その6-2
男たち二人は驚いて避け、芹は大きく足を踏み出すと人質の男が持っていた鞄を手に窓ガラスに向かって放り投げた。
ガラスを割って鞄は外の歩道へと落ちた。
瞬間にバスが停止し、人質の男が芹に
「貴様!!」
と殴り掛かってきたのである。
芹はそれを避けると
「やっぱり!!」
と男の腕を掴んで背負い投げをして通路に倒し
「誰か、窓から警察に声を!!」
それから鞄の回収を頼んでください!!
と叫んだ。
ナイフを持っていた男は芹の鞄にあたって通路に倒れたものの、ふらりと立ち上がった。
同時に乗客の二人が窓を開けると
「助けてーーー!!ジャックです!!」
「バスジャックです!!その鞄!!回収!!」
と叫んだ。
手前の交番から警察官が飛び出しガラスに塗れた鞄を拾い上げバスへと近づいたのである。
が、バスは急発進し、警察官は直ぐに無線をして応援を頼んだのである。
芹は走るバスの中でナイフを突きつけてきた男を前に
「肝心の宝石はもう手に入らない」
意味ないよね
と告げた。
それに男は目を見開くと
「何故」
と聞いた。
芹は運転手を一瞥し
「運転手、貴方、人質の三人で宝石強盗をして…バスジャックをして逃走して逃げるつもりだった」
行き先は恐らく羽田?成田?
と告げた。
男はせせら笑って
「おいおい、まるで計画を知っているような口ぶりだな」
とナイフを横に薙ぎった。
芹は避けながら冷静に
「冷静に見れば分かるよ」
だってバスジャックされたのに運転手の人
「エマージェンシー表示だしてないんだからね」
と告げた。
「緊急事態の時にバスは犯人に知られないようにエマージェンシー表示を出すように言われているんだよ」
まして貴方は一度も窓の外を警戒していなかった
「グルなら当然だよね」
気絶していた男が目を覚まし
「このガキが」
と芹の足を掴んだ。
ナイフを持っていた男はそれを見て
「頭が良すぎたのが悪かったんだな!」
とナイフを振り上げた。
瞬間にバスが急停車し、男は態勢を崩して前へと倒れ落ちた。
芹も態勢を崩して足を掴んだ男の上にしりもちをついたのである。
周囲にはパトカーが3台止まっており中から警察官が出てきてバスへと乗り込んできたのである。
それに乗客が
「その男とその男と運転手が犯人です!!」
と叫んだ。
芹も逮捕されそうになったがそれに
「その子が助けてくれたんですよ!!」
と乗客が止めてくれたのである。
芹が放り投げた鞄の中には宝石強盗が盗んだ宝石が入っており、三人とも自供したのである。
芹も他の乗客と共に軽くその場で事情聴取を受けて解放され、慌てて東京駅へと向かった。
早朝に出たので予定の新幹線より二本ほど遅くなったものの午前10時発の新幹線に乗り込み一路大阪へと向かったのである。
芹は本当に一息ついて座席に身体を預けると
「はぁ…変な運で宝石強盗捕まったから春香は学校行ってゆっくりできるよね」
と呟いた。
しかしこの時。
春香と明日は警察庁で思わぬ報告を受けていたのである。
播磨が険しい表情で二人を前に唇を開いていた。
「昨夜、三木厚美の遺体が拘置所内で見つかった」
それに明日が目を細めると
「三木…厚美というとまさか」
と呟いた。
播磨は頷いて
「ああ、先の襲撃事件の時に入れ込みをしていたアクロバットの女性店員だ」
首をつっているのが見つかった
と告げ、ちらりと春香を見た。
春香は視線を動かしてそのまま話を続けるように勧めた。
そう、もう記憶が無いのだ。
芹がいれば説明をそっとしてくれていたのだろうが、今は芹もいない。
春香は黙ったまま情報の収集だけに勤めたのである。
明日は春香の記憶が一日しか保てない事を知る由もなく腕を組むと
「遺体の写真…見せてもらえるんだろ?」
と告げた。
播磨は息を吐き出し
「言うと思った」
と言い
「これは極秘に手に入れた」
警察内で箝口令が敷かれている
と二人の前に写真を出した。
極秘?箝口令?と二人は同時に思ったが写真を見て直ぐに理解した。
彼女の首筋に索状痕があった。
ただ、吉川線もあったのだ。
つまり自殺ではないという事だ。
芹がいれば恐らく同時に『原口真奈美』のことも出して背後関係の深さを彼らに伝えたのだろうが、今は大阪に帰っていたのである。
芹はまさかそんなことになっているとは知らず新大阪に降り立つと弟の隆弘が入院している病院へと向かっていたのである。




