表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1Day探偵  作者: 如月いさみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/21

その6-1

芹の携帯電話に着信が入っていた。

それは襲撃事件で捕まった女性の事情聴取を聞いていた時だったので気付かなかったのだ。


父親の飛鳥隆男からで

『芹、久しぶりだな。実は隆弘が今朝目を覚ましてお前に会いたがっている。会いに来てやって欲しい』

というモノだった。


芹は事件後に家に戻りそれを聞くと暫く俯いて動けない自分を再確認するのであった。


会いたい。

会って謝りたい。


けれど、怖いのだ。

どんな顔をして弟に両親に会えば良いのか分からないのだ。


明日は水曜日。

「学校があるよね…でも…」


芹は息を吐き出すと

「取り敢えず春香に動画を撮って渡して…話をしよう」

と立ち上がった。


1Day探偵


春香の返事は非常に端的で的を得たモノであった。

「芹、帰らないと後悔すると思うけど?」

弟さんに言いたい言葉があるんだろ?

「帰っていえば良いと思う」

芹が実家に帰って伝えたい言葉を伝えることより勉強の方が大切なの?


…勉強より大切なモノなんて星の数ほどある…

「本当に必要な時は学校を休んで良いと思うけど?」


芹はそれを聞いて心を決めると動画のUSBを渡して翌朝早くに家を出た。

その目の前に春香が立っており

「あれ?」

と声を零した。


春香は芹を見ると

「あ、気にしなくて良いから」

と笑みを見せ

「気を付けて行ってきな」

と告げた。


そこに播磨が現れると

「あれ?春香くん一人だと聞いたけど」

と言い

「宝石店…芹君も行くのかい?」

と春香と芹を交互に見た。


芹は「宝石店?もしかして事件?」と聞いた。


春香は息を吐き出し

「早朝に宝石店に強盗が入ったんだけど」

店員の女性が強盗犯の一人に噛みついて手を怪我しているから直ぐに見つかるとは思ってる

「検問も敷いてるからね」

芹は気にせず大阪へ帰るんだ

「いいね」

とビシッと告げた。


芹は戸惑いながら

「わかった」

と答え

「ありがとう、春香」

と言うと鞄を抱えたまま播磨に

「すみません、実家に帰るので」

春香のことお願いします

と会釈して立ち去った。


芹はマンションから出て3分程歩いた場所にあるバス停から東京行きのバスに乗り息を吐き出した。


早朝という事もあって人は多くはない。

芹を含めて4人ほどである。


芹は何度も溜息を零しながら頭の中で両親にあった時の言葉や弟の隆弘に言う言葉を模索しシミュレーションしようとしても思い浮かばない状態であった。


「なんて言えば良いのかなぁ」

そう呟いた時に停留所バスが止まり芹と同じようにボストンバッグを持った男性が乗り込んできた。


芹は思わず「おお!」と一瞬親近感を覚えた。

旅行者なのかもしれないと思ったのである。

が、続けて入ってきた男性が急にその男性を背後から羽交い締めにしてナイフを男性の首筋に当てると

「動くな!」

と言い、運転手を見ると

「さっさと出せ!」

と声を上げた。


全員が驚いて目を見開き、芹も大きく目を見開いた。

所謂バスジャックであった。


芹は椅子に座りながら

「何故!?」

こんな時に

と思わず心で叫んだ。


実家に帰る緊張感の前に生死にかかわるバスジャックに遭遇するとは…有り得ない。

そう言う気分だったのである。


他に座っていた人々も蒼褪めキョロキョロと視線を動かしていた。


人質を取った男性はナイフを一番近くに座っていた芹に向けながら

「お前!携帯電話を集めて俺の前に置け!」

と告げた。


芹は戸惑いながら

「え」

と声を零した。


男性は人質の首筋にナイフを当てると

「早くしろ!」

と怒鳴った。


人質の男性は

「お願いします」

と言い、視線を下げた。


芹は立ち上がると他の乗客のところへ行き

「すみません」

と声をかけながらチラリチラリと視線を走らせた。


バスはそのまま走行し、バス停で停まらず走っている。


芹は他の乗客の分も集めて男性の前に持って行き

「これで」

と告げた。


男性は視線を下に向けて

「置け」

と告げた。


芹は頷き、携帯を男性と人質の前に置き男性を見てハッとした。

男性の手に絆創膏が貼っていた。


しかも血が滲んでいる状態である。


芹は鞄を置いていた席に戻り

「まさか、宝石強盗??」

と考えながらバスの中や周辺の建物をそれとなく見た。


どうにか助けを呼ぶ方法はないのか?

そう考えていたのである。


「外に知らせる方法が…」

そう考えかけて建物のガラスを見て息を飲み込んだ。


乗客は全員じっと座りナイフを手にした男も人質の男にナイフを向けたまま椅子に座っていた。


芹は鞄を抱き締めながら

「…もし宝石強盗なら…宝石は?」

それに播磨さんは『強盗犯の一人』って言っていたってことは

「複数犯だよね」

と心で呟き犯人と人質の男を見た。


バスは車の少ない道路を快走し何処かへと向かっている。


芹は息を吐き出すと

「きっと俺達が人質なんだ」

と心で呟き、バスのフロントから見える光景に息を飲み込んだ。


「一か八か」


そう考えると自分の鞄を手に立ち上がると

「振り落とされないようにしっかり捕まってください!!」

と叫ぶと人質とナイフを手にしている男に向かって投げつけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