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エリーの回想③

フォエフォ島から出て行くとき、ハルヤさんはドラゴンで移動するという提案をしてきた。

嫌です!私はハルヤさんの背中に乗って移動する方が良いです!!


私の必死な願いと、多少無理のある主張で何とか押し通すことが出来た。

やっぱりハルヤさんって純粋で素直で人をすぐに信じる。悪く言えば騙しやすい。


ハルヤさんはいつも自分を勇者らしくないって言っていますが、そういうところが勇者っぽいんだと思いますよ?



レンダルフィア帝国の首都オンドモンドに向かうことになった。逃げ出した手前、あまり乗り気ではない。


さらに道中にはリーザスの街もある。嫌な思い出を蒸し返しそうだけれど、私のわがままで旅路を邪魔するわけにはいかない。




移動中に大魔人を発見した。空は晴れているのにどうして・・・?

するとハルヤさんは私をリーザスの街に置いていくと言った。


嫌です!あの街には近づきたくもありません!

それにハルヤさんが心配で!!



でも私は自分の思いは口にしない。言ったらハルヤさんが困るから。

私はそれでいい。世界のために、ハルヤさんのために。


本音はきっとハルヤさんに嫌われたくないんだろう。

汚い私を、わがままな私を見せたくないから。だから、私は一歩引いた人間を演じ続ける。



リーザスの街の門番にすぐに見つかってしまった。

そのまま領主館に連れていかれることになった。


嫌だ嫌だ嫌だ!!

本当は泣いて抵抗したい。でも・・・怖い。


今の私ならどんな相手でも倒せるかもしれない。

でも昔の記憶がこの街の恐怖を大きくする。



領主に世界のことについて。そして勇者と預言者について説明する。本当は何も言いたくないけれど。


「勇者か・・・。これは使えそうだな。」


領主は昔のようにいやらしい笑みを浮かべて何かを考えている。

きっとハルヤさんを利用するつもりだろう。それに先ほどからいやらしい目で見られている。

本当にこの人は嫌い。今すぐ逃げ出したい。・・・でも怖くて足が動かない。



助けて・・・助けてお父さんお母さん!

助けてハルヤさん!!!



私の願いが通じたのか、領主館にハルヤさんはすぐに来てくれた。

激しい戦闘があったみたいだけど、それでも来てくれた。


そして領主とその部下たちを瞬く間に倒してしまった。

あぁ。やっぱりこの人は勇者なんだ。強いだけじゃない。不思議な程、力強さをもらえる。



ハルヤさんに勇気をもらった私は領主に蹴りを入れておいた。

復讐は何も生み出さない。だからこれで終わり。


そう思うと、すごくスッキリした。



オンドモンドに向かう途中、ハルヤさんは珍しく私のことを聞いてきた。

すごく慎重に、丁寧に聞いてくる。気を使ってくれているんだろうなぁ。

さっきまであんなに勇敢だったのに。ふふふ。


絆されている私は、自分でも驚くほど全てを話していた。

そして聞いてしまった。


「父は・・・無駄死にだったのでしょうか?」


聞いた後にハッとした。どうしてこんなこと聞いてしまったんだろう?


違うの!私は無駄死にだって考えていたわけじゃなくて!!

優しいお父さんを否定したいわけじゃなくて!!



私は心の中で言い訳を重ねていたが、ハルヤさんはまるで私の心の声を聞いていたかのように、優しく受け入れてくれた。


「お前のお父さんは本当に心優しい人だったんだ。」

「自分に悪いことをする奴でも助けたんだ。そんなの、本当に優しくないと出来ないことだろ。」

「エリーのお父さんは優しい人だった。それも果てしなく優しい人だった。それでいいじゃないか。」



初めてこんな話をした。初めてこんな風に父を受け入れてもらった。

それが嬉しくて、温かくて。


同時に申し訳なくも思う。いつもいつも、私はハルヤさんに助けられてばかり。

ハルヤさんを支えないとと思っていたのに、今ではハルヤさんはその心も強くなって、私の支えなんて必要ないぐらいに強い人で・・・。


落ち込んじゃダメだ!頑張ってハルヤさんを助けられるようにならないと!!



