追跡の結果は
「まあ、気にならないと言えばウソになるけどさ」
「なら早くいこ。見失っちゃうよ」
思いがけず、春香ちゃんに手を引かれる感じになってしまった。慌ててトレーを取って片付ける。
チョコちゃんと謎の男の人は10メートルほど先を歩いている。変に親密だったり、距離感が近かったりという感じはしない。
「特に怪しい感じはしないね。明良くんはどう思う?」
「右に同じ」
僕的には尾行する意味は無いような気がする。あの男の人は十中八九チョコちゃんのお兄さんだし、それが確定しても僕の立場は変わらない。尾行の切り上げるように提案しようと思っていたところで、チョコちゃんたちは駅前の広い歩道にある駐輪場で清算機の操作を始めていた。
「ああ、自転車で来てたんだね。追跡はここまでかー」
「そうだね」
二人は同じ方向に進み走り出し、見えなくなっていった。普通に家に帰ったと考えるのが普通だ。
「あの様子だとお兄さんで確定でいいのでは?」
「うーん、否定は出来ないね」
春香ちゃんも納得はしてくれたようだ。
「どうしようか?もう、用事は一通り済んだけど」
「そうねー、帰ろっか」
僕らはなんて事のない会話をしながら帰宅した。
その日の夜、チョコちゃんからメッセージがスマホに届いていた。
(ねえねえ、24日に春香ちゃんちで部活の子たちでクリパやる話があったんだけどね)
(あ、うん。そうみたいね)
(知ってるって事は明良くんも誘われたんだよね?春香ちゃんそれっぽい事言ってたんだけど)
(うん。お断りしたんだけどね)
(そうかー、まあ女の子ばっかりだし居心地悪いよね)
(おっしゃる通りです)
(それでね、そのパーティーが終わった後なんだけどね)
(うん)
(いつもの場所で合えない?ちょっとだけでいいの)
(え?もちろんいいけど)
(ありがと!終わったら連絡入れるね)
(了解しましたー)
(じゃあ、おやすみなさい)
(おやすみなさい)
ツイている。せっかく買ったプレゼントをいつ渡すのか?という課題があったのだけれど、チョコちゃんの方から思いがけずお誘いがあるとは。毎朝会ってはいるのだけど、早朝にプレゼントを渡すのはちょっと違う感があるし。
それに、チョコちゃんから会いたいって言ってくれたことに対する期待も自然に膨らんできてしまう。『そんなものはお前の妄想だ』と自己批判しながらも、彼女からの告白が?みたいな空想をしてしまう。そんなクリスマス目前の夜だった。
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