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エリーの回想②

ハルヤさんはどうも勇者をやる気はないらしい。むしろその職業に苦しめられていたようだ。


その姿がますます、自分に近いものを感じさせ、より好感を持った。


もし【預言者】と【勇者】じゃなかったら、こんな風には出会えなかったかもしれない。

けれど【預言者】と【勇者】だから、今こうして同じ痛みを分かち合い、信頼し合える気がした。



それから過ごす一週間は、久々に誰かと過ごす一週間でとても安心した。そしてなにより楽しかった。



ハルヤさんは何でも屋として色々なことをしていた。


どうして村にたった半年で溶け込めるのかと思っていたが、それはハルヤさんがたくさんのスキルを使って築き上げた信頼のおかげらしい。


でもハルヤさんはそれを「大したことじゃない」と言っている。


きっと本気でそう思っている。多分、そうやって自分を苦しめているんだろうな。なんて不器用な人なんだろう。でも、そういうネガティブなところが、優しいという事なんですよ?



私がすべきことは、【預言者】として【預言】を伝えることなのだろうか。

でも今のところ【預言】はない。だから今は出来ることをやっていく。


私に今できることは、ハルヤさんを肯定すること。

大丈夫。あなたは頑張ってる。優しい人。そう言われることがどれだけ嬉しい事か私が身をもって体験してきたから。


その役目を全うするために、私は自分の感情を出さない。

私が揺らげば優しいハルヤさんは心配してしまう。そして揺らいでしまう。

私は気丈に振舞って、ハルヤさんを支えていく。それが私に今出来ること。



楽しい暮らしだったが、それは突然終わってしまった。魔人が襲ってきたからだ。


ハルヤさんはその瞬間に苦しんでいた。やっぱり魔人が怖いのか。そう思って焦って呼んでみたら、どうやら悩みは違ったようだ。


「魔人が襲ってきたことを喜ぶ自分が嫌になる。」そう言った。


悩んでいるハルヤさんには申し訳ないと思いつつ、思わず笑ってしまった。

「私と同じだ」と思って。


役目がないところに役目が与えられる。それが嬉しい。

でもそれが世界の危機とあっては喜ぶのは不謹慎。そのことが分かっているのに、それでも嬉しい。


そう思う気持ちは痛いほど分かる。だって私も「勇者に会え」と言われた時に、世界の危機を想像しながら、どこかで役目が与えられたって喜んだから。


だから私はそのハルヤさんを肯定する。

これは慰めでも何でもない。私は本気で今のハルヤさんを受け入れているから。



立ち直ったハルヤさんはモンスターの方に向かって行った。


正直、すごく心配。


ハルヤさん曰く大量のモンスターがいるというのに、たった一人で立ち向かうのは本当に大丈夫なのか。

でも私がついて行っても邪魔になるだけ・・・。だから今はここで信じて待つ。



すると遠くから轟音が鳴り心配が増していったかと思えば、その後すぐにハルヤさんは帰って来た。

あまりにもあっさり帰って来たので本当にモンスターが居たのかと疑いたくなるほどだ。

すごいなぁ。そんなに強いんだ。私の【預言】とはまるで違う、本当に特別な力・・・。



その後はすぐにミトさんの葬式に移っていった。

あんなにもやさしいおばあちゃんだったから、たくさんの人に慕われていたのだろう。

村の人みんなが泣いていた。


ちょっとしか一緒にいなかった私ですら泣けてきた。


葬式の後でハルヤさんは言った。

「何でも屋は、何でもできるんだとよ。だから、ちょっと世界を救ってこようかなってな」と。


ふふふ。強がっているけど本当は世界を救う勇者をやろうとしているみたい。

でも、まだそれを受け入れるのはどこか怖くて、その重圧を取り除きたいと思って「何でも屋」といっているのだろう。


そういうところが、人間らしくて、どんどん惹かれていく。少しでもこの人の力になりたいと願った。


互いにこの世界から役目を押し付けられたからこそ、共に分かり合えるからこそ、惹かれていく。でも今はまだ【勇者】と【預言者】。それ以上を望んでいいのは、世界が救われてから。



それから私とハルヤさんの旅が始まった。

ハルヤさんの背中に乗せてもらって飛んでいる時間はとても幸せな時間だった。


まるで二人だけの空間が与えられたようで、ここでは誰も私たちを責めないし、使命を追求しないと思える。そんな安心した空間が好きだった。



その道中でハルヤさんが責任を一人で背負おうとしているから、「死んでも大丈夫」「逃げてもいい」と伝えた。


ハルヤさんに伝えるのは、かつて私が言われて嬉しかったこと、そして言われたかったことを伝えていく。きっとそれが、ハルヤさんの求める言葉だろうと思うからだ。


一言一言に安心してくれるハルヤさんを見て私も安心する。


私は戦えないけど、それでもハルヤさんを支えていく。一人は辛いから、勇者が一人にならないようについて行こうと決めているから。


それが私の役目。そういう風に思っていないと、私の心が折れそうだから。



ハルヤさんは意外にも女好きだった。

アンデーキオの図書館のリルさんを見ては鼻を伸ばしている。


なぜだろう。イラっとする。こんな感情は経験がなかったけれど、これは嫉妬?