ハルヤさんはオンドモンドに来たのは初めてだったので私が案内をする。

ついでに皇帝に繋げられるようにバルダス大司教様を紹介する。


ふふふ。たまには役に立てました。


大聖堂に着いた。逃げ出した私だからちょっと気まずかったけど、好意的に迎え入れてくれた。やっぱりここの人たちは優しい。


聖堂にはバルダス大司教様はおられなかった。けれど代わりにリーフ司教様がおられた。

むしろリーフ司教様の方が皇帝にも信頼されているし、ありがたい。


逃げ出したことへのうしろめたさを持った私を、リーフ司教様は相変わらず、いや前よりも激しく私を迎え入れてくれた。あまりにも直球な愛情がとても嬉しい。


飛び出して出て行ってごめんなさい。心配かけてしまいました。

でももう大丈夫です。ハルヤさんがいますから。



皇帝への謁見は無事に整えられた。

お城に行くと大臣たちが勢ぞろいしている。


相変わらず何を考えているかわからない顔でハルヤさんのご機嫌を伺っている。

ハルヤさん騙されないで!あの人たちはハルヤさんを利用しようとしています!!


後で忠告しておかないと!と思ったらその忠告は皇帝に取られてしまったようだ。

【王の間】ってズルい。呼ぶなら私も呼んで欲しい。



私たちは教皇領に向かうべく移動した。

もう少しでこの旅路も終わってしまうのかな?そう思うと、寂しくなる。


世界が救われて欲しいとも思うけど・・・でもこの旅路が続いて欲しいとも思う。

世界が救われた後の私たちはどうなるのかな?ハルヤさんは一緒にいてくれるかな?



将来のことを考えるといつも不安になる。

なぜなら将来のことをちょっとでも話すとハルヤさんはいつも濁したり不安な顔をするから。


どうして?将来に何があるの?もしかして前の世界に帰っちゃうの?

そんな不安があるから、あまり未来については聞けない。



教皇領が近づいてくる。

けれど教皇領を繋ぐ港街クリーネの街の上空に差し掛かった時、私の心に異変が起きた。



嫌な感情がたくさん沸き起こる。



お前は必要ない。誰からも必要とされていない。

父も母もリーザスの街の人もお前を見放した。

司教たちも修道女たちも、そして勇者もお前の能力しか見ていない。


お前なんか必要ない。能力だけあればいい。


だというのにお前は能力も満足に使えていない。だから、必要ない。

死んでも大丈夫な程に、無価値な人間。それがお前だ。


・・・いや!!嫌!!!嫌ぁぁぁぁぁぁ!!




いつもそう。私には何も語り掛けられない。誰も誰も誰も語り掛けてなんかくれない。

ハルヤさんにだって必要とされていない。預言を持ってこない預言者なんて無価値。


・・・もう何も考えたくない!もう私なんかいらないんだ!もう放っておいてよ!


私は預言者じゃないただのエリーで良かったの!!

なんでこんな役目押し付けたのよ!!




苦しむ私に声がかけられた。


「うるせぇ!誰が何といおうと俺にはエリーが必要なんだよ!」

「そもそもエリーに預言者としての力なんて求めてねぇよ。エリーがいるだけでいいんだよ俺は。」

「【預言者】なんてのはただの肩書なだけでどうでも良い」

「だって好きだから。エリーがたまらなく好きだから。エリー以外は嫌なんだ。」



嘘!そんな都合のいい話あるわけない!!嘘に決まってる!!


