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愛の真価

「ゼロホン国の・・・姫?」


王子ジャイコフは、ゼロホン国の姫とどうやら繋がっているらしい。仲悪いんじゃなかったのか?


「あぁそうだ。私と姫は昔から仲が良くてな。と言っても秘密裏にだが。恐らくこのことは我が国の者は誰も知らないし、ゼロホン国の人間も知らないはずだ。」


「なるほど・・・なぜ姫と知り合いに?」


「私が8歳のころだ。家族と共に国の定めた休暇期間に王族用の別荘に行ってな。そこで森の中を散歩しにいったら、一人迷子になってしまったのだ。」


森の中を迷子か。割とヤバい状態だな。



「迷った挙句歩き回りようやく出た先がゼロホン国の領地だった。そこで偶然にもラエラと出会ったのだ。既に【王】の職業を受け取っていた私はラエラと【王の間】で語り合った。そのころラエラは7歳で年も近くてな、互いに現状の国に対する憂いを持っていたこともありすぐに仲良くなった。」


なんというか、8歳と7歳の少年少女が国の未来について語るって・・・前の世界からは想像も出来ないが王族というものはそういうものなのかもな。


「その後はラエラから道のりを聞いて何とか帰ることが出来たのだが、あまりにも楽しい時間だったのでな。そこから私たちは毎年同じ時期に逢瀬の時間を持つようにしたのだ。一年に一回しか会うことは出来なかったが、【王の間】のおかげで語り合う時間を持つことが出来た。」


王子と姫が仲良くねぇ。もし両国の関係が良好であればきっと結婚していたんだろうな。


「ラエラはとても優しく愛情深い人間だ。今回のこともラエラであればきっと魔人の精神干渉に耐えているはず。私はそう信じている。」


うーん。どうなのだろうか。魔人がどういう精神干渉を行っているのか分からないからなぁ。もしラエラが精神干渉を受けていたら面倒なことになりそうだが・・・。でもまぁここは王子を信じるか。それに逃げるだけなら問題はないはずだ。


「話は分かった。じゃあ王子をゼロホン国に連れていくよ。」


「本当か?!」


「あぁ。と言ってもイッポン国から出るのはいいが問題にならないか?」


敵対国に単身乗り込むようなものだからな。いろいろと問題もあるだろう。出来れば国家の騒動に巻き込まれたくはない。


「別に構わないだろう。これほどまでの非常事態だ。どうとでも言い訳は出来る。それにもしどうしようもなくなったら、私はイッポン国から売られるか殺されるだけだ。問題はないだろう。」


「いや・・・売られるか殺されるって。問題大アリじゃねぇか。」


「国がなくなるよりかはマシだ。それだけの覚悟があるという事だ。」


王子の覚悟か・・・。やっぱりこの人は根っからの【王】なんだな。そこまでの覚悟を見せられたら折れないわけにはいかない。それに乗りかかった船だ。この国のためでもあるんだし協力してやろう。



「分かった。じゃあ具体的な作戦だが・・・と言っても簡単なことだ。【王の間】の解除後、俺とエリーと王子の三人を時空魔法で両国の境界線まで飛ばす。その後は俺の【浮遊】でゼロホン国の姫がいるところまで飛んでいく。それだけだ。」


