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テイヘンジャー

いきなり出てきたヒーローを自称する奴らは自分たちを「テイヘンジャー」と名乗った。

何だコイツら?底辺?下には下がいる?どういうことだ?



「ふっふっふ。勇者よ。驚いているようだな。」


「・・・あぁ、すごく驚いてる。」

混乱しているとも言えるが。



「ヒーローは自分だけと思っていたのか?ハハハハハ!」


「そういうことじゃねぇよ。お前らの存在がよく分からないんだよ。」


「はぁ?今説明してやっただろう。」


レッドは本気で何言ってるんだコイツという表情をしている。さっきの説明で誰が理解できるかよ。



「そもそも、お前のやる気だけレッドって何だ?」


「その名の通りやる気だけは情熱の炎を燃やしているという意味だ。」


「やる気だけ?」


「やる気はあるぞ、やる気は。行動力がないだけで。」


やる気だけって、やる気しかないってことかよ!なんでそんな胸張って言ってんだよコイツ!



「そんで・・・お花畑ピンク?」


「あはははは!唯一の女子でーす!イェーイ!」


何言ってるんだコイツ?何が面白いんだ?と思っているとレッドが補足してくれる。



「あぁ、ピンクは頭の中がお花畑でな。つまりはバカだ。」


「バカだってー!ヒドーイ!あはははは!」


何だそれ?頭の中がお花畑?それの何がヒーローなんだ?



「そんで、元イエロー・・・?」


「あぁ、僕が元イエローだ。面倒で洗濯してなかったら服が黄色から茶色になっちゃってね。」


じゃあブラウンじゃねぇかよ!ていうかさっきからちょっと臭いのはもしかしてコイツのせいか?!



「元イエローは面倒くさがりでな。茶色だがイエローの方がカッコいいだろ?だから元を付けることで何とか体裁を保っている。」


やっぱり臭いのはコイツのせいかよ!洗えよ汚いな!



「それで・・・テイヘンジャーって何だ?」


「そのままつまり、我々こそが底辺という事だ!!」


「それのどこがヒーローなんだよ?」


「ふっふっふ。それはな、下には下がいるということを伝えることが私たちの救済であるのだよ。」


「はぁ?」


「勇者には分からんかもしれんがな、人は悩むのだ。周りの人と自分を比べ劣等感を抱いてしまう。それは時に不安を呼び、焦りを生み、失意を与える・・・。それはとても辛いものだ。」


あぁ・・・その悩みは何かわかるなぁ。こっちに来てからはその悩みはほとんどないが、前の世界では経験がある。周りに凄い奴がいると、自分がとても下に見えてしまう。果てには見下されているようで。

周りはそこまで自分のことを下に見ていないのに、勝手に自分を追い込んでいく。その痛みは何となくわかる。


「そこに我らは語り掛けるのだ!下には下がいる!こんな人間でもなんとか生きられるぞ!とな。それが我らの救済方法だ!」



何だろう。悔しいが、ちょっと納得している自分がいる・・・!だがヒーローとは認めたくない自分もいる・・・!なんだこの複雑な感情は!!



