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冷酷

死人の街とされてしまったウーディアを解放するため、俺は一人魔人の下へ向かう。


死人は俺の【不殺】対象となってしまうので出来れば戦闘は避けたい。

そのため俺は街の上空から侵入を試みる。上から気配察知で探るのが一番だろう。


そう思って上空から乗り込もうとするが、なぜか結界に阻まれてしまった。

まさか魔人に結界を塗り替えられたのか?仕組みはわからんが、この街の敵対者として見なされたということだろう。


仕方がないので俺は門から入ることにしたが門が閉じてしまっている。


「すまん、アマニ!」


アマニには申し訳ないが、門の開け方が分からないので力任せに壊して入っていく。





「こりゃあ酷いな・・・。」


街の中を進んでいくと、至る所で赤く染まっている場所がありこの街の痛みを伝えてくる。



街中には死人がたくさんいて、一見すると街として機能しているようにも見えてしまう。

死人は死んでいるため青白くなっているが、見た目的にそこまで変化はない。

だから一見すると本当に生きているように見えてしまう。


だが死人は表情が死んでいる。ただただ無表情で立っているその姿はやはり死んでいるという事を伝えてくる。

そして死人は俺を見つけた瞬間に襲い掛かってくる。その行動は街の日常からはかけ離れているだろう。


改めて怒りがこみ上げてくる。死から解放だなんて馬鹿げている。こんなもの死から逃げているだけだ。むしろ死が許されていないだけだ。



待ってろよ、絶対に救い出してやるから。



死人を倒すことが出来ないので【浮遊】で逃げながら街を進んでいく。


大魔人レイグルは割と臆病なのか慎重なのか、気配察知に全く引っかからない。今までの敵は大体自分から出てきたり気配を隠そうともしなかったのですぐに見つかると思っていたが当てが外れてしまった。まぁ魔人にも隠密が得意な奴もいるという事だな。


当てが外れてしまったので虱潰しに街中を探していく。小さな民家を訪ねてもしょうがないので、比較的大きな建物から探っていく。


ついでに生き残りもいればいいのだが・・・街の様子からしてもあまり期待は出来そうにない。



初めに大きな建物があったのでとりあえずそこに入ってみる。するとそこは教会だったようで中にはあの紋章が描かれ礼拝堂もあった。



「死人だらけじゃねぇか!」


中には死人がたくさんいた。司祭もシスターも俺を見つけてはすぐに襲ってくる。穏やかな顔は生前の優しさを伝えてくるようだ。

表情があったらもっと素敵な人たちだったんだろう。胸糞悪い思いがさらに強くなる。



教会の中を探してみたがそこには大魔人はいなかったので急ぎ撤退していく。



そんな感じで何件も大きい建物を回るが大魔人の消息は全く掴めない。

それでも俺は探し続ける。




時間にして1時間以上は探していただろうか。

俺は大きな館を発見した。


周りよりひときわ大きい館には、街の紋章なのだろうか入り口に大きな紋章が書かれた旗が建てられていることから、恐らく領主館だったのではないかと思う。



「アマニの家だったのかな・・・。」


さきほどアマニと会ったからかこの家はどこよりも悲しさを帯びているように見えた。





領主館に突入するとこれまで感じなかった強い威圧感を感じた。



・・・間違いなくここに大魔人がいる。




雰囲気が伝えてきた情報は確かだった。領主館の一番広い部屋。食堂だろうか。そこに大魔人はいた。



「クフフフ。虫が入ったと知らせが来ましたが勇者でしたか。それでどんなご用件で?」


「この街に死をもたらしに来た。」


「クフフフ!それはそれは悪い人だ。」


「お前のせいで悪い人にならなきゃいけなかったんだよ。」



俺は大魔人レイグルを鑑定した。


―――――――――――――――――――――

名前:レイグル

種族:死霊大魔人

死人を操る猟奇的な大魔人。高い魔力と知力から魔法を使っての戦闘を得意とする。死を乗り越えることに慈愛を見出し、人を殺して死人として操ることを本人は人を救うためと本気で考えている。


