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おおかみひめものがたり【WEB版】  作者: とりまる ひよこ。
竜玉は泥に塗れど玉のまま

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源獣教-オリジンカルト-

「何かわかったにゃ?」

「……色々と」


 光神教が起こした誘拐事件、そこに源獣教の連中も絡んでいたこと。

 裏にいるだろう蛇の神とかいうのが裏で糸を引いているということ。


 奴ら側にもタイムリミットがあるけれど、こっちの価値を把握しているので逃がすつもりはなさそうなこと。


「今は突破するのは難しい、マリークレアを探して距離を取ったほうがいい」

「わかったにゃ」


 ノーチェに引きずられてみんなのところに戻る。

 特に問題はなかったようだ。


「アリス、無事でよかった」

「マリークレアを探そう」


 スマホで時計を確認すると23時、時間的猶予はなくなってきている。


「すぐ見つかりそうだと思ったんだけどにゃ……」

「ああ見えて頭が切れる方だよ、マリークレアは」


 普段は派手派手お嬢様だけど。


「あ、そういえばね、ゴブリンぜんぜん居なくなっちゃった」

「弾切れと同士討ちじゃないかな」


 そもそも呼び寄せの石が余った在庫みたいなものだろうし、獲物が居ない街で同士討ちでもしたんじゃないだろうか。


「歩き回っていてもすれ違いそうだし……うーん」


 ぼくならどうするだろう。

 最初はステーションを確認する。

 出口の確保は必要だし、敵も味方もそこを目指す可能性がある。


「普人ふたりが監視するなら、視野を広く取れる高い建物……」


 今は改装されているけど基本は地球の近代建築。

 3階建ての建物はいくつか並んでいる。

 そのうちのどれかで、ステーション前の広場を監視できる建物か。


「……!」


 4つ先にある建物の3階の窓、カーテンの隙間でキラっと何かが光った。

 一定の間隔で見えたり見えなくなったりしている、気のせいじゃない。


「ノーチェ、あの建物に行こう」

「どうしたにゃ?」

「光の合図があった、もしかしたら居るかも」

「わかったにゃ、みんな移動にゃ」


 ノーチェの号令を受けて、周辺を警戒しながら建物を目指す。

 マリークレアたちだといいんだけど。



「気付かれないんじゃないかと思いましたわ」


 辿り着いたのは大きめの民家。

 庭に忍び込んで鍵の開いている窓から中に入ると、2階からマリークレアたちが降りてきた。

 豚のぬいぐるみのルイくんを抱いたクリフォトも無事だ。

 なおハンカチで猿轡を噛まされている。


「むぅー」

「そっちの声がでかい姉ちゃんはなんで口を塞がれてるにゃ?」

「小声も大きいからですわ」

「むぅぅふ……」


 なんて無意味な問答を。


「みなさんが居るのは驚きましたけれど、ミリーさんも無事で何よりですわ」

「あの……みんな、本当にありがとう」

「お友達なんですから、当たり前ですわ」

「むぅむぅ」


 小声で会話をしながら2階にあがり、適当なソファに腰掛ける。

 ……やっぱ地球基準のものを再現されてるのか、安定してるなぁ。


「それで、やっぱりあいつらに攫われたんですの?」

「あ、うん……私は寝てる時に無理矢理連れて行かれて、アリスちゃんたちに助けてもらったんだよ」

「ぼくたちはちょっとカチコミに行ったらミリーが連れ去られてたんで、助けた」

「派手ですわ、いいですわね」


 派手なのは増援に現れた時のリオーネだと思う。


「他にメンバーは?」

「居ませんわ、深夜の女子の寝室に男子は連れていけませんもの」


 貴族のお嬢様らしい価値観だ。


「なるほ…………?」

「……?」


 確かにと納得しかけたところで、ぼくと同じ部分でマリークレアも引っかかったようだ。

 揃って首をかしげてから、視線はブラッドに向かう。


「ブラッド、まさか女の子だったりしないよね」

「は!? おれは男だ! ◯◯◯もあるぞ! 見るか!?」

「コラ! はしたないゾ!」


 ブラッドが男性器の名称を出したところでフィリアとクリフォトが悲鳴を上げて顔を覆った。

 最年長のリオーネが叱ってくれて助かる。


「何となく無警戒になっていましたわ!」

「ブラッド、なに自然に混ざって女子部屋入ろうとしてるの」

「はぁ!? ミリーはほべっ!」