「ハルヤさん・・・強力なライバルが現れましたね・・・。」


「いやいや!ライバルではないだろう!!」


「でもハルヤさんはケートの街でご老人に嫌われてましたし、心の部分では救えない・・・!でもこの人たちは人の心を救おうと・・・!」


「そんなことないぞ!俺だって人々の希望になれるはずだ!ウーディアの街ではそうだったし!」


「それにここまで自分を卑下してでも人を救おうとする姿・・・なんという自己犠牲精神・・・!う゛ぅ!」


エリーが泣きまねしながらテイヘンジャーを褒めている。絶対に遊んでいる。だというのにレッドは勘違いしている。



「ハッハッハ!そこの預言者は見る目があるようだな!勇者よ!どちらが人々の希望になるか、この世界に暗雲が立ち込める今こそ問われる時であろう!」


「いや、そこは共闘すればいいんじゃ・・・。」


「君よりも我々の方が下だという事を世に示してやろうじゃないか!」


「上じゃねぇのかよ!」


「さぁいくぞピンク、元イエロー!明日から世界を救っていこうじゃないか!!ハーッハッハッハ!」


「明日からかよ!今日じゃねぇのかよ!」

そう言えばコイツ、やる気だけだったな。



「ではな!勇者よ!またどこかで会おう!」



そう言ってテイヘンジャーは消えた。ゆっくりと静かに消えていった。


何だったんだろう彼らは。もはやモンスターなんじゃないかと途中で思うほど変な奴らだった・・・。まぁ害はなさそうだし、放っておいていいのかな。




レッドたちとのやり取りが終わったところで、何だか心の疲れを抱えた気がするが、気を取り直して俺たちは街の方へ近づいていく。

街には門番がいなかった。もしやすでに襲われつくしてしまったのだろうかと不安になる。


街中に入っていくと何匹かのモンスターがいた。だが様子がおかしい。

街中にはゴブリンやコボルトなどの弱いモンスターがやたらと多い。これぐらいのモンスターであれば街の人たちでも何とか出来そうな気がするが・・・。



街の中を調べていると、一カ所に気配が集まっている場所があることに気がづいた。

街のはずれにある建物は恐らく兵士の宿舎だろうか。かなり大きな建物に演習場などもくっついている。


近づいて見るとそこに多くの人が避難していることが分かった。

俺はすぐさま近づき入り口を守っている兵士に話しかけた。


勇者と預言者であることを説明するとすぐに兵士は中に通してくれた。そして一番偉い人がいるのであろう一つの部屋に案内された。


ドアを開けると、40代ぐらいの渋いおじさんと、20代後半ぐらいの赤い髪のカッコいい女性がいた。



「あなたが勇者であるか?」


「はい。私は勇者ハルヤです。そしてこちらが預言者のエリーです。」


「私はこのホラムの街の守護隊の隊長をしているフィラバルだ。こちらは副隊長のアランダだ。」


そう言って二人は礼をする。やっぱり軍隊所属ってかっこいいよな。挨拶一つとってもキビキビしてカッコいい。なんて見惚れているとフィラバルさんは怪訝な顔をし始めた。


「・・・何かありましたか?」


「いやなに、失礼かもしれんがあまり強そうには見えなくてな・・・。」


そう言えば俺は気配偽装を持っているんだったな。あまり強そうに見えないということなので偽装を解いてみた。効果は劇的だった。



「・・・こ!これは!分かりました!あなたが強者であることは十分に分かりました!で、ですからその気配を収めてください!」


え?そんなにビビるほどなのか?とりあえず俺は再び気配を偽装する。


「・・・ふぅ。先ほどは失礼した。まさかここまで強いとは思いませんでした・・・。」


「いえいえ。こちらこそビックリさせてしまいすみませんでした。それで信じていただけましたか?」


「もちろんだ。それにここまでの強者であれば勇者かどうかは大きな問題ではない。今この街は魔人に攻め入られ苦境に立たされている。勇者でも何でも、強い人であれば十分だ。援軍に感謝する。」


そう言っておじさんと女性は頭を下げる。



「それで、街はいまどういう状況になっているんですか?」


「ふむ。ことが起きたのは二日前だ。大量のモンスターが攻め込んできてな。街の人たちは街の東西南北にある兵士の詰め所に避難してもらいつつ、我々は門を固めた。初めは善戦していたのだが数の暴力に段々と押されてしまってな。」


二日前か・・・ということは魔人がこの世界に来てから少し時間が経ってるのかな。


「だがモンスターは数は多いが弱いモンスターが多かった。だから私たちは戦いながらなるべく強いモンスターを優先的に倒しつつ、モンスターの侵入を最小限に抑えていた。何匹かに侵入は許したがそれでも街に被害が起こるレベルではなかったのだが・・・」


弱いモンスターが多かったのか。あんまりバラつきがあるのは聞いたことがなかったから新しい情報だな。


「魔人ピラクルという奴が現れて状況は一変したのだ。奴の使う・・恐らく支援魔法だろう。それによってそれまで大して強くなかったモンスターがいきなり強力になった。・・・さらに我々には弱体化の魔法がかけられたのだろう、思ったように動けなくなってしまってな。」