私はハルヤさんが女性を見て鼻を伸ばしていることに嫉妬している。


私には悪態をつく癖に他の人には優しくして・・・。


ちょっと腹が立ったのでとりあえず笑っておく。

笑いながら怒る人が一番怖い。だからハルヤさんにも笑顔で怒りを伝えておく。


あ、ハルヤさんが怖がってる。やりすぎたかな?

あまりやりすぎても可哀想なので途中でやめておく。


でも「鞘の勇者ハルヤ」の名前は残しておこう。我ながらいいネーミングだ。



スゴイ話を聞いた。ハルヤさんは異世界人だったらしい。全く想像していなかったけれど、常識のなさがようやく腑に落ちた。


異世界人かぁ。もしかしてこれが終わったら帰ってしまうのだろうか?ちょっとだけ不安になった。



ハルヤさんは領主館で人間じゃないと言われてへこんでいた。

私からすれば領主の方が人間じゃないと思ったけれど、ハルヤさんは律儀にへこんでいる。


だから私はハルヤさんを肯定する。私はハルヤさんの味方だから。

あんな領主より、私の言葉を信頼してください!


良かった。ハルヤさんは満足してくれたようだ。

とはいえ本当に立ち直ったのはアンデーキオの兵士たちが鼓舞してくれたというのもあるのだろうけど。



クフの街が再び襲われた。ハルヤさんは血相を変えて焦っている。落ち着いて!

兵士さんたちの鼓舞でまたもや元気を取り戻した。良かった良かった。



クフの街は大量のモンスターに襲われていた。

ハルヤさんは一人でまた向かって行く。本当なら私も一緒に行きたい。行って手伝いたい。


そういう気持ちが段々と強くなったからか、私にもハルヤさんが倒したモンスターの経験値が入るようになっていた。


ハルヤさんが街の外のモンスターに向かったので、私は街の中のモンスターに警戒していく。

ようやく、私にもお手伝いができる。



クフの街でサムエルさんというハルヤさんの恩人に会った。

とても良い人。この人に出会えたから、今のハルヤさんはあるのだろう。


私も感謝しておく。けれど口に出すと偉そうだから、心の中で。



サムエルさんたちと一緒に魔人を倒した。ハルヤさんもどうやら大魔人を倒したらしい。

どこか疲れてに帰って来たハルヤさんが心配になったけど、追及はしない。

あなたの力を信頼していましたと、態度で見せておくことは大事な事だ。



あら?サムエルさんからハルヤさんは逃げようとしている。

ふふふ。逃げてしまいたい気持ちもわかりますが、多分逃げた方が辛いと思いますよ?


だからハルヤさんがサムエルさんと再び話せるように、逃げないように捕まえておく。

どうやらサムエルさんたちとの再会は無事に、喜びの内に迎えることができたようだ。良かった。




次の日、ハルヤさんと聖装を探しに行く。またも女の人にデレデレしているハルヤさんがいた。

ついつい小声で「鞘の勇者」とつぶやくとビクッとしていた。なるほど、これはダメージがあるのか。いいことを知ってしまった。


でもあまりやりすぎると邪魔だって思われないかな?心配だけど、怒りの感情がでちゃうからしょうがない。



ハルヤさんの出生地。それは何の変哲もない草原だった。

こんな場所に一人ぼっちでいきなり送られたのかな?だったら大変だっただろうな。

と思っていたけど、あまりハルヤさんは気にしてない様子。


後で聞いたら、異世界に興奮していたとのこと。その時はまだ異世界を楽しんでいたらしい。

これからも楽しめるように世界を救わないとですね。と重圧をかけないように心の中で語り掛ける。



ハルヤさんが聖装に包まれた。けれどその剣は見えない剣だった。

あまりにも「鞘の勇者」というネーミング通りになってしまって、思わず笑ってしまった。


こんなに心から笑ったのはいつ以来だろう。思えばお父さんが亡くなってからあんまり笑わなかった。

笑うとみんなが良い顔するから笑っていたけれど、本当に面白かったわけじゃない。


でも、ハルヤさんとの会話は、いつも本気で笑ってしまう。

それに今は声を挙げて笑ってしまった。



やっぱりハルヤさんとの旅はいいなぁ。

こんなことなら、魔王がいつまでもいても良いかもしれない。

・・・それは流石に不謹慎か。その思いは心の中にしまっておく。



やっぱり早く魔王は倒すべき!

