英雄(ヒーロー)と呼ばれる俺。21
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
佐奈が目の前で絶命してしまったことで、光介には深いトラウマが植えつけられることとなった。
もちろん、普段はそれを隠しているが、時々それを夢やフラッシュバックとして思い出してしまい、気分が下がる原因となってしまった。
だが、そのおかげというべきか、その後の救命活動にもよい影響を及ぼしたのだが、それはまた別の話だ。
光介は佐奈がなくなったことが自分に責任があると言い、しばらく自分を責めていたが、佐奈の両親から君のせいじゃない、気が付かなかった自分たちの責任だと自分を責めていた。
そんなこともあり、光介はふさぎ込もうとしたが、周りからの......主に光介の叔父からの励ましによって光介は前を向くことができた。言われた内容には、今はまだ触れないでおく。
こんな出来事があり、エルフの少女の「サーナ」という名前に引っかかるところがあったのだ。あくまでも名前が似ているというだけで、実際には関係がないはずだ。
だが、奇しくも、サーナにコウちゃんと呼ばれることとなった。
「おい待て、なぜ『コウちゃん』なんだ?もっと他にも呼び方があっただろう。」
「ダメですか?エルフの間では仲良くなりたい相手には誰でも『ちゃん』づけか呼び捨て、もしくはあだ名で呼び合うんですよ。」
なるほど『くん』づけの選択肢はないらしい。
「じゃあなぜ、あだ名をつけたうえでちゃんづけなんだ?」
「なんか響きがいいので。コウや光介ちゃんよりもいいですよね?」
「呼び捨てにしようとは?」
「助けてもらった命の恩人に呼び捨てなんてできませんよ!どうしてもこの呼び方が嫌だって言うのでしたら、変えますけど......」
光介はため息をついた。『コウちゃん』と呼ぶ理由もかすっている程度ではあるが、佐奈と理由が似ている。光介は、もはや生まれ変わりと言われても違和感のないぐらいに感じられた。だがサーナの年齢的にありえない話であるため、その可能性はなくなった。
「いいじゃん!コウちゃん。呼びやすいし、響きもなんか可愛い!私もコウちゃんって呼ぶね!コウちゃん。」
「なんでだ。締め落とすぞ。お前に言われるとなぜか知らんが、イラっとくる。」
どうやら月奈に対する辛辣な態度は変わらないようだ。
しかし、月奈は光介のそばまで近寄り、耳元で「コウちゃん♡」と言ってきた。そのため、光介は宣言通り締め上げた......ということまではせず、月奈にアイアンクローをかました。力もそこまで込めなかった。
当のアイアンクローされた月奈は嬉しそう顔をしているため、ジャれる目的で言ったのかもしれない。もしくは光介からでた寂寥として雰囲気に敏感に気が付いていたためか......
どんな理由であれ、光介のさっきまでの軽い気分の落ち込みは解消された。
ちなみに、サーナはそれぞれの呼び方を決めていた。
月奈は『ナーちゃん』、狼華は『ルーちゃん』、シェナはそのまんま『シェナ』、健人は『ケント』、奏華は『ソーちゃん』、阿見都は『アミ』とのことだ。
それぞれ、サーナからの呼ばれ方を自分の中で反芻していたようだが、光介が口を開いたことによって、それは中断された。
「さっきから聞いてばかりで申し訳ないが、サーナはなぜあの狼どもに追われていた?それに、さっき言っていた、とある事情で解放されたというのはどういうことだ?容姿だけで言うのなら、少なくとも、誰かを奴隷にするようなやつが手放すとは思えん。」
すると、女性陣がざわついた。なぜなら、今の発言は言外にサーナのことを可愛いと言っているようなものだからだ。
もちろん、光介はそんなつもりはなく、推測で考えたことを言っただけだ。
幸い、サーナは気が付かなかったようで、さっきとは変わらない......むしろ、少しまじめな雰囲気をまとって、少し目を伏せがちに話し始めた。
「元々、私は親の代から奴隷でした。中でも、親は特に性奴隷の類でした。もちろん、私も同じ立場になりました。そして、ある時買い手が見つかり、今日がちょうど輸送される日でした。」
「その途中であの狼たちに襲われたと。」
光介が追われていた理由とつながる推測を話し、サーナに確認を取る。
しかし、サーナは首を振り答えた。
「違います。あの狼たちは私が逃げてきたときに追いかけてきただけで、私を奴隷商から解放してくれたのは、『デッドベア』という生物です。簡単に説明すると、そのデッドベアと遭遇すると、ほとんどの確率で生き残れないと言われている生物です。」
どうやら、そのデッドベアに襲われ、奴隷商が真っ先に殺されたことでサーナは逃げることができたようだ。さらに、護衛部隊が遅れて到着したことで、そっちにデッドベアの意識がそれたことで、ちゃんと逃げることができた。
「その時、戦っていた護衛の人たちが間違えて荷車を燃やしちゃったみたいで、奴隷の証である誓約書が燃え、奴隷という身分から解放されることになりました。」
では、あの狼たちはなぜ追いかけてきたのか、それを光介が聞いたところ、予想外の答えが返ってきた。
「私、なんか特殊な体質で、オスの野生動物に求婚されてたのですよ。」
光介含め、全員の目が点になってしまった。どうやら最後の衝撃的な情報に、脳の処理が一瞬追いつかなかったようだ。
いかがでしたでしょうか?今回は、サーナが狼に襲われてた理由がわかりましたね。まさか、襲われるというのは、そういう意味でとは思いませんでしたね。物語の進行に加えて、光介以外の過去も書いていきたいと思います。
次回の投稿も来週の土曜日の予定です。※都合により遅れる場合があります。
それではまた次回お会いしましょう。