「何と!勇者殿は時空魔法に浮遊まで使えるのか!それも三人をそこまでの距離を飛ばせしなおかつ浮遊で運ぶとは。相当な使い手であるな!」


「あぁ。勇者ってのは器用なんだ。」


いつもいつも「便利」って言われてばっかりだが勇者は「器用」なんだ。ちょっと器用貧乏気味なところもあるが便利よりはマシである。



「よし!ではその作戦で行こう!」


「時空魔法をかける時はあまり抵抗しないでくれよ?抵抗すると時間がかかるから。」


「あいわかった!私は全てを勇者殿に委ねるよ!」


そこまで全幅の信頼を寄せられるのもそれはそれで気恥ずかしいが、疑われるよりかはマシだ。



「では【王の間】を解除するぞ?」


「あぁ、頼む。」


ジャイコフは【王の間】を解除した。




俺は元いた王の間で、魔力を練ったジャイコフに対して構えていた状態に戻った。時間が進んでいないというのは本当だったようだ。何とも不思議な感覚だな。

さて、作戦実行といこうか。ジャイコフもこちらに目で訴えかけている。


任せとけ。俺は魔力を練り始める。その間、ジャイコフは気を逸らせるように話を続けている。



「我が国は今ゼロホン国と戦争中だ。三日前からだな。いよいよあのにっくきゼロホン国を討伐する時がやってきたのだ。」



王子は周囲の偉い人たちに疑われないようにゼロホン国を敵対国として語り続ける。



「恐らく三日前から起きたことは私たちの決起を図るものであったのだろう。私たちにとっては希望を与えられたに等しい。いよいよ、このフォエフォ島を一つにまとめる時がやってきたのだ。」




王子の演説のおかげで、俺は警戒されることなく魔力を練り切ることができた。




そして時空魔法を発動する。




目を開けると俺とエリーそして王子も目の前にいた。


ここはフォエフォ島に来て初めに降りた場所。二人の兵士が言い争っていた場所だ。

ちなみに今もその兵士二人は気絶しているが気にしちゃだめだ。



「おぉ!!凄い!!本当に一瞬で国の外じゃないか!!」


「あんたの【王の間】も凄いけどな。」


「いやいや!こっちの方が便利だ!!」



あぁ。この人もまた便利って言った・・・。勇者を便利って・・・酷い。



「ふふふ。ハルヤさん、いつの間に王子と仲良くなったんですか?浮気ですか?」


「浮気じゃねぇ!これ以上俺に変な設定をくっつけようとするな!」



エリーは【王の間】にはいなかったから何も分からない状況だ。なので先ほど【王の間】で起こったことについて説明する。


「なるほど。ではこれから王子と姫の逢瀬をのぞき見するということですね?楽しみです。」


「なんでそんな解釈するんだよ!普通にこの国の戦争を止めるためとか色々あるだろ!!」


「男と女が一年に一度だけの限られた時間の中で育んだ愛。その愛の真価が今問われるのです。面白がらない方がかえって失礼ですよ?ふふふ。」


国の危機だというのに面白がってるんじゃねぇ。王子も普通に聞いてるんだぞ。不敬だとか言われたらどうするんだよ。




「ははは!預言者殿はなんとも鋭い!いかにも私とラエラは恋仲であるが故、今回のことは愛の真価が問われることであろう!うむ。物語としては非常に面白い展開である!」


「ふふふ。多数決によってハルヤさんの意見が間違いであることが証明されましたね。」


「なんで?!」


いや、絶対におかしい。この状況でおかしいのはお前らだろ。

俺は腹に何かを抱えつつ、とりあえず二人を連れてゼロホン国に向かうことにする。



王子には少し変装をしてもらう。俺の着替えだが普通の村人っぽい服を渡しておく。一応【気配偽造】を付与した腕輪も渡しておけば大丈夫だろう。一抹の不安はあるが今は時間が惜しい。さっさと行こう。



エリーはいつも通り背中に、王子は何となく背中に乗せるのも癪なので腕を掴んで宙ぶらりんにして持っていく。



「うおぉぉぉ!!これは綺麗な光景だな!」



王子は初めての空中遊泳を楽しんでいる。

普通これだけの高さに宙ぶらりんって怖くないのか?というか一国の王子がこの仕打ちで普通怒らないものなのか?王子ってマゾなのだろうか。


そんなことを考えつつ、俺たちはゼロホン国に突入していく。


「なぁ王子。そんで姫さんは今どこにいるんだ?」


「ははは!国の重要人物の行方を敵対国の人間が知るわけないだろう!」


いや、確かにそうだけど。笑いながら言う事じゃねぇだろうよ。



「なんか王子さっきまでと雰囲気変わってないか?」


「そうか?まぁこのような体験今までしたこともなかったからな。あまりにも新鮮で私の素の部分が出ているのだろう。王子という肩書が取り払われ、今は一人のただの人間になった気分だ。気持ちいいぞ!感謝する勇者殿!」