そのことを改めて強く思わされたのは次のウーディアの街に行った時だった。

魔人に襲われた街がどうなるか。その悲惨さをウーディアの街が伝える。


なんて悲しい場所だろうか。なんて可哀想な場所だろうか。

死んでも、死にきれない場所。人の命がもてあそばれる場所。あんまりだ。



ハルヤさんも怒っている。そのまま街の中に飛び込んでいった。


私はアマニさんを支えておく。本当は一緒に行きたいけれど、大魔人相手は危険だと言われた。

本当に危険でも良いんですよ?心配しながら待つのも辛いんですよ?


でも優しいハルヤさんは私を必ず守ろうとするから、私はお留守番。

今は出来ることをしておく。アマニさんに、優しい言葉をかけつつ。勇者がいるから大丈夫と伝えておく。



ウーディアの街は救われた。その夜は領主館に泊まることになった。

ハルヤさんと話している途中、勢い余って一緒に寝るかと言ってしまった。


誠実なハルヤさんは流石に断った。ちょっとショックだった。

なんてことを言ってしまったんだろう。思い出しても恥ずかしい。



ケートの街でのハルヤさんは老人たちから嫌われていた。

それが何だかおかしくって。とりあえず老人たちの機嫌をとりつつ、ハルヤさんを慰める。


ハルヤさんはどこまでも人間らしくて面白い人。

繊細で落ち込んでいたかと思えば、それこそ勇者みたいに強い一面を見せてくる。


ますます惹かれてしまう。


ハルヤさんにおとぎ話を話してあげた。受けるより与える方が幸せだと。

でもこれは自分にも語る言葉。与えられるように頑張るために。

【預言】は何も語らないから、私が自分でハルヤさんに何かを与えられるように。


【預言者】の役目は何も全うできていないから。

見捨てられないように、気丈に振舞い、邪魔にならないように心を支える。




ホラムの街では変な人たちと出会った。ヒーローなんだとか。

心を救うヒーローたちは素晴らしい。物理で助けるハルヤさんとはまた違ったヒーローだ。


あぁ、ハルヤさん。落ち込む必要はありません。大丈夫ですよ。私はいつもあなたに心を救われていますから。



ホラムの街でもまたハルヤさんは単独行動。

私は街の人たちと一緒にモンスターと戦う。途中からなぜか強くなって焦ったけど、ハルヤさん印の魔道具で倒していく。改めて凄い威力。「サヤノシリーズ」と名付けておこう。


これを持っていると、何だかハルヤさんに守られているようで落ち着く。実際に守られているのだけど。



ハルヤさんはヒーローたちの助けによって何とか勝利できたらしい。

いいなぁヒーローは。一緒に戦えて。でも羨ましいけど態度には出さない。ハルヤさんは気にしてしまうから。


一歩引いて、支えていく。それもまた大事な役目。

誰かがいつも一緒にいる。それだけで嬉しいはずだから。そう信じないと私が苦しくなるから。



どうやらハルヤさんはニホンという場所出身らしい。どんなところで、どんな生活をしていたんだろう?

鉄の塊が空を飛んだり、デンリョクというものであらゆるものを動かしたり。まるでおとぎ話の世界のような場所らしい。行ってみたいなぁ。


あぁ、そういえば勇者もおとぎ話の登場人物だ。そう考えるともしかしたら私は今おとぎ話の中にいるのかもしれない。空を飛んで、海を越えて、二人きりの世界で、幸せに暮らす。


そんなおとぎ話の世界だったらいいのになぁ。



フォエフォ島は不思議な国が二つあった。それこそおとぎ話のような国。でも良い話の部類ではない。

あまりにも驚きに満ちた場所。なんて歪な国だろうか。


ハルヤさんとイッポン国に行くと、王との謁見はすぐに終わった。

どうやら【王の間】で二人で話していたらしい。


羨ましい。


凄い立場、凄い役目。そして凄い能力。私の【預言者】とは大違い。

特別な力を与えるんだったら、突き抜けて特別な能力にしてほしかった。それこそ、ハルヤさんと肩を並べられるぐらいに。



イッポン国の王子ジャイコフさんはどうやらゼロホン国の姫様と恋仲にあったらしい。

そういう話は実は大好き。私も大切な誰かに見つけて欲しい。そう小さなころから思っていたから憧れる。


二人はとても仲良さそうで。満点の愛の真価を見せてくれた。

でもハルヤさんは評価できないって。


ふふふ。ハルヤさんって案外純粋ですよね。



フォエフォ島はハルヤさんのおかげで救われた。

またしても私に出番はなかった。どうして隣に立てないのか。


それでもハルヤさんは私を【預言者】と言って隣に置いてくれる。

今はそれが嬉しくて、でも立場にあった働きが出来なくてもどかしくて。


どうして【預言】は何も語らないのか。

またしても、私は自分に自信がなくなっていく。


どうして神様は何も語ってくれないの?

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