英雄(ヒーロー)と呼ばれる俺。6
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
クラス中が騒然とし、『勇者』の男子生徒に注目が集まる。
「おお、すげえ...なんかよくわかんないけど、すげえ力を感じるぜ...」
そう言って、誰もいないところでブンと剣を振るう。
すると、ヒュッと空気を切る音が聞こえるのは当然として、剣から閃光が見えた。
どうやら、このステータスプレートの表示と同時に、ちゃんと自分の力も上がり、人外レベルの力を発揮できたようだ。そのうち、こんの勇者の生徒は、光介をも超えてしまうかもしれない。
しかし、その勇者の生徒は迸る剣の光がかっこいいのか、何度も周りに見せつけるように振るっていたので、当分のうちはステータスが超えられてしまうことはないだろう。
最も、光介の『職業』は文字通り不明なのだが。
というか、なぜ全員がバリケードができていることに違和感を持たないのだろうか。気にする余裕がないだけだろうが。
さて、ずっとその様子を傍観していた光介はというと、月奈が見つけていたようにステータス画面からアイテムボックスを開けることに気が付いた。
「これじゃあ、まるでゲームだな。...強制的に参加させられてることから考えると、デスゲームでも始まるのかもしれないが。」
そして、光介はここに来てからずっと呆けている人物...アイシャ先生に近づいて話しかける。
「先生、呆けてないでしっかりしてください。確かにこの状況は、全員把握できていないようですが、先生が早くまとめないと、後悔してしまう結果になりますよ。それでもいいのですか?」
頭ではわかっていても理性が認めてくれないのか、アイシャ先生は、
「無理だ。確かに私には教師として生徒を導いていかねばならない責務がある。だが、あの子たちが聞いてくれるとも限らない。しかも、私の方にも出てきたが、ステータスというもので力関係が決まるのだろう?もしもそれが表示通りの力関係だとしたら、少なくともそういう生徒は十中八九こちらの話は聞いてくれないだろう。」
どうしたもんだろう。そう光介は考える。自分自身がいくら先生に語り掛けても本人のやる気がないんじゃ、強制させることもできない。だが、このクラスがまとまっていくにはアイシャ先生の力なしには無理であると。
そもそも光介は人の先頭に立っていけるような柄ではない。
これじゃあ、アイシャ先生が折れない限りは話が進まないと予感し、月奈あたりに先生の説得か、クラスの統一者の役を頼もうと思った矢先、突然後ろから、アイシャ先生に語り掛けてくる声が聞こえてくる。
「アイシャ先生、そんな弱気になってちゃだめですよ。先生がそんな不安な顔をしていると、本当に先生のことを慕ってくれてる生徒ががっかりしちゃいますよ。」
光介にもいつの間に接近してきたのかわからなかった。足音も完全に消えていて、気配や呼吸までも一切の音が何かに妨げられているように一切聞こえなかった。
ふつうはそれが当然だろう。しかし、光介は周りがどんなに騒がしくても、半径5メートルからの足音は聞こえるし、これぐらいの距離なら、呼吸音はもちろん聞こえてくる。
なぜ、そこまで聞こえるのか。それは、このクラス内のとある協力者のおかげだ。今はクラスメイトに混じっているが。
しかもその生徒が作るものは、高性能なのだ。それこそ、市販の高級なものよりだ。それを材料から作り出すというのだから、驚きだ。人外レベルである光介のもとには天才も集まることがあるらしい。
話を戻そう。月奈はそれからさらに先生に聞かせるように、さらに語り掛ける。
「実際、先生を慕っている生徒は多くいますよ。私もそうですけど、最初に先生を説得しに来てくれた、光介くん、あと、あそこでいつ話に割って入ろうかというみんなも。このクラスのみんなは先生を慕ってくれてますよ。」
そして、月奈は目いっぱい背伸びして、先生と目が合うような位置に顔を持っていく。
「だからアイシャ先生、どうか私たちを教師として、導いてくださいませんか?」
『アイシャ先生、お願いします!』
クラス中から自然と声がそろい、その言葉がアイシャ先生の心に響いた。
「ごめんな。みんな。こんな弱気な姿を見せて。うまく導くことはできないと思うが、みんなをまとめていけるようにはするから、あらためて、よろしくな。」
よかった。どうやら、異世界へ来てしまったことへのショックから立ち直れたようだ。
しかし、その瞬間さっきのタブレットからまた声が聞こえた。
『あ、そうそう言い忘れてたけど、みんなにはこれからここに来る魔物を倒してもらうからね!それからのことは、自分で考えて頑張ってね~』
それだけ伝えられ、その画面はまた真っ暗になった。
とりあえず、アイテムボックスという便利なものを手に入れたので、自分の持ち物をそこに入れる。
そして、これから来るであろう敵に向けて準備運動を始める。
光介はどうやら素手で戦うようだ。おそらく、使い慣れないものを使うよりも使い慣れている己の拳が一番信用できるからだ。武器も武器で訓練すれば何とかなるだろうが。
どのみち、光介には武器を使うことはできなかった。なぜなら、光介のアイテムボックスの中には『?』と書かれたものが複数あるのみで、取り出すことのできる様子がなかったからだ。
突然教室で走ったり、腕立てを始めた光介に呆れる視線と、なぜそんなことをしているのか、という視線が集まった。
...バリケードはどけられていないままだが。
いかがでしたでしょうか?今回は月奈が少し活躍しましたね。とは言っても光介の方が今後活躍する予定なのですが。
さて、それはそうと、光介の協力者とはいったいどんな人物なのでしょうか?今後もぜひ読んでいってください。
次回の投稿も来週の土曜日の予定です。※都合により遅れる場合があります。
それではまた次回お会いしましょう。