・・・つまり今回の魔人は支援型の魔人なのか?魔人がモンスターを使って戦うというのも想像はしていなかった。勝手に魔人は単騎で突っ込んでくるイメージだったからな。



「そこから戦況は悪化し、私たちは街中に逃げ込んだ。ピラクルは街の中心地にある教会を乗っ取り、今もそこにいると思われる。やつの魔法は絶大だが、恐らく範囲や時間に限りがあるはずだ。逃げた後モンスターの強化や私たちの弱体化も解除されたからな。」



なるほど・・・それで今は傷をいやしながら戦況を整えているというところか。


「勇者殿。先ほどの力であれば奴の弱体化があっても恐らく大丈夫なはずだ。そこまで圧倒的な力であれば、いくら弱体化しても問題ないだろう。だから、私たちと共に共闘していただけますか?」


「えぇ、もちろん。そのために来ましたからね。」


その一言でおっさんはホッとしたような顔をしながら、光明を見出したのだろう笑顔になった。



ほらね。俺だって希望を与えられるんだ。テイヘンジャーには負けないぞ。

・・・ってアイツらと張り合うのもおかしいか。



「そう言えばさっき街の外でテイヘンジャーという人たちに会ったのですが、この街の人間ですか?」


「彼らに会ったの?」


答えたのは横にいた赤髪のカッコいい女性アランダさんだった。声も低めでカッコいいな。


「えぇ。下には下がいるとか何とか言って去って行きましたが。」


「あいつら・・・まだそんなことをやってたのか・・・。」


「まだ、ということは以前から彼らは街にいたのですか?」


アランダさんに聞いたがなにやら思案顔で黙ってしまったので、代わりにフィラバルさんが答えてくれた。



「以前からも何も、彼らはこの街の出身だからな。」


なんだ世界のヒーローとか言ってたから色々なところに行ってると思ったら地域密着型かよ。ご当地ヒーローかな。


「奴らは口だけはヒーローになりたいと言いながら、腕っぷしは全然でな。以前は軍に志願したこともあったのだが弱すぎたので追い返したのだ。」


「なるほど・・・確かに強そうには見えませんでしたね。」


「あぁ、奴らは戦うことにおいては絶望的なまでに才能がない。だというのにヒーローがやりたいらしくてな。放っておいたらいつの間にか「テイヘンジャー」などと言って活動し始めたのだ。」


「随分ぶっ飛んだ路線変更しましたね。」


「それからというもの、街を訪れた人や落ち込んでいる人にちょっかいかけ始めてな。迷惑だからやめろと言ってもやめないのだ。街の人も憐れんでむしろ彼らを助けたりするもんだからあの年になって働きもせずにあんな活動を続けているのだ。」


なるほどなぁ。そりゃ知ってる人からしたら働けよって話だよな。ただアランダさんは何か含むものでもあるのか苦虫を嚙み潰したような顔をしている。



「まぁ彼らは特に害はない。勇者殿の手を煩わせることもなかろう。怪奇現象でも見たと思って忘れてくれ。」


結局フィラバルさんが怪奇現象という事で話をまとめてくれた。今は彼らのことを考えるのも惜しいって感じかな。今は忘れてこれからのことを話そう。



「それでこれからのことですが、俺は【不殺】という制限がかけられているため人に対しては攻撃が出来ません。もとより誰かを攻撃するつもりはありませんが、もし万が一巻き込まれる可能性があるとコチラも攻撃出来なくなってしまうので魔人との戦闘は一人で行いたいのですがよろしいですか?」


「【不殺】か。それは何とも勇者にふさわしい制限だな。了解した。では私たちは街中のモンスターを中心に攻撃しているとしよう。」


「えぇ。恐らく魔人を倒せばモンスターはいなくなるはずですから、なるべく防御を中心にしてください。それとエリーはここに残していきます。彼女はこう見えて十分に強いので、戦力として数えられると思いますし、魔道具で結界を張れますから。なるべく住民に被害が出ないようにお願いします。」


「了解だ。何から何までしていただき感謝する。早速向かうのか?」


「えぇ。時間も惜しいので早速魔人を倒してきます。ここ以外にも行かなければならない場所がいくつもありますのでサッサと終わらせましょう。」




変な奴らを思い出して変な感じになったが、今は街のピンチをさっさと救ってしまおう。




ヒーローになりたい・・・か。なっても意外といいもんじゃないんだが。

隣の芝は青く見える。それはどの世界でも一緒なのかもな。

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