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ヒーロー見参!

唐突に現れたレッドが放った一撃でピラクルは聖壇の方向に吹っ飛んだ。

おかげで聖壇がグチャグチャになっている。後で怒られないといいけど。


崩壊した聖壇の中からピラクルが起き上がる。そこまでのダメージはないようだが、突然の第三者の介入でかなり驚いているようだ。

ピラクルは唖然とした表情で自分を殴ったレッドをにらみつけている。


「な、なんだお前らは!!」



あ、マズイ。その一言は・・・



「ふっふっふ。ならば教えてやろう!!」



そう言ってレッドたちは整列した。以前よりもずっと速い動きで。


「自分で生み出す不安に抗うべく!」

「我らは全ての人に語り掛ける!」

「見下ろしてごらん!僕たちがいる!」


「見せてあげよう希望の光!」

「下には下がいるという事を!」

「本当の底辺は俺たちだ!」


「「「我ら、最下位戦隊、テイヘンジャー!!」」」



あの時と変わらない口上。相変わらず底辺を語っている。

だというのにあの時とは全く違う頼もしさを含んだその姿は、本当にヒーローそのものだった。


「テ、テイヘンジャーだと?!バカな!な、なんだその力は?!なんでこんなに怖いんだ!!も、もしかして僕よりも強いって言うのか?!」


あいつビビってるな。ってことはレッドたちの方が強いのか。あ、いや弱いのか。何て言えばいいのかわからん。



「ふっふっふ。貴様の能力がこの場には働いているようだな。恐らく弱い者ほど強くなっているのだろう?」


「な、なぜそれを?!」


「そのぐらい状況から判断するのはたやすいことさ。」



何だかレッドたちが随分頭良さそうになったな。逆転空間って性格まで反転するのか?


「あはははは!魔人ももう終わりだねー!もうあんたは・・・えーっと、なんて言うんだっけ?」


「ピンクよ。こういう時は年貢の納め時と言うのだ。」


「そうそう!天狗のはしゃぎ時!」


性格は変わってなかったわ。やっぱりアイツ馬鹿だわ。



「な、なんだってこんなに弱い奴がいるんだよ!ききき聞いてないよ!」


アイツ随分弱腰になったな。テイヘンジャーを見ながら震えてるし。性格の二面性がイカれてるわ。



「ガァァァ!こうなったら勇者だけでも殺してやるよ!」


俺に対しては相変わらず強気だ。なめられてるようで腹が立つが実際にアイツより弱いからな。あ、強いのか。もうどっちでもいいわ。



頼もしいヒーローが来てくれた。おかげで大分体力も回復できた。それで十分だ。

こっからが人間の逆襲の時間だ。



アイツが迫ってくるが俺は剣で反撃する。

そこにヒーローたちも追撃してくれる。


初めてだなこんな風に誰かと共闘するのは。

今までは【不殺】を気にしなければならなかったが今はそんなものを気にする必要はない。テイヘンジャーの方が強いからな。思いっきり戦うことができる。



肩を並べて誰かと戦うことはこんなにも頼もしいものなんだな。


テイヘンジャー。お前らは本当にライバルで同業者だ。




俺たちは段々とピラクルにダメージを与えていく。

アイツのスキルに対しては俺が、力に対してはヒーローたちが対処することでどんどんピラクルを追い込んでいく。



「クソがぁぁぁぁ!!俺こそが最も弱く、最も強いんだ!!なんなんだよお前らは!!」



ピラクルも完全にキレている。おかげで動きも読みやすくて助かるぜ。




・・・もうちょっと、もうちょっとでピラクルを倒せるはずだ。

奴も段々と疲れた顔をしてきている。



「ヒーロー!!もうちょっとで奴を倒せるぞ!!」



「・・・あぁ、そうだな。」



もう少しで奴を倒せる。・・・だというのにヒーローの言葉は重い。


不自然に思いヒーローを見る。




・・・なぜかテイヘンジャーたちは三人とも泣いていた。そして叫んだ。






「・・・た゛お゛し゛た゛く゛な゛い゛!!」





「はぁ?!」


え?なんで?!どういうこと?!ピラクルも唖然としている。



「・・・いば、ごいづをだおじだら、おでだちはまたよわぐなる!!」


今コイツを倒したらまた弱くなる・・・?



「・・・わだぢだぢ、ぜっがぐづよくなっだのに!!」


せっかく強くなった・・・?



「・・・ぼぐだぢまだじだになる!!」


また下になる・・・?




レッドは涙を拭い、それでも流れようとする涙を押し殺しながら語りだした。



「・・・俺たちだって好きで底辺なんてやってるわけじゃない・・・。ヒーローになりたかったんだ。強くてカッコいい、本物のヒーローになりたかったんだ。でも、そんな能力はなかった。いくら努力しても弱いままだった。」


・・・そっか。最初からテイヘンジャーなんて目指すわけないか。


「・・・俺たちの才能は絶望的なまでにヒーローに向いてなかった。それどころか何をやっても他の人より出来が悪くて、ヒーローどころか俺たちが助けられないと生きていけないことばっかりだった。」


才能か・・・ステータスと職業というもので才能が目に見えてしまう世界だからこそ、色々な辛さがあったのかもな。


「私はな【ヒーロー】という職業と【正義の心】というスキルを持っている。レベルや能力が極端に上がりにくい反面、自分の身近な人々がピンチになったら力が数十倍になるのだ。だがな、元のステータスが低すぎて数十倍になろうとたかが知れているのだよ。」


なるほど。そりゃあ使い辛い能力だな。冒険者としてもやっていけそうにないし。まぁそのおかげで今の逆転空間で異常なまでに力を得ているのだろう。



「戦闘じゃ役に立たない。それでも誰かを助けたかった。俺たちだって誰かのヒーローになりたかった。・・・だからテイヘンジャーなんて始めたんだ。それで本当に誰かを助けられたこともあった。でもな、・・・誰だって「自分より下」だなんて言われて嬉しいわけないだろ!!」


