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捕まえた

「見つけた・・・!」


人大魔人フッカはゼロホン国の人間の中に紛れ込んでいた。

見た目はただの人間だ。気配もただの人間にしか見えない。どうやらうまく隠れていたみたいだな。

今だってアイツの声と【鑑定】のスキルがなかったら見破れない。


でもようやく見つけた。こんな馬鹿馬鹿しい争いはサッサと終わらせてやる。

俺はフッカめがけて魔法を撃ちたかったが、周りに人が多すぎるから撃てなかった。

近接戦闘しかない。


フッカ目がけて【浮遊】で飛んでいくことにした。



「そうだ!イッポン国なんてぶち壊せ!イッポン国なんて許せねぇ!」

「あいつらと仲良くなんかできるか!イッポン国なんて許せねぇ!」

「姫さんに騙されねぇぞ!イッポン国なんて許せねぇ!」



フッカの【言霊】のせいか、ゼロホン国の人間はせっかく【博愛】の効果を受けていたのに、またイッポン国への敵意が激しくなってきている。


戦いが起こる前に止めないと!



「くたばれぇぇぇぇぇ!!」



俺は【浮遊】の勢いそのままにフッカに突っ込んでいった。


「な?!」


フッカは俺の攻撃をまともに食らいかなりのダメージを受けたようだ。

だがまだ生きている!追撃だ!!



「はぁぁぁぁ!!」

「ぐ!?き、斬りたくない!!」



な・・・なんだ?!アイツの言葉でほんの一瞬だが斬りたくないと思ってしまった。せっかくの追撃のチャンスを失った。


「クッ!止められるのは一瞬か!その強さ!さてはお前は勇者だな!」


「あぁそうだよ大魔人のフッカさんよ。コソコソ逃げやがって。ようやく捕まえたぜ!」

とにかくこれ以上動かれても困るからな。奴の体力を削りにいく。


「ぐ・・・止まりたい!!動きたくない!!帰りたい!!」


やつはかなりの力を込めて言霊を送ってきた。おかげでやる気を削がれて攻撃をかわされたがこのまま行けば奴の体力や魔力の方が先になくなるはずだ。今は攻撃あるのみだ。


「追いかけたくない!止まりたい!行きたくない!」


奴は言霊を混ぜながら人の群れの中に飛び込んでいく。クソ、一番厄介なところに逃げられた。

だが一度掴んだ気配。それに言霊や魔法を使えば発動の瞬間は察知できる。

もう逃がさねぇぞ!!