先ほどまでの重苦しい語り口調はなくなり、随分フランクになったもんだ。こっちとしても気楽でいいんだけどさ。


「とりあえずどこに向かえばいいんだ?」


「そうさなぁ。気の向くままにと言いたいところであるが、そういう訳にもいかなそうだな。私もゼロホン国に関しては聞いたところでしか知らないが、ゼロホン国の王の館は周辺で一番派手な建物であると聞いている。周辺の中で一番派手な建物のところに行けばよいだろう。」



なるほど。最も派手好きなのか、派手なことが最も自由であることを示す手段なのかは分からないが派手な建物を探せばいいのね。



「そういえば、ゼロホン国はルールも法もないって聞いたがそれでも王族はいるんだな。」


「あぁ。ゼロホン国の王は他国の王とは違い一種の象徴みたいなものだ。そして同時に裁判官でもあるのだ。」


「象徴で裁判官?」


「うむ。有事の際に国を代表する立場を決めておくことは重要だ。たとえば今回の戦争の際にも先頭に立つ役目を担っているはずだ。あらかじめ先頭に立つものを決めておく方が便利であるということだな。さらに裁判官というのも、かの国には法律がない。故に争いを裁くことが出来ん。酷すぎる場合は喧嘩の仲裁に入るのが王の役目である。」