状態:正常

体力:8632

魔力:19361

筋力:5906

防御:5387

敏捷:4105

知力:18622


【共通スキル】闇魔法Lv.MAX、風魔法Lv.MAX、棒術Lv.MAX、隠密Lv.MAX、支援魔法Lv.MAX、強化魔法Lv.MAX、先読みLv.MAX、魔力回復速度上昇Lv.MAX、瞑想Lv.MAX


【固有スキル】ネクロマンサー、猟奇性、発射


ネクロマンサー

死人を操ることが出来る。込めた魔力によって死人の出来る行動が上下する。


猟奇性

その世界が持つ常識から比較して冷酷な行いを果たそうとすればするほど、能力が上昇する。


発射

魔力を用いてあらゆる物を発射することが出来る。


―――――――――――――――――――――



やはり大魔人は魔人とは比にならないほど強いな・・・。


だが能力的には問題はない。俺は既にレベル2500まで上がっている。聖剣も手に入れたことで武器も問題はない。鞘に入れなければならないという見た目的な問題はあるが。



だが問題があるとすれば奴の周りに死人が集まっているという事だ。



それに・・・どことなくアマニに似ている人が三人ほどいる。家族なのかな・・・余計にやり辛くなる。



「クフフフ!まさかこんなに早く勇者が来るとはな。だが私は何も悪いことはしていないぞ?人々を死から解放してあげただけだ。それに私が死ねばこの者たちも死んでしまうぞ?」


「その人たちはすでに全員死んでいる。お前のせいでな。」


何が悪いことはしていないだ。だが鑑定の結果からしてみてもコイツは本気で悪いことはしていないと考えているのだろう。頭のいかれた奴だ。



「ふむ。勇者もわからず屋と来たか。残念ながら勇者にも救いが必要なようだな。」


「むしろ俺が救ってやるよ。死ねばその頭のおかしさも治るだろ。」



俺は早速レイグルに向かって魔法を放とうとする。だがやはり周りに人が多すぎる。残念ながら撃つことは出来ない。



「クフフフ!クフフフフ!」


「どうした?勇者を前に笑い始めて。頭おかしくなったか?あ、元からか。」


「なんとでも言えばいいさ。【不殺】の勇者よ。」


「・・・なぜそれを?」


「クフフフフ!優秀な門番が教えてくれたのさ。」


門番は確かに倒したから聞かれてはいないはずだが・・・倒した?死んだ?あれ、もしかして死んでいなかったのか?



「言っただろう。死から解放されたのだと。いくら倒してもよみがえる。おかげで良い情報が入ったよ。勇者の倒し方もね。」


レイグルはその一言と共に外に飛び出した。

急な行動にあっけに取られてしまったが俺は急ぎ追いかける。



奴は広場にいた。だがその姿は見えない。なぜなら奴の周りに死人が密集しているからだ。

上下左右全てが死人で囲われている。死人の檻と言って良いだろう。

あまりにも密集しているので時空魔法で行くことすら出来なさそうだ。



「クフフフフ!肉壁とはまさにこのことだなぁ。」



死人の檻は壊すことが出来ない。殺さないような攻撃方法がまるでないからだ。死人はあまりにも弱すぎる。すこしでも引き離そうとすれば死人は死んでしまう。


さらに胸糞悪いことに、この檻は特に弱い人を選んで形成しているようだ。けが人や老人や子供の死人だらけで腹が立つが、俺の【不殺】に対しては相当厄介な檻だ。


「クフフフフ。とても楽しい見世物になりそうだ!」



レイグルは俺に向かって【発射】を発動する。


四方八方から瓦礫や武器など様々な物が飛んでくる。

俺は重力魔法で落とそうとするが発動しない。死人が範囲内にいるからだ。


仕方がないので避けつつ撃ち落としていく。

聖剣を片手に周りの物を撃ち落としているとその中から死人が頭から飛んできた。



強烈なスピードで飛んでくる死人を俺は急ぎ回避する。だが次から次へと死人が飛んでくる。四方八方から飛んでくる死人に対し避ける隙間すらない。


だというのに俺は死人を撃ち落とすことが出来ない。撃ち落とせば死んでしまうからだ。

もう死んでるというのにな。



ならばと鞘でガードしようとするがそれすらも【不殺】の効果で行うことが出来ない。

つまり防げばこの死人は死んでしまうという事だ。



だがそんなの俺の責任じゃないだろ!発射した瞬間に死んでいるようなものなんだから俺のせいにすんじゃねぇ!