「あの勇者もイッポン国から金で買収された兵士らしいぞ!戦え戦え!ゼロホン国のために勇者をやっつけろ!!」


「な、なんだって?!やっつけろ!」

「勇者なんていいながら蛮族じゃねぇか!やっつけろ!」

「殺せころせぇぇ!!やっつけろ!!」


フッカはゼロホン国の人々をけしかけつつなおも逃げていく。

本当に厄介な奴だな。逃げるのが随分上手だ。


大魔人ならもうちょっとドッシリ構えてろよ。



人が大勢詰めかけてくるので俺は【浮遊】で上空に逃げる。

フッカは既に次の作戦に移っていたようで、魔力を練り上げ、時空魔法で姿を消した。


魔力を練り上げるのが随分早いな。ということはそこまで遠くには行っていないはず。

俺は当たりをつけて上空から見ていると、今度はイッポン国の方にフッカを発見した。


「ゼロホン国がいよいよ突入してきたぞ!アイツらを殺してしまえ!あいつらは我が国の王子を侮辱していたぞ!許さない!」


「なんだと?!許さない!」

「ジャイコフ様を馬鹿にするな!許さない!」

「戦え戦えぇぇぇぇ!!許さない!」



フッカはあることないこと言って両国の敵対心に火を点けていく。

クソ。このままじゃまた戦争に向かってしまう。


だがそんなことは聖女が許さない。


「皆さん!魔人の声に耳を傾けてはなりません!皆さんは操られているのです!私たちは今こそ手を取り合う時がやってきているのです!認め合いましょう!!」


フッカが【言霊】で操ろうとするところにラエラの【博愛】が飛んでくる。

おかげで戦況は膠着状態だ。全員がどうすればいいのかという感じになっている。



このまま逃げるフッカを追い続けていても埒が明かない。


俺は急ぎドラゴンの上にまで戻りフッカの行動に注視する。

どうやら奴は【言霊】で民衆を動かすのに必死になっているようだ。


なら今度はこちらから仕掛けようか。

今度こそ逃がさねぇぞ。



なおもイッポン国の中に潜むフッカに目を配りつつ俺もイッポン国の中に紛れ込む。

気配を殺してフッカの近くまで行くことに成功した。どうやらアイツも俺を探しているみたいだが見つけられていないようだ。



探すことに夢中で無警戒になってるな。これなら上手くいきそうだ。

隠れる場所をなくさせてもらうぜ。




魔法が発動した。

俺とフッカ、そしてジャイコフの三人は先ほどまでの喧騒は嘘のように静かな【王の間】にいた。


「な!どこだここは!!」


「ようこそ王の間に。随分と我が国を混乱させてくれたな。」


王子も腹に据えるものがあったのだろう。随分お怒りなようだ。



「お、お前は王子か!それに勇者も!ここはどこだ。」


「今王子が言ったばっかりだろ。ここは王子が用意してくれた【王の間】だよ。王子がわざわざ来賓対応してくれてんだぞ?感謝しろよ。」


一日に三度までしか使えない【王の間】の三度目をプレゼントしてやったんだ。感謝してほしいものだ。




「く!【王の間】を解除する!!」


「・・・?」


「な?!王子よ!!聞け!【王の間】を解除したい!!」



フッカは【言霊】で王子に呼びかけているが王子は何も反応しない。


「何故だ?!なぜ私の言霊が効かない?!」


「そりゃそうだろうよ。聞こえてねぇからな。」


「何だと?!どういうことだ?!」


「王子の周辺に音魔法の【サイレント】がかけられている。どんなに大声張り上げてもきこえねぇよ。」

もうかくれんぼも鬼ごっこも伝言ゲームも十分だ。遊び疲れたよ。



「な・・・!」


「さて大魔人フッカよ。お話ししようじゃねぇか。話すの好きだろう?存分に話しあおうぜ。」

フッカだけじゃなく魔王とのかくれんぼもいい加減飽きたんだ。そろそろ居場所を聞きたい。

俺は大魔人フッカのすぐ目の前にまでやってきた。



「フン!勇者と話しあう気などサラサラないさ。」


「あれ?俺のところまでサイレントがかけられてるのかな?聞こえないなぁ。」


「バカな芝居をしたところで私が話すことはなにもないぞ?」


「そうかいそうかい。それで大魔人よ。時間稼ぎは出来たかい?」


「なんのことだ?」


「何のことって決まってんだろ。この世界を侵略するための時間稼ぎだよ。」

かつてダーレルが言っていた「時間稼ぎ」。恐らくこれはダーレル個人に課されたものというより、魔人側全体に課された命令なんじゃないかと踏んでいる。ピラクルとはそのことについて話し合える暇がなかったからな。ようやく捕まえられたフッカからは色々聞きたいところだ。


「じ、時間稼ぎだと?何だそれは?何も知らんぞ?」


なるほどね。ビンゴだったか。

「そうかい。魔王が時間稼ぎを指示していたというのはやっぱり正解だったんだな。」


「だから知らないと言ってるだろ!」


「この世界を支配するためには、侵略することじゃなくて時間が必要なんだろ?お前らが街を襲っているのは侵略のためではなく時間稼ぎのためなんだろ?」


「知らん!」


なるほど。やはり時間が必要なのか。これは侵略するのとは別の何かを行っていると考えた方がいいだろう。奴の言葉で俺は黙らざるを得なかったが、一瞬だけだ。質問を続けていく。