「ちょっと来い! そういうのは勝手に言っちゃいけないんだ!」


 リオーネも天真爛漫に見えて、色んな事情のある子たちと一緒に辛い生活をしてきている。

 ちょっと猪突猛進なところもあるけど、思慮深くて気が回る。


「身体は男の子だけど、心は女の子ってこともあるんだゾ」

「えぇ、そんなのあるのかよ」

「そうだ、あたしの知ってる子の中にも……」


 あっちはリオーネに任せよう、頼りになる。


「とにかく合流できて良かったですわ。あとは脱出するだけですわね」

「うん。ただ出入り口のあるステーションは……」

「あのフードたちで固められていますわね、見ましたわ。魔術でまとめて吹き飛ばしてやろうとも考えましたけれど」

「そこまで容易い相手じゃないね」


 なんだかんだでブラウニーのぶちかましの中を生き残れる連中だ、一筋縄ではいかない。


「玩具の街からの援軍がきても良い頃なんだけど、時間がかかってるね。ここもいつ嗅ぎつけられるかわからない、休めるうちに休んでおこう」

「家の中が快適なので待つのは苦ではありませんけども……できれば観光で来たかったですわ」

「本当にね」


 無事に帰れるように、今は休もう。



 建物の中で息を潜めて30分ほどが過ぎた。

 ノーチェとリオーネが下の階で見張り中、ぼくたちは休憩中。

 時間も時間なので眠そうなシャオとスフィを、フィリアが気づかっている。


 あくびを噛み殺していると、足音を消しながら階段を駆け上がる音が聞こえた。


「フードの連中がこっちにくるにゃ」

「このあたりの建物を全部見て回ってるゾ」

「……思ったより早かった」

「戦闘準備にゃ、いいにゃ?」

「うん」


 ゴブリンの反応範囲から絞られているとは思っていたけど、もう少しかかると思ったんだけどな。


「お、出番か!?」

「そう、でるよ」


 狭い家の中だと次々来られたら対処しきれない。


「みんな、ここを離れるにゃ」

「う、うぅー」

「スフィちゃん、頑張って」

「寝てないのじゃ」


 フィリアがスフィたちを起こしている間に、武器を手にしたブラッドとリオーネが先陣を切って階段を駆け下りる。


「ウオオオ!」

「タァッ!」

「ぐわああ!?」


 ふたりに続き、重力を無視しながらぼくも階段を飛び降りる。

 階下に着地すると、入り込んだフード男をブラッドが斬り捨て、リオーネが鉄輪で殴り飛ばすところだった。


「派手過ぎたかナ」

「いいよ、どうせ戦闘音で見つかる」

「出遅れたにゃ!」


 続くノーチェたちのために道を開けると、窓ガラスから見える庭先でぎょっとしているフード男たちと目があった。

 ……自分たちが先制攻撃される側だと思ってなかったのか。


「援護射撃する。フリーズランサーセット。ショット」

「チュリリリ!」


 頭の上の小さいモードのシラタマが鳴き、ぼくが手の平を向けた先に無数の氷の棘が放たれる。


「避けろ!!」


 指笛を吹いていたフードたちが伏せたり横に飛んだりして避ける。

 直後、ガラスをぶち割って氷の棘が庭に突き刺さった。


「足元気をつけて」

「ニャ!」

「よっしゃあ!」

「おれも!」


 続いてノーチェ、リオーネ、ブラッドの3人が飛び出した。

 3人は慌てて立ち上がろうとするフードたちに追撃を加える。

 リオーネは相手の首が折れる勢いで鉄輪で殴りつけ、ブラッドはフードの背中に容赦なく剣を突き立てる。

 ノーチェだけが刀の峰でフードの背中を叩き、倒れたフードの首をリオーネが足で踏み折った。

 ふたりは経験値が違うからか容赦がない。


「よし、退路は確保したゾ!」

「……ニャ」


 自分の手とフードの死体を見比べて、なんとも言えない表情をしているノーチェの肩を叩く。


「ノーチェ、行こう」

「……悪いにゃ」

「無理しないで」


 街なかでの喧嘩成敗なら完全にやりすぎだけど、命を狙ってくるテロリスト相手ならリオーネたちの容赦なさが正解だ。

 死者なしで制圧できるならそれが一番いい。

 でも今みたいに相手の生命を奪わないといけない状況はある。


 冒険者としてやっていくならいずれはぶち当たる問題だ。

 ……経験するにはちょっと早すぎると思うけど、リオーネだけじゃなくブラッドまで平気ってことは、獣人としても避けて通れない道なんだろう。


「あたしがやるからノーチェは気にしなくていいゾ。最初の頃は何度も吐いたし泣いたし大変だった」


