明良、プレゼントを買う
僕は駅前商店街にあるファンシー系の雑貨店に、春香ちゃんと来ていた。
「とりあえず、自分で”これは!”っていうのを探してみなよ。それで行けそうかはあたしが見てあげるから」
「え?春香ちゃんが選んでくれるんじゃないかったの?」
「バカね。”明良くんが選んだもの”に意味があるんじゃない!」
「そういうもの?」
「そういうもの!あたしは邪魔しないように離れてるから、存分に選びなさい!」
なんでそんな上からなの?と思いつつ、横からあれこれ言ってくるよりはありがたいかもしれない。
雑貨店には日用品が幅広く取りそろえられている。だから、目当てのものの選択肢は案外少ない。僕はマフラーや手袋があるコーナーに立ち寄ると、品定めをする。
手袋に合うように考えるのか、制服に合うように考えるのか、どうにもイメージが沸かない。漠然と、紺や緑が無難なのかな?と考えつつ手に取って見ていると、春香ちゃんが寄ってきて
「そういう濃くて暗めの色だと制服と同化して沈んちゃうでしょ?明るめの色の方がいいかもね」
「なるほどね。じゃあこれはどう?」
僕は薄いピンク色のニット帽を手に取って聞いてみる。
「いいと思う。私服とも合わせやすそう」
「じゃあ、これにする」
春香ちゃんのOKが出たので、会計をしてプレゼントラッピングをしてもらう。そしてそれを手持ちのバッグに詰めて僕らは店を出た。
「ありがとう。今日は助かったよ」
「どういたしまして」
「お礼にポテトでもおごるよ」
「うん、それはありがたく頂いておきましょう」
僕と春香ちゃんはハンバーガーショップに入って大きめのポテトをシェアする。
「そういえばさ」
「なに?」
「文芸部ってどんな活動してるの?」
「ん-ーいろいろ?小説書いてる人もいるし、詩を書いてる人もいる。あたしはまだ読むだけかな」
「チョ・・・千夜子ちゃんは?」
「ん?気になる?」
「うん、まあ」
「小説書いてるっぽいね。自分のパソコン持ち込んでいじってることが多いから」
「そうなんだ、すごいなあ」
「そうでもないよ?今って創作活動をするハードルって低いからね」
「ふーん、そうなんだね」
「どこかの投稿サイトに上げてたりするかもね」
「小説を?」
「うん、そう。・・・あれ?」
「どうしたの?」
「チョコちゃんだ」
「え?」
春香ちゃんの視線の先に目を向けると、確かにチョコちゃんがいた。
前に見た男の人と一緒だった。
「おお?隣の男の人はなんなん?」
「お兄さんいるって聞いたけど」
「あの人がそうなの?」
「それは知らないけど」
「ふーん、気にならない?」
気にならない訳はない。けど、踏み込んではいけない予感もする。
「触れない方がいいと思うんだよね。なんとなく」
「いやいや、明良くん。それじゃいかんのよ」
なにがいかんのだろう。
「ちょっと尾行てみよう。あの人がお兄さんなのかどうか気になるっしょ」
モチベーション向上につながりますので、いいね、感想、ブックマーク等で支援お願いします!