英雄(ヒーロー)と呼ばれる俺。4
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
月奈が教室へと入った時、光介はすでに授業の準備をしていて、友人と談笑していた。
「光介、やっぱりお前好きなやつとかいねえのか?ほら、月奈ちゃんとか。いつも甲斐甲斐しく弁当作ってくれてんじゃん。付き合いたいとかねえの?」
周りを見てみると、女子だけでなく、男子までも聞き耳を立てている。
「少なくとも今のところはないな。あいつ、いつも弁当は作ってきてくれるが、文字通り毒だからな。」
「なんだそれ。漫画とかによくある感じのダークマターでも生成してんの?」
光介はあからさまに目をそらし、短く答えた。
「まあ、ある意味ではな。」
「ふーん、よくわかんねえな。まあいい。お前が月奈ちゃんを狙ってないなら俺は狙うぜ!というか、お前、うらやましすぎんだろ!この学年どころか、学校のほとんどの女子に人気じゃんか。かっ~俺もイケメンに生まれたかったな。」
そんな言葉に周りの男子は首がもげる勢いで首を縦に振る。女子はそんな男子を若干冷たい目で見る。
「嘆いたところで何も変わらないだろう。それに、人間は何も顔で決まるわけじゃない。普段の行動、性格、言動、すべてで以て周りからも判断される。己の努力次第でいくらでもどうにかできる。そこは頑張ってみる価値はあるんじゃないか?」
「うるせー。全部そろってるやつに言われても嫌味にしか聞こえねんだよ」
再び男子は立ったまま寝違えたような首の痛みを抱えつつも、必死に首を縦に振る。次は本当に首がもげそうだ。
そんな様子に光介はあきれつつ、教科書を開き、昨日の授業の復習をしておく。正直、光介にはそんなことする必要はないのだが、これ以上何もしなくても永遠と話しかけられ続けるだけなため、面倒くさいから教科書を読むフリをするのだ。
月奈はもちろん会話の内容は聞こえていたが、前に面と向かって光介に指摘された部分もあるため、特に何も言わず準備を始める。というか、気にしないようにしないと、ただえさえテストの点数もギリギリなため、少しでも授業態度で評価を上げないとどうしようもないからだ。
月奈が授業の準備を終えたときにアイシャ先生が入ってきた。
「うぃ~す。お前ら席に着け~朝のホームルーム始めるぞ。」
そんな気の抜けた声でクラスメイトは自分の席へと戻っていく。
「よし。全員席に着いたな。じゃあ出席をとるぞ~。」
アイシャ先生は生徒の名前を呼び、出席をとり終わったころ、突然、
『こちらは全校放送です。ただちに放送に従うように。教室から出ないでください。繰り返します。教室から出ないでください。今出ると、二度と戻ってこれなくなります。』
突然の放送に、教室中はHR前よりも騒がしくなり、もちろん、アイシャ先生もどっからどう見ても困惑している。
「大胆なやつもいるんだな。これは一発喝を入れておかないと。」
そして、放送がいたずらによるものだったと思ったのか、アイシャ先生は教室を飛び出して放送室へと向かおうとした。
しかし、アイシャ先生がドアに手をかけた途端、
「ドアを開けたらダメだ!!」
と、止める者がいた。光介である。
突然叫んだ光介に驚いてアイシャ先生だけでなく、クラスの全員が光介に視線を向ける。
「いきなりどうした?何かこの件に関わってるのか?」
アイシャ先生は怪訝そうな顔をしつつも、ドアから手を離し、教卓の前へと戻る。
「いえ、そうではなく、なんというか、勘です。俺は昔から野性的な勘というべきか、危険なことが近づくと軽くその場所に対して嫌悪感を抱くんです。さっきもドアの奥に嫌悪感を感じました。」
「おい、光介。今はふざけていい時じゃあないだろう。」
「俺がふざけてこんなことを言うように見えますか?」
「まあ普段のお前ならありえないが、この件に嚙んでいると考えた場合は見えるだろうな。」
そっとため息をついた光介は、どう話したら信じてもらえるのかを考える。
アイシャ先生にこの件に噛んでいないということを主張するために口を開こうとした瞬間、再び放送が流れる。
『全員が条件を達成できたのは2年A組のみ。よって、2年A組の生徒は招待をするとしよう。全員が条件を...』
先ほどとは異なる口調で淡々と同じことを機械的に繰り返す放送に、いい加減に堪忍袋の緒が切れたのか、クラスの中で一番短気なクラスメイトが廊下に出ようとドアに手をかける。
しかし、その反対側...つまりは窓際で驚いた声が聞こえてきたため、その生徒も動きが止まり、窓の方を振り返る。
「な...なんだあれ...」
普段の風景...校庭から一変し、いつの間にか外の風景が変わり、色とりどりな植物の生える草原であった。
しかも遠くには町らしきものが見えるが、壁のようなものに囲われていて現代の街並みとは造りが異なるようだ。
さすがの光介もこの事態に焦りを覚えるほかない。
光介はとりあえず、教室の上に嫌悪感を抱いたので、自分のカバンをつかみ、使えそうなものをこっそりポケットに入れておくことにした。
いかがでしたでしょうか?今回は光介のクラスがなにかトラブルに巻き込まれたみたいですね。一体どうなることやら...
次回の投稿も来週の土曜日の予定です。※都合により遅れる場合があります。
それではまた次回お会いしましょう。