・・・でも、どこかで期待している私がいて。そうなって欲しいって願う私が居て。

私は顔を上げた。



・・・ふふふ。たまには願いも叶うんだ。

必要とされること。それがこんなにも嬉しかったんだ。




ハルヤさんとの旅路はもうすぐ終わってしまう。

でもハルヤさんは好きだと言ってくれた。それならきっと魔王を倒した後も・・・。


ハルヤさん。魔王を倒した後もこうやって乗っけてくれますか?

どうしても不安になった私はつい聞いてしまった。


ハルヤさんはいつもとは違い、「そのためにやっている」と言ってくれた。



・・・やっぱりこの人は嘘が下手。未来のことを語るといつも背中がこわばる。そして今もこわばった。

どうして?何があるの?好きって言ってくれたのに、私を置いて行ってしまうの?



教皇領は何者かに洗脳されているのか、神の名前がすり替えられていた。

きっと魔王が何かしているに違いない。


動揺しているとハルヤさんが落ち着かせてくれた。

・・・それは私の役目なのに。最後まで役に立てなかった。


そう思っていたけど、教皇領にいる大司教以上の人たちを抑えておいてくれと頼まれた。

初めて荒事を任された。ふふふ。これは少しは信頼されているという事でしょうか?


本当は魔王に向かうハルヤさんがとても心配で、他のことが手につかないほどだけど。

でもハルヤさんに任されたことに集中する。



ハルヤさん・・・生きて帰って来て!




ハルヤさんと魔王の戦いが始まっていく。

私は教皇を抱えて扉の外に出て、すぐに魔道具で【土魔法】を使い扉を埋めておく。


さらに上の階に向かう場所を凍らせて通れないようにしておく。


周りが騒ぎに気が付いたようで私の方に向かってくる。

私は逃げながら一室に誘導して、そして部屋の扉を【土魔法】で固定してを繰り返す。


時折魔法で攻められるけど、大した威力ではない。でも反撃して傷つけるわけにもいかない。

何とか工夫しながら時間を稼ぎ、ハルヤさんの方に人々が行かないように気を付ける。



途中、大きな音が上から聞こえてきた。

その音の度に心臓の鼓動が早くなる。



ハルヤさんは大丈夫かな?

魔王にやられてないよね?



考えれば考えるほど不安になる。だけど今は信じる。必ず勝ってくれると信じる。

勇者だからじゃない。ハルヤさんだから、負けるはずがない。



今まで以上にひときわ大きい音が鳴ったのは、ちょうどバルダス大司教様たちを部屋に閉じ込めた時だった。

驚いて上の方を向くが、当然天上しか見えないので何も分かるわけではない。



・・・もしかして戦闘が終わったの?

ドキドキする。怖くなる。不安になる。でもきっと大丈夫。大丈夫。


必ず、勝ったはずだから。



・・・その時、旅の間一度として与えられることのなかった【預言】が与えられた。

頭の中に直接響いた。



なに・・・これ・・・?



どうして?


どうしていつも役に立たないくせに。

どうしてこんなことを私に伝えてくるの?


【預言者】なんてよく分からない役目を押し付けて、旅の間一度も役に立たなかったくせに!


これを伝えるために私を【預言者】として遣わしたの?!



上の方から何かを壊すような音が聞こえた。

少しすると、ハルヤさんが私を見つけて駆け寄ってくるのが分かった。


「ハルヤさん!!!」


良かった!無事だった・・・!

魔王に勝てた喜び。無事だったことへの安堵から笑顔になった。



だけど・・・さっきの預言を思い出した。


どうしよう。どうすればいいの?これを伝えないといけないの?


「ハルヤさん・・・。」


上手く言葉がでない。

伝えたくない。ようやく魔王を倒して、ようやく使命から解放されたのに。


「ハルヤさん・・・。」



ねぇどうして?!どうしてこんな【預言】を私に伝えるの?!





『勇者は、死なねばならない。』




私の役目は・・・ハルヤさんに死を告げることだったの?

あらすじ書き直しました。

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