表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイ

『女性の方が痛みに強い』説

作者: 歌池 聡

 こういう説、小説や漫画などでたまに目にしますよね。


『女性の方が痛みや苦しみに強い』『血を見ることに対して耐性がある』等々。


 まあ、確かに生物学的にそういうこともあり得そうなのですが、個人差もあるでしょうし、あくまで俗説の範疇なのではないかとも思っていたのです。






 ところで先日、自分は結構なおっさんになってから、生まれて初めての入院・手術を経験しました。

 とある臓器を摘出するという手術だったのですが──いやぁ、これは想像をはるかに上回る痛みでしたね。


 手術当日、麻酔が切れて意識が回復してからは、ちょっと身動きしても悶絶、咳をしてもしゃっくりをしても悶絶……。

 痛み止めは点滴で投与され続けているはずなんですが、もう筆舌に尽くしがたいほどの痛みでした。


 しかし、翌日にはもう立ち上がる練習をするとの予告を受けています。

 医師から事前に『かなり痛いと思いますが、その方が後々の回復にはいいので頑張って下さいね』とも言われてましたが、これ、自分に本当に耐えられるんだろうか……。






 しかし、こんなことで醜態をさらすわけにはいきません。


 実はほぼ同時期に、嫁も同じ病院に入院しているのです。

 嫁に自分の無様な噂が伝わることだけは、断じて避けねば──!!


 そう思って手術前日、普段は滅多に使うことのない動画見放題(サブスク)を活用して、自らを奮い立たせるような映画やアニメを見まくりました。


 ──自分はデジタルに馴染み切れない世代なので、動画見放題(サブスク)の必要性というものがもうひとつ理解できていなかったのですが、入院中は大変に重宝しました。

 平日の昼間、地上波のテレビだけで時間を潰すというのは、これがなかなかに苦行でして。

 持って行った何冊かの本もすぐに読み切っちゃいましたし。

『なら連載小説の続きを書けよ』って話なのですが、環境が変わったせいか、どうもいまいち筆が進まないのです。


 ──入ってて良かった、ア〇ゾンプライムw。


 新規開拓はやめておきました。

 好きな映画を1本観て、そこからは色々な作品の中の自分を鼓舞するようなシーンを飛ばし見です。

 特に、ほぼ十年ぶりくらいに見た某SFアニメは実に熱かった──。

 そう、明日の歩行練習に立ち向かうためのキーワードは──『努力と根性』!






 そして、手術の翌日。

 医師や看護師が入ってきて、色々とチェックをした後に爽やかな笑顔でこう言いました。


「さあ、歌池さん(仮名)。立つ練習をしてみましょうか」


 ──大丈夫。自分はやれる。

 イメージトレーニングは完璧です。


 脳内では、昨日観たあのアニメで、ガ〇バスターが初出撃する時のBGMが勇壮に流れ続けています。


 ──痛いっ。痛いっっ! とんでもなく痛いっっっ!!

 だが、負けるものか! 『努力と根性』だ!

 炎となった自分は──無敵だ!!






 立ち上がりました。

 足踏みも出来ました。

 やった──! 自分は己に勝ったのです! やりましたよ、〇田コーチ!


 そんな震えるような感慨にふける自分に、看護師さんたちの賞賛やねぎらいの言葉がかけられ──ることはありませんでした。


 かけられたのは、なぜか期待が外れて気が抜けたかのような言葉だったのです。


「──あれ、普通に立てちゃいましたね」

「普通、男の人は大概ここでピィピィ泣くものなんですけどねぇ」


 ──え、ええええぇっ? そんなものなんですか?






 医師や看護師さんたちによると、実はこの時、女性はたいがい立ち上がることが出来るそうなのですが、多くの男性は泣き言を言ってなかなか立てないそうなのです。


 ──なるほど。

『女性の方が痛みに強い』っていうのは、それなりに根拠のある話だったんですね。




入院中、安否を気遣ってくれた皆様、連載の続きを待っていて下さった皆様に、心から感謝いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ガンバスター、、、 父親が世代だったので、幼い頃から見せられてたのですよね。あのアニメを見たがゆえに、宇宙へトラウマを抱いてしまった、ほろ苦い記憶があるんです。
[良い点] 女性は小さい痛みには敏感に反応するけど、大きな痛みにはたしかに強いような気がしますね!
[一言] 無事に退院されて良かったです。 おめでとうございます(いうのが遅い 痛みは女性の方が耐えられると言いますが、本当だったんですね。 病院関係者が言うんだから間違いない(なっとく
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