 ぼくだって前世も含めるなら結構修羅場を潜っている。

 銃で人を撃ったこともあるし、誘導してアンノウンに襲わせたこともある。

 平和な街中じゃないんだ、命の奪い合いになっている状況でとやかく言うつもりはない。


「むしろ巻き込んで悪かったと思ってる」

「アリスだけで行ってたら追いかけてたにゃ。それに、こいつらは多分部屋まできてたにゃ、そしたら同じにゃ」

「ふ、ふたりは平気なのじゃ?」


 死体に頬を引きつらせながらシャオがリオーネとブラッドに問いかける。


「あたしはまぁ、そこそこナ」

「密猟者とか、誘拐犯がけっこうくるんだ。自分たちの村は自分たちで守らなきゃいけないんだ! おれは次の族長だからな!」


 ふたりとも心構えはできているのか動揺はない。

 やっぱり必要なことなんだろうな。


 ……ていうか、よく考えたらこのふたりも族長候補じゃん。

 リオーネは西の獅子人の集落の族長候補。

 ブラッドは獣人自治区にある共同体の族長候補。

 どうなってんだこのメンバー。


「むぅむぅ」

「もう位置バレたし、クリフォト喋って大丈夫だよ」

「ぷは、お話してる場合じゃないよ! 離れないと!」


 口のハンカチを外したクリフォトが慌てた様子で叫ぶ。


「離れるというより、戦いやすい場所に行きたい」

「もうちょっと広い方がいいな」


 広場には行けないし、もう少し離れた場所に開けた場所はなかったかとかつての地図を思い出す。

 しかし考えつくより先に事態は動いた。


「さっきぶりだなぁ! ガキども!」

「思ったより早く見付かりましたね」


 近くの建物の屋根の上から、ごついフードと細身のフードが姿を現す。

 やっぱり身体能力があるなら屋根を飛んだほうが早いか。


「おまえらしつこいにゃ!」

「大人しくして頂ければ、しつこくする必要もなくなるのですが……ね」


 ごついのと細身のが二手に分かれて道路に降りる。

 ……進行方向を塞がれた。


「抵抗しなければ痛い思いをせずに済みますよ」

「見逃してくれるにゃ?」

「貴女がたも罪を償わねばなりません。ですが安心してください。我等の使命に協力し、命を差し出せば滅罪を果たしたことになります。創造主の復活により新たな楽園が築かれた折には、新しく生まれる事が許されるでしょう」

「おまえら、さっきから罪だの許すだのなにを言ってるにゃ?」


 いいでしょうと細身の男が手で向かい側に立つごつい男を止め、姿勢を正す。

 そして説法がはじまった。


「かつてこの世界には創造主たる源獣の作り給うた楽園がありました。そこでは源獣の力から生まれた精霊たち……真なる神々と、彼等に世話役として作り出された人間たちが平和に暮らしていました。しかし平和な楽園は、星の神に唆された最初の人間の裏切りにより崩れ去ります。最初の人間は主の力を奪い、自らが創造主に成り代わろうとしたのです。争いによって楽園は崩壊し、創造主は自ら滅びに至る眠りに就きました」


 どこかで聞いたことがあるような、ないような話だ。

 出元は源獣教の聖典だったっけ、違ったっけ。

 いまのうちにポケットの中から色々と取り出して攻撃の準備をしておく。

 さっきの精霊砲で思いついたことがあった。


「創造主を失ったこの世界の滅びはその時に確定しました。我等の祖にして、今は神を名乗る人間たちの犯した罪は、"世界を滅ぼした罪"です。この罪により人間と神々は精霊から憎悪されるようになりました……」

「う、うそじゃ! そんなの聞いたことないのじゃ! それに、シャルラートとわしらは仲良く出来るのじゃ!」

「それは源獣の寵愛です。原罪を持って生まれるとて我等もまた世界の一部、源獣の力の一旦を身に宿して生まれる者もいます。加護、恩寵、愛子、アーティファクト……様々な形や呼ばれ方をしていますが、全ては源獣から授かった力なのです」

「な、なんじゃと!?」


 ふむ。


「主たる源獣から授かった力は、主たる源獣のために、世界のために使うことが贖罪になる。それなのに人間たちは争い、奪い合い、殺し合い、自らのためだけに頂いた寵愛を振るい続ける。どれだけ経っても人間も神も罪を重ねるばかり! なんと愚かで浅はかなのか! 我等が誅し正さねばならないのです! 愚かな人間と、寵愛を受けながら罪を重ねる者たちと! それに力を貸す主を裏切った精霊! 全て浄化し主の糧として捧げ、清らかとなった世界を復活した主に捧げる! それこそが贖罪! 我等が、我等こそが! 贖罪を成し遂げるのです!」

