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おとぎ話とおとぎ話みたいなやつら

ケートの街を出た俺たちはそのまま次の街へ向かう。


何だかんだケートの街は救われた。老人の反応にモヤモヤしたものを抱えてはいるが、救えたんだから良しとしよう。モヤモヤはするがな。


そんな俺の心中を察したのか、エリーが話しかけてくる。


「ケートの街でのハルヤさんは、何だかシーナみたいでしたね。」


「はぁ?何だそれ?」


シーナって何だ?全く聞いたことがなかった。



「あぁ、そう言えばハルヤさんは常識がないんでしたね。」


「この世界の常識がないってだけだから。事実だけど、その表現はやめてくれません?」


「ふふふ。シーナというのはおとぎ話の『ミーナとシーナ』に登場する人物ですよ。」


「おとぎ話?」


「えぇ、おとぎ話です。もしかしたら史実なのかもしれませんが。」

そう言ってエリーはおとぎ話を聞かせてくれた。



―――――――――――――――――――――

あるところに【贈り物】という固有スキルを持ったシーナという女の子がいた。

スキル【贈り物】は少しの魔力を消費することで、周辺の子どもたちに贈り物を与えるというスキルだった。


そのスキルを使いシーナは様々な子どもに贈り物をした。

だがシーナは恥ずかしがり屋で自分がやったことは絶対に喋らなかった。


そこに目を付けたのは領主だった。あろうことかその贈り物は自分の娘のミーナがやったと主張し始めたのだ。


街の人々は皆ミーナに感謝した。おかげで街の領主の株はあがり、ミーナはまるで聖女のように崇められた。

ミーナもミーナで親に刷り込まれすぎたために、段々と自分がやっているのだと本気で考えるようになってしまった。



ある日、そんなミーナが街中を歩いていると、一人ポツンと佇んでいるシーナに出会った。


何故だか分からないがとても気になったミーナは語り掛けた。

「あなたは何をしているの?」

「ボーっとしていただけです。」

「ふぅん。そんなの、何が面白いの?」

「何も面白くはないです。暇だったからボーっとしてただけ。」

「・・・なら、私と一緒に遊びましょ。」


そういってミーナはシーナと遊び始めた。一緒に絵を書いて、一緒に走り回って、一緒に話して。

普通の家の子と領主の子、立場が全く違う二人にもかかわらず、まるで昔から友達だったかのように一瞬で二人は仲良くなった。年が近かったこともありミーナとシーナはすぐに親友になっていた。

それからというもの、毎日毎日ミーナとシーナは一緒にいた。


ミーナは初めてできた友達に大層喜んだ。

だがシーナは心の中に葛藤を抱えていた。


ミーナはシーナを知らなかったが、シーナはミーナを知っていた。領主の子どもであるし、何よりも有名人である。【贈り物】をしているのはミーナとして知られていたことも当然シーナは知っていた。


