君に会えない日々に気付いたこと
「え、これってそんな意味があったんだ」
チョコちゃんは猫のチョコを膝に乗せて撫でながらそう言った。
あれから2週間が経った。
「ぴゅ~る作戦」は大当たりで、チョコは彼女にも心を許したようだった。今日みたいに膝に乗って甘えるようになるのに時間はかからなかった。やっぱりこの猫は特別人に慣れている。
「うん、この耳が地域猫の証」
「へぇー」
猫のチョコの耳には『地域猫』の証として三角にカットした跡がある。これが、その地域で飼育されている印となって保健所の捕獲対象から外される。それだけではないけれど、それは僕からはチョコちゃんには言いにくい内容だった。そう思っていたら
「えっと、ち、い、き、ね、こ」
ああ、スマホで調べ出しちゃった。どうしよう、チョコちゃんショック受けるだろうなぁ。
「・・・・・・・・・」
チョコちゃんは無言でスマホを見つめる。
「そっか、チョコはもう子供を産めないんだね」
「・・・うん」
猫のチョコはメスだった。
「うう・・・かわいそ、う・・・あ」
チョコちゃんが猫のチョコを抱きかかえてギュっとしようとすると、すっとすり抜けて逃げて行ってしまった。
「あははー・・・やっちゃった」
僕は苦笑いを返すしかなかった。
「あ、それでね。わたし、明日から3日ほど来れなくなっちゃうから」
「え、どうして?」
「うん、お母さんの方の家の法事でね。なんか、わたしも学校休んで行かなきゃならなくなったんだって」
「そう・・・そうなんだ」
「お母さんからみて大叔父さんに当たる人なんだけど、お母さんがめっちゃお世話になってたとかで、わたしのこと報告したいとかなんとか」
「どこへ行くの?」
「東京」
「そっか・・・それじゃ泊りがけになっちゃうね」
「うん」
そんな感じで、その週末は僕だけで猫のチョコと早朝の散歩を過ごすことになった。・・・のだけれども・・・。
あれ?
なんだろう。僕はなんでこんなに空っぽな気持ちになってるの?
僕は、どうしてこんな切ない気持ちになってるの?
チョコちゃん、千夜子ちゃん、君に会いたい。君の声が聞きたい。
そうか。
これが人を好きになるって事だったんだ。
これが恋だったんだ。
明良くんはスマホをまだ持ってないので千夜子ちゃんと連絡を取る手段がなかったのです。持っていれば、自分の気持ちへの自覚は違う形になっていたかもしれません。