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1Day探偵  作者: 如月いさみ


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14/21

その7-2

春香は頷くと播磨に

「わかった」

家の前で待ってる

と答えた。


芹が一旦部屋に戻って鞄を手に外へ出た時に丁度播磨が現れ、現場へと向かうことになった。


車には何時もの通りに明日が乗っており芹を見ると

「お、実家から帰って来てたのか」

と告げた。

「弟とは話しできたのか?」


芹は頷いて

「ああ、隆弘と話をしてきた」

きっと俺の為に目を覚ましてくれたんだと思う

と笑顔を見せた。


明日は笑むと

「そうか、話しが出来て良かったな」

と言い

「亡くなったのは残念だけどな」

と告げた。


芹は小さく頷いた。

芹は「あ」と言うと

「それから、春香には言ったんだけど」

探偵の件は前向きに考えるけど

「他にやりたいことが出来たり向いてないと思ったらごめん」

と告げた。


明日は芹を見て小さく笑うと

「わかった」

芹の人生だ

「一緒に探偵業して欲しいとは思うが芹が一番好きなことをしたらいいと思うぜ」

と答えた。


芹は頷いて

「ありがとう」

と答えた。


春香にしても。

明日にしても。

きっと、本当は父親にしても。

自分のしたいことをすることを望んでくれていたのだろう。


芹は車窓を見ながら

「本当に一番立ち止まって一番背を向けていたのは俺だったんだよね」

隆弘はきっとそれを俺に教えてくれるために目を覚ましてくれたんだ

「ありがとうな、隆弘」

と目を細めて夏の様相が広がる町の光景を見つめた。


車が到着したのは渋谷区の4階建てのマンションであった。

芹や春香がいる独身専用のマンションと同じようなタイプで1LDKのセパレートタイプの造りであった。


玄関があり左手にユニットバスとトイレがあり反対側がキッチンで奥にリビングがあった。

その向こうがベランダで男性の部屋は3階であった。


既に部屋の周辺には黄色のテープが貼られて鑑識が指紋や足跡採取をしている状態である。

芹と春香と明日は播磨と霧島に連れられて中へと入りながら事件の詳細を聞かされたのである。


説明をしたのは何時もの通り播磨であった。

「被害者は兩水三郎。26歳で業務用冷蔵庫の販売とメンテナンスをする金台氷造株式会社の経理部の社員だ」

発見者は彼の同期で営業部の上倉誠一

「彼が無断欠勤していると聞いて尋ねたところで発見に至ったそうだ」

その時このマンションの管理人も一緒に立ち会っている

「死因は絞殺で死後硬直の具合から死亡推定時間は午後9時ごろと思われる」



芹はそれを聞きながらリビングに貼られた白い人型のテープに「本当に事件なんだよな、怖いよな」と思った。


明日はその横に立ち播磨を見ると

「それでベランダとその扉の鍵は閉まっていたんだな」

と確認した。


播磨は頷いて

「鍵は管理人が予備の鍵で開けてその時窓の鍵が締まっているのも二人で確認したそうだ」

と告げた。


中では一人の男性が困ったように事情聴取を受けていた。


明日は周辺を見て手掛かりがないかを確認し、春香は男性のところへ行き

「貴方が第一発見者ですか?」

と聞いた。


男性は彼を見ると

「え?」

と驚いた。


春香にしても明日にしても芹にしても高校生だ。

現場に高校生徒とはと思ったのだ。


播磨は男性に

「彼らは警察公認の探偵なので」

先の話をお願いします

と告げ、春香に

「彼が先程説明した第一発見者の上倉誠一さんです」

と紹介した。


上倉誠一は驚きつつも

「それが今朝会社に行ったら兩水の上司に声をかけられて兩水が無断欠勤しているから連絡を取って欲しいって話で」

俺はちょうど営業回りをしていたから寄ってインターフォンを押しても

「携帯を鳴らしても返事はないし携帯の着信は中から聞こえるしで」

心配になってマンションの管理人に話をして扉を開けてもらったら中で倒れている兩水がいて

と顔を伏せた。


春香は頷いて

「その、兩水さんの無断欠勤は今日だけですか?」

と聞いた。


上倉誠一は頷き

「ああ、兩水は真面目だから連絡もないのが気になったんじゃないかな?」

と告げた。


春香は「なるほど」と言い

「その兩水さんの周辺で何かトラブルとか」

あと兩水さんから何か相談とかありませんでしたか?