シーナは悩んだ。【贈り物】を使っているのは自分であることを伝えるべきかどうかを。


自分が【贈り物】を使っていることを知ればミーナはショックを受けるだろう。だから伝え辛かった。それでもシーナは黙っていられなかった。

自分がやっていることを知って欲しいワケじゃない。ミーナに対して隠し事をしたくなかったのだ。それほどまでにシーナにとってミーナは大事な友達だった。


「・・・ミーナ。実はね、私が【贈り物】のスキルの持ち主なの。街の子どもに贈り物をしているのは私のスキルなの。」


ミーナはその事実に大きなショックを受けた。自分がやっていると本気で信じていたこともあるが、そんなことはどうでも良かった。


本当であれば称賛を向けられるべきは友達であったことが何よりも辛かった。

ミーナはすぐに街の人たちに伝えようとした。だが、シーナはそれを止めた。


「私はミーナにとても感謝しているの。人前に出るのは恥ずかしいから。私はね、皆に褒められたいわけじゃないの。【贈り物】をした子が喜んでくれればそれでいいの。」


「でもそれじゃあ誰もシーナが本当は凄い子って知らないじゃない!今だって街のみんなは私を褒めるのよ!そんなのダメよ!本当に褒められるべきはあなたなのに!」


「いいの。それに誰も知らないワケじゃないよ。私の大好きな友達のミーナは知っていてくれる。それで十分、私は嬉しいの。」


「でも・・・」


「ミーナ。あなたに協力してほしいの。私は自分の力を誰にも教えたくないの。だからこれはミーナがやってるってことにして?」


「・・・そんなの嫌よ・・・。だってそれじゃあ私が良いとこ取りしているようなものじゃない・・・。」


「違うわミーナ。いいとこ取りしているのは私よ?知ってる?受けるより与える方が幸せだって言葉があるの。」


「・・・そんなの初めて聞いたわ。」


「誰かが喜んでくれるとね、とっても嬉しいの。私は自分のスキルでそれをいつも経験できるの。それを誰に詮索されるでもなく楽しめるのは、ミーナが表に立ってくれるから。だからミーナにはこれからも協力してほしいの。」


「・・・分かったわ。でも!本当のことが言いたくなったら絶対に言うのよ?!絶対に絶対だからね?!」


「うん!絶対に言う!親友に隠し事はしないもん!ミーナも辛くなったら絶対に言うんだよ?」


「当たり前よ!私もシーナに隠し事なんかしないわよ!」


それからというもの二人は街で【贈り物】を続けた。ミーナは称賛を受け続け、シーナは隠れてスキルを使い続けた。

一見するとミーナが称賛を搾取しているようにも見えるだろう。だが、自分は何もしていないのに称賛を受け続けることの葛藤をミーナは抱え続けた。それでもミーナはシーナのために矢面に立ち続けた。初めはシーナのためだったそれは、いつしか街の人たちの笑顔のためにと変わっていった。


二人はそれからずっと協力し続けた。街の人々を笑顔にするために。


スキルを使って喜ばせるのはシーナだけ。称賛を与えられるのはミーナだけ。

歪な関係に見えるそれは、しかし、シーナとミーナにとって必要な関係だった。


恐らく二人にはそれぞれに【贈り物】が与えられたのだろう。二人にとってそれぞれが、何にも代えがたい大事な贈り物であった。



―――――――――――――――――――――



・・・何だかサンタクロースみたいな話だな。サンタクロースじゃなくて本当はヨンタクロースが贈り物をしていたって感じかな。


エリーがおとぎ話をまるで子どもに聞かせるように語ってくれた。

バカにされているようで腹が立ったが、言いたいことは何となくわかった。


「つまり・・・誰かが喜んでいればそれでいいじゃないかってことか?」


「ふふふ。常識はなくても理解力はありますね。そういうことです。」


多分エリーはさっきのモレーヌさんへの発言のことを根に持っている。中々破壊力のある言葉を投げかけられるが、ここはツッコんじゃいけない。



「・・・受けるより与える方が幸せねぇ。」


「えぇ。与えることだけを目的にすればいいんですよ。何かを受け取るために与えると、思ったものが受け取れないと不満になってしまいます。」


「確かに、今回のことだと俺はどこかで感謝を目的にしていたんだろうな。それがないからもどかしいと。まぁ言いたいことはわかったよ。でもさ、それでも期待しちゃうものじゃない?」


「ふふふ。そのためには別のもので満足するしかありません。」


「別の物?」


「シーナはミーナが知ってくれているということで満足したのです。」


「ほうほう。」


「ハルヤさんの働きは、私が知っているということで満足してはいかがでしょう?」


「・・・ちょっと無理かなぁ。俺はシーナほど優しい人にはなれそうにない。」


「モレーヌさんの方が良かったですか?」


「あれ?何だろう。急にシーナになれる気がしてきた。優しい気持ちが溢れてくるよ。」


「ふふふ。それは良かったです。」



結局、エリーに言いくるめられてしまった気がする。

まぁ何だかんださっきのことは忘れられたから良しとしよう。


受けるよりも与える方が幸せか。それぐらいの気持ちでいた方が勇者をやっていくのは楽なのかもしれないな。




だいぶ気分が落ち着いてきたので、俺は改めて魔人ダーレルの「時間稼ぎ」発言について考える。

・・・何だか引っかかるんだよな。魔人の目的が分からない。


魔人は「この世界を支配する」と言っていたから、この空を全て暗がりにしていくことでそれが達成されるのかと思っていた。しかしダーレルにしてもレイグルにしてもまるで動く気配がなかった。