「・・・魔王はもうこの世界に来ているのか?」

「・・・」


やつはもう喋るのも無駄だと分かり黙秘を決め込んでいる。だがこの反応は既に来ているということで良いだろう。



「そうかい。喋っても無駄ってわかったら今度は黙秘かい。まぁいい。魔王の居場所は知っているか?」

「・・・」

どうやら魔王の居場所までは知らなさそうだな。



「そうか。そちらの軍勢の情報は何か持っているか?」

「・・・。」


期待していたがこちらも持っていなさそうだ。


「時間稼ぎ以外に何か作戦はあるのか?」

「・・・。」


「どれぐらいの時間稼ぎが必要なんだ?」

「・・・」


「一週間、10日、二週間、一ヵ月、三か月、100日、200日、300日、一年、二年、三年、五年・・・」

「・・・。」



「そうかい。じゃあもういいかな。これで終わりにしよう。」


「フン。もう根を上げるのか勇者よ?拷問が来るかと思ったが、とんだ甘ちゃんだったようだな。」


拷問ね・・・。んなもんやり方も分からないし、半年前まで普通の大学生だった俺にそんなこと出来るわけないだろ。それに聞きたいことももうねぇよ。



「別にする気もねぇよ。聞きたいことはもうないし。お前も時間稼ぎという作戦以外何も知らないんだろ?ならもう必要ないよ。」


「どうかな?何か知ってるかもしれんぞ?」


「いや。お前は知らない。」


「なぜそんなことが分かる?」

・・・まぁいいか。どうせ死ぬんだ。言っても構わないだろう。


「音だよ」


「音?」


「あぁ。お前は言葉を操るのは上手だったみたいだが、音を操るのは下手だったみたいだな。」


「ど、どういうことだ?」


「お前の心臓、言い当てられた瞬間随分うるさい音が鳴ってたぞ?」

こいつは割とビビりなのか、本当の事を言い当てると心臓がものすごく早くなる。【王の間】は静かな空間だからな。おかげでこっちまで音が聞こえてきたよ。



「な、なんだと?!」


「お前は人大魔人ということだが、中身まで人と同じで人間くさい奴なんだな。」


「ま、魔人に向かって人間くさいだと?!」


「自分で流行作った気になって。本当は自分を見て欲しいだけの小心者なんだろ?実に人間らしいよ。」


「ば、バカにするな!私は大魔人だ!人間などよりも遥かに優秀なんだ!!」


「そういうところが人間らしいんだがな。あぁ、そう言えばお前にも魔人らしいところもあったな。」

コイツは実に人間ぽいってのに、魔人らしいところもあった。おかげで助かったがな。


「お前は人間を知らなすぎた。人間ってのは思ったより強いんだよ。」


三日前から戦争に向けて準備していたのに、戦場でにらみ合うだけで止まっていたのはコイツがそれ以上働きかけなかったことを意味している。大方その内戦うと思っていたんだろう。そこにつけこむ隙が転がっていた。


人間は思ったよりも怖がりで臆病で戦いたがらない。同時に、人間同士で支え合えるし立ち直れる。そのことをコイツは見ていなかったから終わった気になっていたんだろう。



「ク!!絶望!!」


コイツの言葉で一瞬だけ嫌な気分になった。本当に一瞬だけだが。


「ははは!最後に勇者の絶望の顔が見れて良かったよ。私は・・・どうやら人間を舐めすぎたのだな。まぁそれもいいだろう。魔人として死ねるという事だ。」


「じゃあそろそろいいか?死ぬ準備は出来たか?」


「フン!出来ていないといったら見逃してくれるのか?」


「ヤなこった。」



【渾身の一撃】を奴に叩き込んだ。その一撃で奴は倒れた。

魔力も体力もだいぶ削ってたからな。あっさりと戦いは終わった。


心配もなくなったので俺は音魔法を解除した。



「ん?おぉ終わったのか?」


「あぁ。必要な情報も手に入れられた。」

世界を侵略するために必要な日数は200日。それが一つのタイムリミットになる。そのことを知れたのは大きな情報だった。



「そうか・・・でもこれでこの国の混乱は終わるのだな。」


ジャイコフはホッとした顔をしている。ここ三日間ずっと気に病んでいたんだろう。でも問題は魔人だけじゃない。



「魔人が起こした混乱は終わりだ。・・・だがその先の問題は勇者でもどうしようもない。」


「・・・そうだな。それは我が国の問題だ。いくら器用な勇者殿にも難しいだろう。」


「そういうこった。でも王子と姫がいりゃ大丈夫だろ。」


「うむ。私とラエラであれば必ず乗り切れるはずだ。今回のことで二人の関係性は半ばバレてしまったしな。これからは堂々と二人で乗り切ることとするよ。」


敵対国の姫と関係があることがバレたってのに随分爽やかな顔をしている。そんだけラエラが好きだったってことかな。・・・ちょっと羨ましいがここは祝福しないと。



「それがいい。一人じゃ辛いからな。羨ましい限りだが、ここは素直に祝福しといてやるよ。」


「ははは!何を言う!勇者殿には預言者殿がいるではないか!」


「あれは・・・ただのビジネスライクだ。」


「そうなのか?とてもそうは見えなかったが・・・。」


「そうなんだよ!これ以上そこには突っ込むな!」


「ははは!勇者殿にも弱点があるのだな!」


エリーと俺はただのビジネスライクだ。勇者と預言者。その肩書があるから一緒にいるだけ。

そう思わないと・・・ちょっと期待しちゃうからな。


期待ってのは持ってる間は楽しいもんだ。でも失った時、とても辛い思いをする。

だから・・・持ちたくないんだ。



「鞘の勇者ハルヤと聞いていたが、割とウブなのだな。」




・・・うん。ビジネスパートナーとしても失格だわアイツ。個人情報の管理がまるでなっとらん。

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