と聞いた。


上倉誠一は腕を組むと

「んー」

トラブルは聞いたことないなぁ

「兩水は真面目だから人に対しても誠実だしな」

と言い、不意に

「あ、そう言えば二日前くらいに『営業部で変な噂聞かないか?』って聞かれたな」

と告げた。

「営業部なんて噂ばかり流れる部署だからなぁ」

色々あるぞ~って言ったけどな


春香はそれに

「それはどんな内容を?」

と聞いた。


上倉誠一は困ったように

「いや、大したことは言ってなかったけど」

あの時言ったのは

「俺達の大きな成績は全部課長が持って行くって話はしたけど」

俺たち平が大型の契約を取った会社に後から課長が挨拶に行くんだけど

「結局、契約を取ったのが課長になってるって話で」

まあ大型の契約を課長が二重契約しているんじゃないかぁなんて話はしてたってことかな

と告げた。

「でも、それは兩水が事務方だしそういう話を一切しないし…信頼していたから」

まあ愚痴だし

「だいたい二重契約なんて実際していたら経理でばれるからな」

そう言えば

「取引先のヤクモフーズで大々的な人事異動があるっていう噂があるって話もしたな」

それくらいだった


春香は頷きながら

「ありがとうございます」

と答えた。


その時、現場を見て回っていた明日が戻り

「聴取はどうだった?」

と春香に聞いた。


春香は手帳を目に

「周囲にトラブルは見られなかったらしいが別部署の同僚…あの第一発見者・上倉誠一に『営業部で変な噂聞かないか?』と聞いたそうだ」

と告げた。


明日は目を細めて

「ほぉ」

と言い

「それで?」

と聞いた。


春香は頷いて

「彼は被害者の兩水三郎に大型契約を後で挨拶に行った課長に取られているという愚痴とヤクモフーズで代々的に人事異動があるという噂が流れているという事を云ったそうだ」

と告げた。

「本人は冗談で二重契約されてるかもといったみたいだよ」

それでそっちは?


明日は「ああ」と言うと春香と芹を見ると

「こっちへ」

と人型のテープの横に行き倒れている鞄を指差した。

「この中に鍵が入っていた」

鍵は一つだけで合鍵はなかったという事だ


芹は驚きながら

「じゃあ、本当の密室!」

と呟いた。


明日は頷いて

「まあ、有体に言えばな」

と言い

「だが、本人が自殺をしたわけじゃないから必ずトリックがある」

そういうもんだ

と告げた。


明日は玄関に移動し

「ここな」

とポスト口を指差した。


春香はボスとの口に付いている細い筋を見て

「密室を作った名残かも知れないってことだね」

と告げた。


芹は腕を組み

「トリックって本当に探偵だよね」

と心で突っ込んだ。


それに明日が

「探偵だ」

と突っ込んだ。

「芹、お前時々顔に出てる」


…。

…。


春香は苦笑し

「俺は分かってたけど敢えて沈黙を守ってた」

と呟いた。


芹はハハッと笑い

「でもこの細さならひも状のものだよね」

と言い戸を開けて外に出るとポストの蓋をあげて中を見た。


そして、中から落ちている鞄を見てその向こうを見ると

「出来るかどうかわからないけど一石二鳥の方法はあるかも」

と告げた。


それに春香と明日は戸を開けて

「どういうこと?」

「ああ、どういうことだ?」

と同時に聞いた。


芹は中に入り

「違うかったらごめん」

と言い

「じゃあ、近くのコンビニでテープと紐買いに行ってくる」

と踵を返した。


それを春香が止めると

「播磨さん」

と播磨正を呼んだ。


播磨は駆け寄ると

「春香くん、何だい?」

と聞いた。


春香は彼に

「密室トリックを芹が解明したかもしれないから紐とテープが欲しいんだけど」

と告げた。


播磨は驚いて芹を見て

「まじか」

と言うと

「わかった」

と外へと出て行った。


明日はそれを見送り

「芹の考えが正しいなら」

密室は問題なくなるが

「次は犯人の特定だな」

と呟いた。


春香は頷いて

「そこだよね」

と言い霧島に目を向けると

「被害者の死亡推定時刻は昨夜の9時だという話だったけど」

第一発見者の上倉誠一と金台氷造株式会社の彼の周辺の人のアリバイは?