その地域を守ればいいだけだったのかもしれないし、そういう意味で他の魔人が暗がりを広げていく間の「時間稼ぎ」を命じられていたのかもしれない。その説明でも十分腑に落ちる。


でも何となく納得がいかない。特にレイグルは大魔人だったし力もあった。それに死人の軍隊もあった。奴が攻めていった方が明らかに効率的だから「時間稼ぎ」が命令されるとはどこか考え辛い。


うーん。時間稼ぎとは何なのか。頭を悩ませているが結論は出ない。

出ないものはしょうがないと思いつつも気になってしまう。次の魔人からもその辺の情報を収集したいところだ。



さて、そんなこんなでホラムの街が見えてきた。ここまで静かな街が二連続で来ていたから今回もどこかでそうなのかと思っていた。




だが、ホラムの街は明らかに襲われていた。なぜなら街の中をモンスターが闊歩しているからだ。


既に乗っ取られているとも考えられる。俺は急ぎ門に向かった。すると、門から少し離れた林の中に三人の人影があった。街の人たちかもしれないので近づいて見る。





不思議な格好をした三人組がそこにはいた。それぞれ赤・ピンク・茶色で統一された服を着ているため、とても目立つ格好である。

明らかに兵士でも冒険者でもなさそうだ。何だコイツら?とりあえず話を聞いてみよう。



「あのーすみません。」


声をかけると赤い服を着たリーダーっぽいやつが答えてくれた。



「ん?何だ君は?」


「俺は勇者ハルヤ。こっちは預言者のエリー。俺たちは魔人に支配されている街を解放するために旅をしている。それで街の状況を知りたいんだが、あんたらは街の人か?」


「な・・・君が勇者だと?!


俺の勇者という発言に驚くのは今まで通りである。だがその後の反応は全く異質なものだった。



「そうか・・・君が勇者か!ならば君はヒーローであるな!」


「え・・?あーそうとも言えるのかな?」


「ハハハ!ならば我々のライバルであるな!」


「は?ライバル?」


「そうだ!我々もまた人を助けるヒーローとして活動しているからな!故にライバルだ!」



・・・は?見たところとても強そうには見えないが・・・ヒーローなのか?この変な格好をしたやつらが?というかだとしたらライバルではないだろ。同業者とかそういうもんじゃないのか?



「ふっふっふ。おっと失礼、自己紹介がまだだったな。」


そう言って三人は自己紹介の準備に入った。いや、自己紹介の準備ってなんだよって感じだが、三人で整列し始めたから準備で正しいだろう。


「私たちは全ての人々の希望となるべく活動する世界のヒーローである!」


赤い服を着た奴が声を張り上げたことで、他の二人もしゃべりだす。



「私の名前はお花畑ピーーンク!頭の中はいつもお花畑!あははは!」


・・・はぁ?



「俺の名前は元イエロー。この服、元々は黄色だったんだ。」


・・・はぁ?




「そして俺がリーダーのやる気だけレッド!やる気だけは負けないぞ!」


・・・はぁ?




こっちが唖然としている間に、ヒーローたちは息をそろえて口上を語り始めた。


「自分で生み出す不安に抗うべく!」

「我らは全ての人に語り掛ける!」

「見下ろしてごらん!僕たちがいる!」


「見せてあげよう希望の光!」

「下には下がいるという事を!」

「本当の底辺は俺たちだ!」


「「「我ら、最下位戦隊、テイヘンジャー!!」」」




・・・はぁ?

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