そりゃそうだな。自分を見てホッとされたら、救えた嬉しさもあるかもしれないが、辛さもあるよな。その辛さを思い出したのだろうか段々とレッドの言葉は叫ぶように変わってきた。



「それでも誰かを助けられたらいいって思ってやってきた。それはこれしか出来なかったからだ!・・・でも今は違う!!勇者を助ける本物のヒーローになれたんだ!!魔人のコイツさえいれば、俺たちはヒーローになれるんだ!!」


・・・だから倒したくない・・・か。


「夢見ちゃったんだよ俺たちは!!今まで下だけ見れば良かったのに、上を見れるようになっちゃったんだよ!!誰かに褒められたい!!讃えられたい!!そんな欲望があることに気が付かされちゃったんだよ!!!」



・・・レッドの心の叫びは今の俺には関係のない話だ。チートな俺には、最上位にいる俺には関係のない話だ。




だというのに・・・なんでこんなに胸を打つんだろうか。

気が付けば俺も泣いていた。とめどなく涙があふれてきた。


そうだ。レッドの叫びは前の世界の俺の心の叫びなんだ。

上を見て、自分が下であることを気が付かされて、そのことに愚痴を言って。

受け入れたフリして実は見ないふりして生きてるだけで、「それでいいか」なんて考えて。努力をしなくなって。

でも本当は見てほしかった。褒められたかった。誰かに尊敬されたかった。

だからチートが欲しくて、強くなりたくて。



この世界に来る前の俺の心の叫びをまるでレッドが代弁してくれているようで泣けてくるんだ。




「強くなりたいって願ったんだ!その願いが今叶ったんだ!!だから・・・倒したくないんだ!!」




レッドの叫びが教会にこだました。ヒーローたちはその場に立ち尽くしている。



「ギャハハハ!!!やっぱり人間って面白れぇ!!いいぜテイヘンジャー!協力すればお前たちは最強になれる!!俺と一緒に世界を取ろう!!勇者も魔王も相手じゃねぇぞ!!世界の全ての奴らが俺たちにひれ伏すんだ!気持ちいいぞー!!」



その言葉にテイヘンジャーの三人は顔を上げた。揺れ動いているのだろうか。



・・・マズイ。ここでピラクルとヒーローに手を組まれたら終わりだ。




俺は撤退できるように備える。今はとにかくこの逆転空間の効果が切れるのを待つしかない。とにかく待って反撃に備えるんだ!!



「ギャハハハ!さぁこちらにこいテイヘンジャー!!」


その言葉に三人はゾロゾロと魔人ピラクルに近づいた。



・・・そして魔人ピラクルを攻撃した。


「ぎゃあ゛あああぁぁぁぁ!!」



三人の攻撃にピラクルはのたうち回っている。


「な、なんで?!なんで?!僕についてくれば世界を取れるんだぞ?!」


「・・・さい」


「・・・え?」


「うるさいって言ってるんだよ!!」


突然のレッドの怒りにピラクルも驚いている。



「・・・俺たちは・・・俺たちは確かに強くなりたいと願った。・・・でもそれ以上に・・・ヒーローになりたいんだ!!ヒーローは・・・正義の味方なんだ!!」



「な・・・なんで・・・。」


レッドの宣言と共に三人は魔人ピラクルを攻撃した。恐ろしく鋭い一撃は人間業とは思えない。まさしくヒーローの一撃だった。




テイヘンジャーの攻撃によって魔人ピラクルは倒された。

恐らく空も戻ってきたことだろう。


・・・最後は撤退しかないかと思ったが、テイヘンジャーが倒してくれて助かった。




「・・・ありがとうテイヘンジャー。」


「いいさ。気にするな。俺たちは・・・正義のヒーローだからな。」


絞り出すように語るレッドの言葉はどこか寂しさを帯びていた。



「・・・良かったのか?」


「・・・俺たちはヒーローとしてやってきたんだ。ずっとずっと底辺だと言われて悔しい思いをしても、それでもヒーローを続けてきたつもりだ。・・・そこだけは曲げたくなかった。」


カッコいいな。カッコよすぎるよ。




「なぁ、勇者よ。」


「ん?なんだ?」


「・・・私たちはヒーローになれていたか?」


「あぁ、間違いなくヒーローだったよ。勇者よりも活躍したんだ。お前らより上の奴なんか見たことねぇよ。」




「・・・ふっ。それじゃあダメだな。・・・私たちはテイヘンジャー。私たちより下がいては困るのだよ!」




「そうかい。じゃああんたらは最強の最弱だったよって言えばいいか?」


「最強の最弱か・・それはいいな!今度からそれで行こう!!おい!ピンク!イエロー!今度から新しいキャッチフレーズが決まったぞ!最強の最弱だ!それでいくぞ!!」


さっきまでのカッコいい雰囲気が一変していつもの雰囲気に戻っていた。



「あはははは!何それ意味わかんない!でもカッコいいからいいね!」


「僕は面倒だから何でもいい。」


相変わらずのアホみたいな三人に戻っちまった。だというのに、その姿すらも今ではカッコよく見えた。



「ふはははは!勇者よ!次会う時、私たちは最強の最弱としてお前の前に君臨しようではないか!お前より下であることを証明してやろう!!」


「ははは!あぁ、期待しているよ!」



やっぱりこいつらはヒーローだ。こんなに心を助けてくれるヒーローを俺は見たことがねぇ。辛い戦闘の後だというのにこんなに清々しさを持てたのは初めてだ。




ありがとう。テイヘンジャー。

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