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ウーディアの街

第三章の始まりです。

既に日が落ちているが、俺とエリーはウーディアの街へ向かう。例のごとく俺の背中にエリーを乗せつつ【浮遊】で飛んでいく。


「ハルヤさん。さっきドラゴンバスターズが救世の竜騎士と呼ばれていたのを見て私閃いたんですよね。」


「そうか。その閃きは伝えなくていいぞ。嫌な予感がするから。」


「私は竜ではなく勇者に乗っているので勇者ライダーなんてどうでしょう?」


「今すぐ落としてやろうか?」


「ふふふ。ご冗談を。」


「冗談なのはお前の方だろ!」


いつも忙しい時に限ってエリーは無駄話を挟んでくる。一応こいつはリラックスさせるつもりと昨日言っていたが、どう考えても本人が遊んでいるだけだ。



「ふふふ。そう言えばこの間魔人を倒したおかげでレベルが上がったのですが、ハルヤさんが倒したモンスターに比べて魔人を倒した時の方がレベルの上りが良かったんですよね?どうしてでしょう?」


「そうなのか?やっぱり自分で倒さないと意味がないってことなのかな・・・?」



あの後確認したら、確かにパーティーにエリーの名前が書かれていた。何がきっかけでそうなったのかは分からない。あの後サムエルさんたちとも行動を共にしたので入っていても良さそうなものだが入っていなかった。


【パーティー】には情報も書かれていて、エリーはクフの街での戦闘前でレベルが43まで上がっていた。だというのに今回の戦いでレベルは57まで上がっている。


恐らく俺が魔人を倒した時よりも多くの経験値を得たとは本人談だが、実際のところは分からない。


【パーティー】の効果はよく分からんがレベルが上がっていることは便利だ。これから検証する必要もあるだろうが今ある情報からじゃ何も分からないので便利だという事だけ分かれば今は十分だ。


「ハルヤさんと旅をしていると段々と強くなってしまいますね。」


「そうだな。レベルだけ見ればトップランカーだな。」


「ふふふ。段々とハルヤさん色に染め上げられているようで恥ずかしいですね。」


「変な表現するなよ!あと恥ずかしいならもう少し恥じらい持って報告しろよ!」


「ふふふ。女性に恥じらいを求めるのですか?やはりそういうタイプが好みでしたか。」


「そういう意味じゃねぇよ!」



はぁ。なんでコイツだけ【パーティー】に加えられてしまったのか。

せめてもう少しマシなやつであれよ。今のところ【預言】も全然効果を発揮しないし。行先ぐらい教えてくれよな。


まぁなんだかんだこんなやり取りを気に入っている俺もいるが。それは伝える必要はないだろう。調子に乗りそうだし。



さて、エリーと話をしていると街の灯りが見えてきた。あれが恐らく「ウーディア」の街だろう。

だが推測していた街の状況とは全く違う。




モンスターに襲われている気配が一切ないのだ。




だが街に明かりがあるということは中に人がいるはずだ。

俺は一先ず門に近づいていく。すると青白い顔の門番が立っていた。とりあえず話を聞いてみよう。



「あのーすみません。こちらはウーディアの街でよろしいでしょうか?」


「・・・?」


「え、あれ?違いました・・・?」


「・・・ア?・・・ガアアアア!!」



門番はウーディアの街がどうか聞いただけなのに突然襲い掛かって来た。


マズイと感じて俺はすぐさま攻撃を回避する。特に危険な攻撃ではなかったが異変を感じすぐに相手を鑑定する。



―――――――――――――――――――――

種族名:死人

大魔人レイグルに操られた死人。生きていたころより能力は落ちている。支配者の命令には忠実。力は弱く頭も弱い。支配者以外の向かってくるもの全てを敵と認識し攻撃する。


状態:正常

体力:20

魔力:0

筋力:31

防御:20

敏捷:18

知力:0


【固有スキル】一心不乱、噛付き

―――――――――――――――――――――



「・・・な!魔人に操られた死人だと!」


ということは、既にこの街はモンスターに支配されている・・・?

まさか・・・この静けさは、すでに戦闘が終わっているという事か?!