なんでガードすら許されないのか。神に怒りをぶちまけたいが今はそんなことをする余裕もない。



ひたすら瓦礫に交じって飛んでくる死人を避ける。

それでも四方八方から飛んでくる死人。時空魔法を練る時間すらない。


いよいよ死人が直撃するようになってきた。



かなりの威力を込めて発射される死人に俺はジリジリとダメージを与えられていく。

死人を【発射】するという常軌を逸した攻撃は恐らくやつの【猟奇性】も発生していることだろう。

強烈な痛みが俺を襲う。思ったよりも痛い。




・・・だが今は体の痛みなんかどうでもいい。

心の底から沸き起こるこの悲しさ、怒り、もどかしさを早く何とかしたいんだ。




俺に当たった死人は首から折れて倒れている。

それでもレイグルの【ネクロマンサー】によって再び立たされ【発射】される。

もう体はボロボロだというのに。死なせてもらえない。


「クフフフ!やはり死人砲は美しい。死してなお生きて役に立つ。ここに美しさを感じるよ。」




飛んでくる死人には表情がない。

だというのにその顔はとても悲しいものに見えてしまう。


死んでも死にきれない。まさかそんな言葉が現実のものになるとはな。





ごめんな。遅くなって。助けられなくて。

でも待っててくれ、必ず助けるから。





「お前は・・・絶対に許さない・・・。」


俺は望みをかけて聖剣を抜いた。




そして聖剣で死人たちを切った。




「・・・な、【不殺】はどうした!!なんだそれは!!」


そう言えばコイツには聖剣は見えないんだったな。



だがそんなもんお前に言う訳ねぇだろ。お前の望みなんて絶対に何一つ叶えねぇ。

悩みながらもがきながら苦しんで死ね。



俺は聖剣を突き出しながらレイグルを囲む檻をぶち壊した。

そのままレイグルをぶん殴ってやりたいが周りの死人を巻き込みかねない。

だから力任せに腕を掴んで握りつぶす。


「ぎゃあああああ!!!痛い!痛い!なぜだ!なぜ檻が機能しない!!勇者が人を殺しても良いのか!」


「黙れ。これは救済だ。」



俺はレイグルの背中に生えた翼を掴み引きちぎった。


「あああああああああ!!痛い!痛い!」



次は足を握りつぶす。


「あああああああ!!やめろ!!やめてくれ!!」


「黙れと言ってるだろ。」



俺は奴の喉を握りつぶした。


すると奴は何も喋れなくなった。だが目は動いている。生きているのだろう。



「お前は人の死を踏みにじった。そこは神以外立ち入ってはいけない場所だ。死んで罪を償え。」


最後に奴の顔を踏み潰した。




「散々尊厳を踏みにじったんだ。踏まれて死ぬのがちょうどいいだろう。」




レイグルの死と共に空は晴れた。そして死人はようやく死ぬことが出来た。



・・・街は解放された。だというのにこの虚しさはなんだろうか。

たくさんの人が死んでいる。それもレイグルにいいように使われて。



解放された喜びなんてものはない。

悲しい。ただただ純粋に悲しい。



とてもじゃないが、「良く生きた」なんて言ってやれない。




・・・それでも街は生きている。確かに生き抜いた人がいる。

アマニの両親は希望を込めてアマニを逃がした。

街が生きている唯一の証拠で、唯一の希望だ。




・・・帰ろう。この人たちを弔うのは俺の役目じゃない。





最後は聖剣に賭けてよかった。


聖剣は魔王以外にはダメージを与えられない。


どんなに切っても叩いても絶対に痛みは与えない。だから最後も切ることが出来た。




この剣は優しい剣なのかな。人には見えないけど。



いや、優しさってのは見えないものだから。そういうことなのかもな。

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