君に会えない日の発見
1月ーーーー。
一年で最も寒いこの時期、チョコちゃんは早朝の散歩を休みがちになっていた。
単純に寒すぎて辛いという事だけど……。連絡は取れているので変に不安にはなったりはしない。猫のチョコの画像を送ってあげるといい反応が返ってくる。
一人で猫のチョコと過ごしていても、やや手持ち無沙汰を感じてしまう。僕はスマホをいじっていた。
「そういえば、春香ちゃんが『チョコちゃんが小説サイトに投稿してるかも』って言ってたっけ」
僕はなんとなく開いた小説サイトで「チョコ」とキーワード検索していた。
「タイトルとタグでヒットしたのが2880件。ユーザー名で1件?」
そのユーザー名は”チョコたん”だ。まさかとは思うけど。
”チョコたん”の投稿作は短編がひとつだけ。
「”あたしにとって何より可愛いのは猫ちゃんより君”?」
これってーーーー!
この作品の”君”は僕のこと? いや、さすがに考えすぎじゃないだろうか。
僕にはこの作品を開く勇気がない。猫のチョコを抱いたままスマホを見つめて固まっていた。
「なに? 話って」
その日の放課後、僕は春香ちゃんを”いつもの場所”とは違う公園に呼び出していた・
「これを見て」
小説サイトの”チョコたん”のユーザ情報が表示されたスマホを見せる。
「これがチョコちゃんじゃないかって?」
「うん」
「えー? さすがに偶然じゃない?」
「さ、作品のタイトルを見てみてよ」
「ほうほう、なるほど」
「どう思う?」
「読んだの?」
「そんなの、見る勇気ないよ……」
「ヘタレ」
「ぐぐぐ……」
「まあまあ、それじゃあたしが確認してあげよう」
「お願いします」
スマホを春香ちゃんに渡して内容を見てもらう。”チョコたん”の小説は短編とはいえ2万文字程度あって読み切るのにはそれなりに時間がかかった。
読み終えた春香ちゃんの感想は……。
「うん、これは……」
ゴクリ。
「チョコちゃん本人だね! 間違いない」
「……まじすか」
「聞いてた感じの体験談がベースになってるね。フィクションも適度に混じってるけど」
「僕のことはなんて?」
「いやー、タイトルそのまんまよ」
「女の子に可愛いとか思われてるのは、なんか恥ずかしい……」
「まぁねー。でも実際カワイイ系の顔立ちじゃん。明良くん」
「そうなのかな? 自覚はないよ」
「まあ、猫ちゃんより可愛がられてるとかは小説のネタにしてるだけかもしれないし」
「そうかも」
「少なくとも、チョコちゃんが今の明良くんとの関係が気に入ってるのは感じられたわ」
「それなら良かったけど」
「まあ、あたしは応援してるからね。いい感じになれるよ。きっと」
「ありがと。あ、この小説を見たことはチョコちゃんには内緒で」
「当然ね」
帰り際、僕は相談に乗ってもらった春香ちゃんに感謝して自販機でホットココアを奢った。
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