「ガアアアアアアア!」


向かってくる死人に俺は反撃しようとする。



しかし攻撃できなかった。



・・・この感じは【不殺】が働いている。

つまりこの【死人】は人間と見なされ、攻撃は出来ないようになっている。



「えい!」


俺の状況を察したのだろうエリーが攻撃し死人は一撃で死んでいった。

死人だから死んだと言っていいのかは分からないが。


「今のはもしかして【不殺】が影響したのですか?」


「みたいだな。この人は既に死んでいて大魔人レイグルに操られているみたいだ。だが死んでも人だからな。俺の【不殺】の対象になったみたいだ。」


「なるほど・・・もしかしてこの街はもう・・・。」


「・・・既に乗っ取られた後だろうな。」



すでにここには生存者はほとんどいないんじゃないだろうか。死人が見張ってる街だしな。


「では魔人を倒しに向かいますか?」


「そうだな。だがこの街に死人が溢れているなら俺は全く戦力にはなれない。エリー任せになるけど大丈夫か?」


「ふふふ。では攻撃は私が。守りはハルヤさんということにしましょう。主従逆転ですね。」


「主従は逆転してねぇよ!」



俺たちが話していると、街の外側から声がした。



「あなたは・・・もしかして勇者か?!」



声の方を振り返ると10代後半ぐらいでいい服を着た、だが全身土だらけの人物がいた。


「あぁ、俺は勇者ハルヤだ。そしてこっちが預言者エリーだ。」


「・・・やはりそうか・・・。私はこの街の領主の息子。アマニだ。」


見たところいいところの坊ちゃんって感じだが、まさか領主の息子とはな。



「それで領主の息子がなんで泥だらけなんだ?それに今この街はどうなっている?」


アマニは重たそうに口を開き説明してくれた。



「・・・街が魔人に乗っ取られた。・・・事が起こったのは二日前だ。あたり一帯が急に暗くなったと同時に街中に悪魔みたいな姿をした大魔人レイグルと名乗った奴が急に乗り込んできた・・・。」




―――――――――――――――――――――



「クフフフ。こんにちは皆さん。私の名前は大魔人レイグル。良かったですね、この街は死から解放されるのですよ。」



「な、なんだぁ?!」

「空が暗くなったぞ!」

「変な奴が空飛んでるぞ!!」



待ちゆく人は突然現れたレイグルに驚きながら、空が暗くなっていることも相まってパニックになった。


「クフフフ!まずは皆さんがこの世界での私の手下になるのです!死という最大の恐怖から解放されることを喜びながら、死になさい。」


その一言と共に魔法が放たれた。恐らく闇魔法だろう。辺り一帯が闇に包まれたかと思うと次々に影から出てきた刃で一突きにされ殺されていった。


外に出ていた人たちはほぼ全員殺された。だが数分もすると皆が動き始めた。

そしてそのまま街の人たちを襲っていった。


「・・・ア!・・・ア!」

「ガアアアアアア!!」


「いやああああ!!」



外に出ていなかった人は家の中に突然死人が現れたんだ。パニックになりながら対応せざるを得なかった。

相手は死人。人間の時よりもかなり能力は落ちるようで倒すことは難しくはなかった。


だが相手は死人とは言えさっきまで一緒に生活をしていた街の住人だ。本気で攻撃することはどこか躊躇してしまった。そして躊躇している間に死人とレイグルの攻撃が飛んでくる。


気が付けば一人また一人と殺されて死人になっていった。

ほとんどの人が死人になっていく中でレイグルは言った。



「クフフフ!これでまた一つ街を死から解放してしまった。あぁ、私はなんと慈愛に満ちた者なのだろうか。」



―――――――――――――――――――――



「・・・今街中にはほとんど生存者はいないだろう。父と母、そして家の従者たちが命からがら私を逃がしてくれたため何とか街の外には出られたが・・・。逃げられた人は多くはないはずだ・・・。」



・・・既にこの街は陥落しているということか。

辛かっただろうな、そんな中で一人逃げてくるのは。



「私一人では何をしていいのか分からないまま森の中に逃げ込んだ。街道にも死人がたくさんいたからな。目立つところにいては追手が来る気がして森の中にある木こりの休憩所に身を潜めていたのだ。そこで空飛ぶあなたを見つけてな。もしやと思い走ってこちらに向かってきて良かった。」



