あれは誰なんだ
目の前に千夜子ちゃんがいる。千夜子ちゃんは制服を着ていた。
千夜子ちゃんはチョコを抱いていて、にっこり笑って僕にこう言った。
「ねえ、明良くんはこの子のこと好き?」
「うん、好き」
「じゃあ、わたしの事は好き?」
「えっ・・・?」
「好き?」
その瞳に圧を感じる。
「うん、好き」
言っちゃったーーーーー!言ってしまった!
「うれしい!」
千夜子ちゃんは僕に近づいてきた。そして僕の耳元で
「わたしも、明良くんのことが・・・」
はっ・・・!
夢だった。恋をするとこんな夢まで見るんだ。知らなかった。
期末テストの結果は、不可なくやや可。成績は少し向上していた。首尾良しとはいかなかったものの、一応の結果は出せただろうと母にスマホの件を打診してみた。
母曰く
「そうねぇ、緊急時に連絡が取れなくて困ることが無いように、そろそろ持っていてもいいかもしれないわね」
だけど、交渉の材料に成績のことを出したのがヤブヘビだったようで
「そのかわり、もうちょっと勉強がんばんなさい」
と言われてしまった。
「へぇー、じゃあスマホ買ってもらえることになったんだ」
「うん」
翌朝、僕はチョコちゃんにその事を報告していた。
「よかったじゃん」
「うん、それで・・・メッセージアプリ入れて・・・」
「うん。連絡先登録しようね。楽しみ」
チョコちゃんは迷いのない笑顔を僕に見せてくれた。うれしいなあ。
その日の午後、僕は駅ビルの大きな本屋に来ていた。『勉強がんばんなさい』と言われた手前、その姿勢は見せておかないといかない。参考書を買いに来ていた。苦手な教科・・・英語と就学の参考書を見繕ってレジに向かう。
その途中、通路の先にチョコちゃんを見かけた。いつもの公園以外でその姿を見ることはなかったので、はじめは幻覚か妄想かと思ってしまったけれど、彼女で間違いなかった。
だけど、それがチョコちゃん本人じゃないと思いたい要素もあった。
チョコちゃんは男の人と一緒だった。
その人は背が高くて、高校生くらい?に見えた。誰だろう・・・。
お兄さんかもしれないけど、家族の話は特にしてなかった。聞いておけばよかったと後悔した。
1人でいたのなら迷わず声をかけられたけど、この状況を見てしまった僕にはそれは無理な話だった。
黒くどんよりした気持ちのまま、僕は家に帰った。
片想いの相手が異性と2人でいたのを見てしまった時の気持ちを明良くんと共感できる読者さまは是非いいねを押して行ってください。