中学校時代~弟へのコンプレックスの増大~
剣道以外でも弟と私の違いを認識したのは小学校のころだ。私は周りの空気を読むことができなかった。そのせいだけでもないと思うが、小学校四年生のころには立派ないじめられっ子になっていた。あれはストレスだった。毎日学校に行くのは疲れた。家の二階から飛び降りようかと考えたことも何回かあった。それと比べて弟はいつもクラスの中心人物だった。少なくとも、私にはそう見えた。弟には休み時間に図書室以外に居場所があり、放課後遊びに行く相手がたくさんいた。
中学生になってからも、そのあたりの弟に関する感情はあまり変わらなかった。反抗期になったぶん、余計にひどくなっていたかもしれないが。中学生になってからは、部活と塾の関係で弟と顔を合わせる時間は減っていた。そのころの弟は、完璧だった。勉強は常に上位、運動も得意で、体育祭などでは常にクラスメイトに頼りにされていた。友達もたくさんおり、気の合う仲間と楽しくやっているようだった。一方の私は、中学校でも相変わらず空気が読めずにクラスにうまくなじめなかった。成績も、中学校のテストや成績のシステムにうまく適合できずに小学校の頃の何もしなくても点が取れた時期とは雲泥の差。部活でもレギュラーになんてなれるはずもない。そんな状態だった。
人には生まれ持った才能がある。そう思い始めたのはこのころだったと思う。私に与えられた才能は、公立中学のクラス40人中、5~6番目の成績をとれる程度の勉強の才能のみで、ほかには何もないということも薄々気が付き始めていた。一方弟には、少なくとも運動の才能はあるようだった。アスリートにはなれないにしても、一通りのスポーツを並み以上にそつなくこなす程度には。また、コミュニケーション能力もあるように見えた。人を不快にさせず、余計なことをしゃべりすぎず、和やかな関係を作る能力。私が高校生になるまで気づくことすらできなかった能力を、弟は自然と持っていた。また、勉強の才能もこのころは少なくとも私と遜色ない程度には持ち合わせているように見えた。中学生の頃の私は、学校でうまくいかないことや、弟へのコンプレックス、その他諸々でかなり参っていたかもしれない。