「そこまで来たら法律つくりゃ良いのにって思うんだが・・・。」


「あの国には法やルールを作らないというのが唯一の法と言って良いだろう。何かに縛られることを大層嫌っているからな。最早口に出すのもはばかられるのだろう。」


そこまでして守りたい自由とは何なのだろうか。もはやかえって自分を縛り付けている気がするが・・・。まぁ国のことに関しては今は口をはさんでもしょうがないか。



さて、ゼロホン国を上空から見ているとさっきのイッポン国との違いにまた驚かされる。

まるで統一感がないのだ。


家もあるが隣り合って同じような形の家はない。独特な色で塗られていたり、変な形だったり。

なにやら細長い家だったりとんがってる家だったり。最早家としての機能は失われているように感じるが、その辺も自由を主張したいのだろうか。


畑や教会もあるが、あまり綺麗な感じではない。さっきイッポン国を見たから余計に汚く感じてしまう。



「これがゼロホン国か!見事にバラバラだな!!すごいぞ!!」



王子はなぜかバラバラであることに興奮している。イッポン国で暮らしていた王子からすればバラバラであることは見ることの出来ない光景なのだろう。


一番派手な建物を探しているが中々見つからない。そもそも全部派手に見えてくる。かえって地味な建物の方がゼロホン国においては特徴的に見えてくる。

イッポン国と違って全部が全部違う形をしているから中々に探しづらい。



「む?!勇者殿!アレが王の館ではないか?」


「ん?あれがか?流石に違くないか?」


「しかしあの家はかなり大きいし、何よりもゼロホン国の紋章が書かれた旗が掲げられている。それに派手だ。恐らく何らかの立場にあるものだろう。」


「なるほど。・・・一応王の館の可能性もあるな。行ってみるか。」



俺たちは虹色の家の前に降り立った。

何だよ虹色の家って。もし仮にここが王の館であったら話が通じなさそうな気がするが。大丈夫なんだろうか。


家の前には門番がダルそうな顔をして座っている。というか門番なのか?一応剣を持っているからそう認識しているだけだが。



「なぁ。あんた。この家の門番なのか?」


「あ?門番?俺が?んなわけねぇよ。俺は王が金をくれるって言うからここにいるだけだ。」


「それって門番なんじゃ・・・。」


「雇われてるわけじゃねぇ。俺は何にも縛られてねぇし門番じゃねぇ。そんで何なんだあんたらは?」


「俺は勇者ハルヤ。こっちが預言者のエリーと付き人のジェフ。王に用事があってここに来た。」


流石にジャイコフっていう訳にはいかないからな。ジェフってことにしておいた。



「勇者に預言者だぁ?!これまた驚いた。いいぜ。なら勝手に入んな。王はいないが姫さんがいるからよ。ただ無口だから喋るかはわからねぇけど。」


姫って無口なのか?王子から聞いていたこととは全然違うが・・・まぁいいか。



「勝手に入っていいのか?」


「勇者なんだろ?なら誰も抵抗できねぇだろ。戦っても無駄なんだ。おとなしく通しておいた方がいいだろうよ。」


何というか、本当にアウトローな街だな。言葉遣いも荒っぽいし。仰々しいよりかはマシなんだけどさ。



勝手に入っていいと言われたので俺たちは勝手に入っていく。姫様がいるなら今回の目的は達成できるからな。



中に入ると、イッポン国とは真逆な国民性であることが改めてよく分かる。全部アシンメトリーなのだ。一つとして左右対称になっているものがない。それに色もバラバラだ。段々と目が痛くなってくる。


とりあえず姫様がどこにいるのか分からないので、目についた一番大きな扉を開けて中に入る。




中に入ると金髪でベリーショートの女性がいた。周りには付き人なのか分からないが他にも人が何人かいる。

女性は気が強そうな見た目をしているが・・・あれが姫なのだろうか?優しく愛情深い人って聞いてたからイメージとちょっと違う。



女性は王子の存在に気が付いたのだろう目を見開いて驚いている。やはりアレが姫様でいいのか。

向こうが驚いている隙に王子は魔力を練っている。どうやら【王の間】をもう一度使おうとしているらしい。


さすがにこの状態で話しあうことは無理だからな。懸命な判断だろう。




・・・気が付くとまた【王の間】にやって来ていた。

俺は二回目ということで動揺はしなかったがエリーはちょっとビックリしている。ふふ。コイツに勝ち誇れる気がして何だか嬉しくなったのでニヤニヤしておいた。


・・・あ、エリーがこっちを見て笑っている。怖い。俺はすぐに目線をジャイコフとラエラに移す。今は彼らの愛の真価が問われる時だからな。ちゃんと見ておかないと。




「ラエラ!無事だったか!良かった!!」


王子はすぐにラエラのもとに駆けていく。




・・・だがラエラの様子は何かおかしい。あれは攻撃しようとしていないか?


「王子!何かおかしい!」

俺は静止の言葉をかけたが王子はラエラに近づていく。



・・・ラエラは近づいてきた王子をぶん殴った。




ヤバい!あまりのことにビックリしてしまったて普通に王子が殴られるのを止められなかった。


俺はすぐに王子とラエラの間に立とうと動いた。だがそれより先にラエラの言葉が響いた。




「いきなり来たらビックリするじゃない!!もうちょっと落ち着き持ちなさいって言ってるでしょ!!」


「あぁラエラ!!君は変わらないようで安心したよ!!」


「あんたはちょっとは変わりなさいよバカ!!」


「年々パンチ力が上がっていくね!嬉しいよ!」


「うるさい!変態!」




そう言ってラエラはまた王子を殴っている。

王子はとても嬉しそうだ。


なるほど。これが彼らの愛の表現なのか。





「ハルヤさん。愛の真価の採点はいかほどに?」


「・・・この愛に点数はつけられない。」


「ふふふ。私は満点でもいいと思いますが?」


「・・・俺の中の愛って、もうちょっと綺麗なものなんだよ。」


「そうですか。ハルヤさんは純粋なのですね。」




愛のカタチって様々だ。

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