と告げた。


霧島世雄利は頷いて手帳を出すと

「上倉誠一は昨夜の9時は彼と付き合っている女性と食事に行って一晩泊っているのが確認されている」

9時から11時まで食事してそのまま相手の家に泊まり込んで出社したそうだ

と言い

「兩水の所属していた経理部だがその日は飲み会があったそうで全員にアリバイがある」

課長は遅れて来たそうだが7時には飲み会に参加しておりその後はずっと席を外さなかったと証言が取れている

「遅れたのは営業部の書類に不備があったらしく営業部の課長に注意をしていたそうだ」

と告げた。


それに春香は

「でも本当ならそれに被害者も出席していないとおかしいんじゃない?」

と呟いた。


それに霧島は

「それが彼はその日約束があるとかで断ったらしい」

と告げた。


明日はあっさり

「その約束の相手が…犯人か」

と告げた。

「しかし飲み会に被害者だけが欠席となると会社以外の人間の可能性が高いな」

俺はてっきり

そう言いかけて、春香が

「経理部の彼の上司…課長が怪しいと思った?」

と聞いた。


明日は頷いた。


芹は一人窓際に行くと窓の鍵を見て

「うん、多分あってるね」

と呟いた。


そして目を細めて

「もしかして」

と呟くと

「あのさー」

と言いかけて、悩んでいる二人に言葉を飲み込んだ。

が、すっと明日が芹を見ると

「なんだ?」

と聞いた。


春香も近寄り

「何?」

と問いかけた。


芹は2人を見ると

「ここに粘着物が付いてる」

多分テープのだと思うんだけど

「ほら、テープを使う時は大抵素手じゃないかなーって」

と告げた。


明日がハッとすると

「指紋か」

と告げた。


そして、鑑識を呼んで指紋を試しに取るように告げたのである。


その後にテープと糸を戻ってきた播磨から受け取り、芹は先端を上に向いている窓の鍵の端にテープで貼り真っ直ぐ引っ張って鍵を入れた鞄をポストの中側のところで支え、戸を閉めてから鞄から手を離して重みで窓の鍵が締まるのを確認してから糸を思いっきり引っ張ってテープを剥がして引っ張り出した。


鞄の位置は多少手前にズレがあったものの恐らく間違いないだろうと思われたのである。


明日はそれを見て

「これで密室は解けたとして」

問題は犯人の割り出しだな

と言い汗を拭った。

「八月だから暑いのは仕方ないが」

冷房は入れていたんだろうな

そう言ってリモコンを手にして目を見開いた。


「なるほど…な」

そう言うトリックを使えばアリバイは崩れるか


明日は春香にリモコンの表示画面を見せた。

春香は息を吐き出し

「なるほどね」

と言うと

「播磨」

と呼び

「このリモコンの温度で部屋を冷やしたとしての死亡推定時間を計算し直してほしい」

と告げた。


播磨は目を見開くと

「あ、ああ」

分かった

と言うと鑑識に声を掛けた。


春香は明日を見て

「そうなると、グルかな?」

と呟いた。


明日は頷き

「その可能性は高いな」

と答えた。


春香は足を踏み出し上倉誠一の元へと進み

「すみませんが、金台氷造株式会社の契約書関連と経理書類の書類のチェックをします」

貴方の取り扱った大型の契約…貴方がぼやいていた会社の契約書類をチェックする時に立ち会ってください

と告げた。

そして播磨を見ると

「それをお願いする」

と告げた。


播磨は頷いた。


その後、警察が金台氷造株式会社へ立ち入り契約書類と経理書類を確認し、大型契約に関して二枚契約書が存在していることが分かった。


一枚は営業が最初に交わしたものでもう一枚はその後に営業部の課長が作り直した社内に向けたものであった。


金額部分が違っておりその差額を経理部の課長と営業部の課長が横領していたことが分かったのである。


そして、それに気付いた兩水三郎が課長に不正を正すべきだと話をし、バラされては困ると殺害に及んだのである。


密室トリックは芹の解いた通りで、時間はリモコンの温度を低く設定しタイマーを利用して死後硬直などの時間を狂わせたのである。

その為、一刻も早く遺体を見つけてもらう必要があり上倉誠一はその発見者として利用されたという事であった。


テープの貼った場所から指紋が採取され、それが決定打となって経理部の課長は自供し、営業部の課長もその共犯で二人とも逮捕されたのである。


帰宅途中の車の中で明日は

「さて、来週の木曜日から夏休みだな」

と呟いた。


芹と春香は顔を見合わせて

「「そうだった」」

と呟いた。


明日は笑いながら

「お前ら」

と言い

「ま、暫く事件が無ければ会うことないからな」

ゆっくりな!

と芹と春香のマンション前に来ると手を振って告げた。


芹と春香は車から降りながら

「明日も、ゆっくり!」

「熱中症に注意だね」

と手を振った。


芹は車を見送り春香を見ると

「夏休みに入ったら…本格的に調べ出そう」

また説明するから

と告げた。


春香は頷いて

「わかった」

と答え

「宜しく、芹」

と笑顔を見せた。


しかし…思わぬ事件が明日を含む3人を待ち受けていたとは全く予測すらしていなかったのである。


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