憔悴しきった顔で語るアマニ。アマニは震えている。会った時からずっとだ、よっぽど怖い思いをしたのだろう。



「既にこの街は死んだ街だ。死人たちも既に死んでいる人たちだ。なのに無理矢理生かされている。・・・これはこの街の領主に連なる人間の最後の願いだ。勇者様。どうかこの街の人々に・・・死をお与えください・・・。」



アマニは涙を流しながら「死を与えてくれ」と願った。


死んだのに死なせてもらえない。

まるで人間の尊厳を踏みにじる行為に大きな怒りと悲しみを抱いたのだろう。



「・・・分かった。勇者ハルヤの名に誓って、この街を解放する。」


「・・・ありがとうございます。」


喜びなのか安堵なのか、それともこの街に死がもたらされる寂しさなのか。

複雑な表情のアマニが礼を言う。



「エリー、アマニを頼む。」


「大丈夫なのですか?ハルヤさんは死人を攻撃できませんし。」


エリーの一言にアマニは驚いている。



「攻撃が出来ない?!」


「あぁ。俺は魔人以外の人種には攻撃できない。そしてこの街にいる死人は人と見なされているためスキルの制限で攻撃出来ないんだ。」


「なんと!・・・あれだけの状態にされながら神はあの者たちを人間と呼んでくださるのですか・・・。」


そう言ってアマニはまた泣き出した。そうか、そういう解釈もあるんだな。



「魔人のところに直行して攻撃すればいいだろう。大きな魔法は撃てないがやるしかない。それに大魔人だからな。エリーが向かうのは流石に危険すぎる。」


いくらエリーが強くなったからといって大魔神はあまりに危険だ。むざむざ大魔人の前に行って死んでしまったら元も子もない。それに領主の息子は守り切らないといけない。



「今アマニを死なせるわけにはいかない。この街の領主の息子が生きているんだ。だからこの街はまだ死んでない。アマニの両親もそう願って逃がしたんだろう。だからアマニは死んじゃいけないんだ。」


きっと領主はその願いを込めて逃がしたはずだ。だからこの街のためにアマニは生きなきゃいけないんだ。たくさんの死を背負って生きることは簡単じゃない。でも、この街のために出来ることは生きることでしかない。


「・・・まだ、死んでいないか。」


「もちろんそれは解放されてから考えればいい。領主の息子だからと言って責任を取る必要もないだろう。迫る人も・・・いなくなったわけだしな。それでも心残りのない選択が出来るよう、俺は協力するよ。」


「・・・ありがとう勇者。・・・この街を・・・頼む!」


・・・アマニにとってこの街が生きていくことは辛いことでもあるだろう。死んで解放された方が責任からは逃れられる。でも、街の思いを汲むのだとしたら生きるしかない。



「だからエリーはアマニを頼む。結界魔法を張っていくからここにいれば安全なはずだ。アマニは相当に怖い思いをしたはずだからついていてやってくれ。」


「ふふふ。分かりました。ハルヤさん、勇者業が板についてきましたね。」


「うるせぇ。カッコいい勇者として後世に伝えられるためには頑張らないといけないんだよ。」


鞘の勇者と言う汚名を少しでも変えるためには努力するしかない。



「ふふふ。では私も『鞘の勇者ハルヤの伝説』を後世に語り継ぐために物語を頑張って考えておきますね。素晴らしい冒険譚に期待しています。」


「タイトルを考え直しておけよ・・・。」


「タイトルは物語の内容からつけられるものですから、ハルヤさんの頑張り次第ですよ。ふふふ。」


コイツは相変わらずだな。少しだけ肩の力が抜けた気分だ。




さて、大魔人レイグルをぶっ飛ばしにいくか。




人の尊厳を踏みにじりやがって。エリーみたいにもっと上手に踏みにじれよ。




お前みたいなヘタクソな奴は、大っ嫌いなんだよ。

申し訳ありませんが、しばらく1日1本15時の投稿とさせていただきます。

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