ぴゅ~る大作戦
「それじゃ、一緒にいる時に呼び方がごっちゃになっちゃうね」
「えっ?」
「・・・あっ!ごめん!知り合ったばかりなのにあだ名で呼ぼうとか・・・」
「ふふっ・・・いいよ!」
その時、彼女が僕に見せてくれた笑顔に胸が締め付けられそうだった。
「呼び方は君に任せるね。君の名前は?」
「あ、あきら・・・明るいに、良し」
「明良・・・いい名前だね」
「うん、そう思う」
「それ自分で言っちゃう?・・・あははっ」
「あ、それでね、作戦を考えたんだけど」
「なに?なに?」
「今度来るときは、これを持ってきて」
と言って、僕は「ぴゅ~る」を一袋渡す。
「ぴゅ~る?」
「ぴゅ~るの魔力に逆らえる猫はいない!」
「な、なるほど?」
「”チョコ”はぴゅ~るが大好きだし、この袋にぴゅ~るが入ってることも知ってる。ぴゅ~るをくれる人の事も好きになる、はず」
「名案だよそれ!!」
「死角から急に現れないで、遠くからぴゅ~るを見せながら近づく方がいいと思うんだ」
「うん、そうかもね」
「あ、そろそろ帰んなきゃ学校行くし」
「淳成なんだよね?僕は城北なんだけど・・・」
「うん、淳成の2年だよ」
年上だったーーーーーーー!
僕もチョコちゃん(心の中でだけはそう呼びたい)も背は高い方じゃないし、同い年かどうかは希望的観測みたいなところもあったけど、あったけど・・・・。
年上だったかーーーーーー!
翌朝。
僕はいつものベンチでチョコと一緒にチョコちゃんを待っていた。僕はチョコを抱っこしていた。ふいに逃げてしまう確率を下げようと思った。
「あ、きた」
チョコちゃんは、ぴゅ~るの袋をチョコに見せるようして近寄ってきた。
「チョコ、今日はあの子がぴゅ~るくれるって」
チョコも、チョコちゃんがぴゅ~るを持っていることに気が付いたようだ。視線が手元に釘付けになっている。
「あ、逃げない?逃げない?」
「大丈夫っぽいよ?ぴゅ~るを開けてくれるの待ってる」
「うん、今開けるからね?」
チョコが、チョコちゃんが差し出すぴゅ~るを夢中で舐めとっている。
「うわぁぁ、わたしがあげてるぴゅ~る食べてるよぉ。めっちゃかわいいいいいいい」
「最後まで絞り出してあげて」
「うん、うん。あぁ、手に付いちゃった」
「あ」
チョコは、チョコちゃんの手に付いたぴゅ~るを舐めとっている。
「あ、明良くん・・・わたし、もうだめ」
「え?」
「この子が可愛すぎてわたし死んじゃう」
僕は君が可愛すぎて死にそうです。
その日も時間いっぱいまでチョコちゃんとおしゃべりした。
とある愛猫家さんがどこかで出してた「ガチギレしてる猫に『ちゅ~る』って言うだけで即落ちする動画」は面白かったですよね。