れ落ちたところから血が広がりどよめく人々に紛れて明日の荷物を持って一人の男が姿を消したのである。


芹と春香は中田操江から書類を預かりマンションへと戻っていた。

内容を精査してこれまでの内容を整理しようと考えていたのである。


しかし、その帰宅途中の列車の中で春香の携帯に着信が入った。

春香は芹と列車を途中下車し着信に応えたのである。


「播磨?」

もしかして依頼?


彼はそう言い一瞬携帯をスポーンと落とした。

金属音を立てて携帯が落ち、芹は慌てて拾うと

「春香、どうしたの?」

と聞いた。


春香は蒼ざめながら

「あ、悪い」

と受け取り芹を見つめると

「明日が事故にあって重体だって」

と告げた。


芹は目を見開くと

「…そ、れで?」

病院は?

と聞いた。


春香は固唾を飲み込み掛けてきた播磨に病院を聞くと品川駅へ向かう列車に乗る為にホームを移動した。


とにかく到着した列車に乗り込み二人は急いた気持ちで窓の外を見つめた。


播磨正は迎えに行こうかと告げたのだが、列車で移動した方が早いと直行で向かったのである。

病院は品川にある東都品川西病院であった。


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