「全ては贖罪のために!」

「全ては贖罪のために!」


 強烈な熱を帯びた細身の言葉に、周辺に集まっていたフードたちが大声を張り上げて復唱する。

 いわゆる狂信者にして確信犯というやつらしい。

 こわいなぁ。


「こいつら、おかしいにゃ」

「まぁ、うん」

「……ひう」


 相手の放つ圧にノーチェだけじゃなく全員が気圧されている。


「そ、そんなことして君たちに何が残るんだよ! 自分たちだって人間じゃないか! 一緒に滅ぶとでもいうの!?」


 もうひとりの愛子であるミリーも何か思うところがあったのか声を荒げる。


「スゥー……源獣教の指導者たる贖罪の神、隻眼の翁は予言しました。約定の時来たれば主が復活し、世界の在り方に裁定を下す。人々の贖罪果たされし時、主の名のもと新しき世界は紡がれる。贖罪者は罪を赦され、新しき世界、新しき楽園で生きることを許されるのです」

「まぁ死んでも楽園で生き返り、俺たちが殺した相手も罪を許されるって訳だ」


 細身の言葉に続いてごついのがニヤリと笑う。

 ここは精霊や神なんてものが実在している世界だ。

 精霊(アンノウン)の中には生物から"死"を奪ったり、死体を操るやつもいる。


 その言葉を信じてしまうことは不思議じゃない……でも。


「…………」

「なんでかね、一番事情を知ってそうな古株が尋常じゃないくらい怒ってるんだよね」


 頭の上のシラタマの機嫌が限界値を大幅に下回っていくのを肌で感じる。


「ねぇアリス、髪の毛凍ってる……」

「近づかないでね、危ないから」


 ぼくですら肌表面に薄い氷が張る状態だ、他の人が近付いたら一瞬で骨まで凍結しかねない。

 氷が割れてパキパキ音がする腕を動かして心配するスフィを制止すると、細身の方に踏み出す。


「結局お前らも自分の都合や利益のためにその力を使ってるだけじゃん」

「……やはり獣モドキに我々の崇高な使命は理解できませんか」

「せめて人助けや、人と精霊の橋渡しをしてから言えって思う」


 ぼくの謎の体質があるとはいえ、現実に精霊が味方しているのはこっち側だ。

 ついでに精霊の行動すら否定している。

 彼等の目的を考えればむしろ指標になるはずなのに。


「それでは世界は変わらないのです、現に今まで数多の時間が過ぎようとも贖罪は果たされていない!」

「たしかに」

「言い負けてどうするにゃ!」


 いやだって……。


「もういいにゃ! そんな理由で殺されてたまるかって話にゃ! ダチを守って無事に帰る! それがあたしの今の使命にゃ!」

「なんと短絡的で近視眼的な思考ですか。世界の未来を、大局を考えなさい!」

「未来なら旅に出てからずっと考えてるにゃ! これからもみんなで色んなところに冒険に行って、うまいもん沢山食って、一流の冒険者になって、世界中にあたしらの名前を轟かせてやるのにゃ!」


 ノーチェの叫びを聞いて何故かシラタマの機嫌がよくなった。


「なんと幼稚で愚かな……」

「はっ、あたしは育ちのわるいガキだからにゃ! アリス! 話してる間に足元でなんか用意してたろ! ぶっ飛ばしてやるにゃ!」

「何もないって言ったらどうするつもりなのよ……『錬成』」


 地面に手を当てて錬成を行い、その場に砲台を作り上げる。

 流石に複雑な機構をその場で作り出すことは出来ないので、作りはシンプルだ。


 仕組みは単純。


「情報収集だって、長話を黙って聞くだけの奴じゃにゃいだろ」

「まぁそうだけど。ブラウは発射準備、シラタマは砲弾」


 足元に引っ張り出して固めておいた分厚いスライムストリングをブラウニーが手に取り、長い棒の先端にかけて引っ張り、後端の留め具に引っ掛ける。

 ちょっと張力が強すぎたのかメキリと音がしてひやっとする。

 あとはシラタマが作った砲弾を成形してっと。


「何をする気かわからないが、今のうちに止めなさい! 御使いは前に!」

「よくわかりませんけれども、派手にいきますわよ! クリフォトさん!」

「は、はい! いくよルイくん!」

「後ろはあたしらにゃ!」

「うおおお!」


 クリフォトが操るぬいぐるみのルイくんが武器を手に迫るフードを殴りつけ、マリークレアが派手な光線の魔術を放ちフードを貫く。

 目がくらんで動きが止まったフードたちの脚部を、ルイくんが殴って転ばせていく。


「させません!」

「いくぞぉガキども!」


 普通のフードの奴らは一般兵士に及ばない程度で敵じゃない。

 問題は幹部級と、白い怪物になったやつらだ。


「フィリア!」

「はい! みんなを守って!」

「ム!?」


 突進してくるごついフードのパンチを、フィリアが光の盾を作って受け止める。

 ノーチェとスフィが盾を足場に更に高く飛び、落下の勢いを乗せてごついフードの首を狙う。


「「たああ!」」

「しゃらくせぇ!」


 両腕を強化して斬撃を防いだ男に振り払われたふたりは、それぞれ危なげなく建築物の塀の上に着地した。


「もはや人間相手などと言ってられんぞ、シャルラート!」

「――――」


 シャオの指示によりシャルラートが水のレーザーを放つ。

 しかし男の身体に当たる直前で不自然に威力が弱まり、両腕で防がれてしまう。

 とはいえ地面に引きずった後を残して数メートル地面を滑るくらいの威力はあったようだけど。


「グゥゥゥ! あぶねぇな! 危うく風穴が空いてたぞ!」

「なんじゃとぉ!?」

「精霊術対策か」


 何らかの手段で精霊の力を弱めているようだ。

 まぁ最終目標は星竜っぽいしそのくらいはしてるよな。


「ブラッド! こいつ強いぞ! あたしが前に出るから隙を突け! ガルアアア!」

「まかせろ!」

「く、私の速度についてくるとは、厄介な半獣が!」


 残像を残す速度で動く細身の男に、リオーネは巨大な鉄輪片手になんとか食らいついている。


「あれはリオーネさんじゃないと無理ですわね。ミリーさん、クリフォトさん、私たちは派手に援護に回りますわよ!」

「る、ルイくーん!」

「援護に派手って……ギリギリ1回だけならリンクルを呼べそうだから、もう少し持たせて!」


 細身の方はリオーネとDクラスのメンバーで何とかなりそうだ。


「アリス、怪物が来るよ!」

「ブラウ、照準セット」


 スフィの言う通り、空から怪物の援軍が向かってくるのが見えた。

 数は2体、そろそろ在庫切れかな。


 ブラウニーが砲台を動かして怪物に照準を合わせる。


「ワラビは軌道修正よろしく……発射!」

「ヂュリリリ!」


 ぼくだと力が足りないので、シラタマにレバーを蹴り倒してもらう。

 砲弾は雪の精霊神製の巨大氷柱、砲台は精霊領域の理不尽強度の建材。

 通常の木や鉄ならパーツの方が負ける張力で打ち出された氷柱は、おおよその狙い通りに空中の怪物を貫いた。


 貫通までは行かず、腹部に氷柱が突き刺さった怪物が飛行を維持できずに墜落する。


「……よし」


 威力はブラウニー砲と比べて落ちるけど制御しやすいし、変に貫通したりしないから余計な被害も出にくい。


「おぉー、すごい!」


 ブラウニーが狙ってパンチを撃つとノーコンが発動するなら、狙って撃つのはぼくたちでやればいい。


「再装填!」


 ブラウニーが外れかけたストリングをもう一度かけ直し、シラタマが作った砲弾をセットし直す。


「おいおい、マジの大型アーバレストかよ!」

「ガキの作ったものだからハリボテだとでも思ってたか」


 ぽやっとしてる子供が作ってるものだから、虚仮威しとでも思っていたのかな。

 残念ながらこっちは錬金術師なんでね。

 色々駆使して対抗させてもらうよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] わいるどなカチコミウルフとノーチェさんの口上 [気になる点] 男の娘…ちゃくちゃくと… [一言] 呪いと祝福、寄贈と簒奪、見方と立場によって変わるのかもねぇ…カルトはお断りします
[一言] シラタマが激怒するレベルで事実無根の話なのかな? 精霊がアリス側にいる時点でお察しな事だけどwww
[一言] 北欧神話と聖書をないまぜにしたような シラタマが怒ってるし適当なことを言ってるのだろう ヒャッハー悪い子は串刺しだー!
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