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Side サムエル③

突然現れた可愛らしい嬢ちゃんだが、見た目に反してやったことは凶暴だった。


力任せに、魔人をぶん殴りやがった。



魔人も俺たちと子どもに気を取られていたということを加味しても、奴が反応できないぐらいの速度の一撃が繰り出されたのは確かだ。



魔人も突然の来訪者にポカンとしている。




「ふふふ。魔人というのを初めて見ましたが、やはり凶暴な方のようで安心しました。これであれば殴っても心痛めることはありませんね。勢いをつけすぎて手は痛くなりましたが。」



そう言いながら、手をさすって痛そうにしながら、嬢ちゃんは子どもに逃げるように指示している。


魔人相手に、子どもを逃がせるほどの力を持っているという事なのか?一体何なんだあの嬢ちゃんは。



「ははは!つい油断してしまったよ!まさか僕が殴られるとはね。君は随分いい動きをするじゃないか。」


「いえいえ、私はただのか弱い女ですよ。ぜひ優しくしてください。」


「君がか弱いと来たか!つまらないと思っていたが、案外この世界は楽しそうだ!ははは!」



そう言って、魔人は標的を嬢ちゃんに変えた。子どものことはどうでもよくなったらしい。

嬢ちゃんもいい動きをするが、流石に分が悪いのか、こっちにとんでもないスピードで逃げてきた。



「おやおや、作戦会議かい?いいねぇ、どうやって私を楽しませてくれるんだい?ははは!」



相変わらず、魔人は余裕を見せてやがる。腹立つな。


こちらに近づいてきた嬢ちゃんを改めて観察するが、強そうには見えねぇ。


レベルは高そうだが、なんだろうな。歪な感じというか。力はあるのに戦い慣れてないというか。何となくアイツを思い出す。まぁ、今はそんなこと気にしてもしょうがねぇ。



「嬢ちゃん!ありがとうよ!助かったぜ!!」


「いえいえ。間に合って良かったです。私は勇者のパートナーの預言者エリーと申します。今、勇者が壁の外の魔物を駆逐しているところですから、ここを耐え忍べばじきに戦いも終わるでしょう。」


「な?!勇者だと?!それにあんたが勇者のパートナーで預言者?!」


「えぇ、と言っても私自身はそこまで力はありません。レベルは多少上がりましたが、戦闘経験は恐らく皆さんほどはありません。今も魔道具で補助しているだけです。」


「なるほど、どうりで歪な感じがしたわけだ。」


「ですが、勇者はとても強く既に魔人を二体倒しています。ですから外の敵を倒したらすぐにこちらに向かわれるかと。ここに魔人がおりますからね。」


なるほどな。どこのどいつかは知らねぇが、勇者がいるとなれば心強い。

俺たちはコイツ相手に勇者がくるまで時間を稼げばいいってことだ。



・・・だというのに、魔人は未だに余裕を保っている。


「ははは!まさか勇者がいるとはねぇ。だが、君たちの望みは果たして叶えられるかな?」


「あぁ?どういうことだ?」


「この街を襲っている魔人は私だけではない。私など足元にも及ばないほど強い、大魔人レッセイ様がおられるからな!あの方であれば、勇者であっても殺してしまうだろう。ははは!」


そう言いながら、アイツは槍で攻撃を仕掛けてくる。


クソ、相変わらず速い。フェリが盾で防いでくれるが、それでも間に合わねぇ。

俺も短剣で応戦するが、ジリジリダメージだけが重なっていく。作戦会議ぐらいさせろよ。




しかし、こいつが足元にも及ばないほど強い大魔人だと・・・?!

コイツ相手でも、俺たちは5人がかりでようやくなんだぞ?!



そんな化け物に、果たして人間が勝てるのか・・・?




「ふふふ。大丈夫です。ハルヤさんはきっと負けません。私は、そう信じていますから。」




・・・・ハルヤさん?





「・・・おい嬢ちゃん。その勇者ってやつはもしかして、黒髪で目つきが悪い20代前半ぐらいの男か?」


「あら?ハルヤさんをご存知でしたか?そう言えば、クフの街には恩人がおられると聞いたことがありましたね。」



・・・アイツが勇者だぁ?!


思い返せば、アイツは洗礼の後で怪訝な顔をしていた。もしかしたらその時から自分が勇者だって分かってたのか?勇者って職業をもらったのかもしれねぇな。



・・・アイツが勇者か。だが、今はそのことを考える時じゃねぇな。

それに一つ嬉しいことが分かった。



「そうか。・・・ハルヤは生きてたんだな。それに、こんな可愛らしいパートナーまで手に入れやがって。」


「ふふふ。ハルヤさんは元気に生きていますよ。たまにウジウジ悩んでいますが、今日も元気に女性を目で追っていましたから、元気と言っていいでしょう。」


「ハハハ!そうかいそうかい!それだけ分かれば十分だ!」





元気に生きている。それだけで今は十分だ。アイツはこの街にいるってことだし、後で会うことも出来るだろう。


だが、勇者がアイツとなると話が変わってくる。



「おい、嬢ちゃんは何が出来る?」


「私ですか?いくつかの魔道具を持っています。好きなだけ使って下さい。」


そう言って、嬢ちゃんは様々な属性の魔法が込められた魔道具をいくつも紹介してくる。


何だこれ?どんだけ高性能な魔道具だよ。しかもそれを好きなだけ使えって、金持ちなのか?

いずれにせよ、これだけありゃかなりの戦力になるな。



「よし、これだけあればあのトカゲを倒せるかもしれねぇな。」


「倒すのですか?時間稼ぎではなく?」


「俺はハルヤの親分なんでな。子分の助けを待つ親分がどこにいる。それに、ハルヤは大魔人とやらと戦ってるんだろ?もしかしたら苦戦してるかもしれねぇ。なら、助けに行かなきゃな。」


「・・・ふふふ。なるほど。ハルヤさんが恩人と言っていた理由がよく分かりますね。それで、どう戦うんですか?」


「あぁ、作戦会議しないとな。嬢ちゃん、この魔道具借りていいか?ちょっと時間が欲しい。」


「いいですよ。どうせハルヤさんの手作りですから、すぐにまた作ってもらえばいいでしょう。私の魔道具はいくらでも使ってください。」


「な・・・?!アイツの手作り?!そんな隠し種まで持ってたのかアイツは。」



驚いていてもしょうがねぇ。俺は嬢ちゃんから借りた魔道具で、氷魔法を放つ。結構な魔力を使ったが、アイツを氷の中に閉じ込められた。


と言っても、この魔法はダメージを与えられない。それに氷をこちらからも壊せねぇ。ただ、時間稼ぎとしては優秀すぎる魔法だ。逃げるにも回復にも状況整理にも使えるからな。


おかげで氷魔法の魔道具は人気だが、使い手が少なすぎて希少性が高い。嬢ちゃんが持ってて助かったぜ。


「野郎ども!作戦会議だ!アイツをこれからぶっ潰すぞ!」



そう言って、俺たち6人は話し合う。


嬢ちゃんも話を聞けば十分に戦力になりそうだった。相手が何仕掛けてくるかわからねぇから、何か仕掛けてくる前に、こちらが仕掛けて倒しておきたい。



しばらくの作戦会議で方針が決まった。アイツを閉じ込めている氷ももうすぐなくなりそうだ。



さて、俺の子分が来る前に片付けられるかね。



「随分と舐めた魔法を使ってくれましたね。それで、作戦会議は出来ましたか?」


「作戦会議?違う違う、お前を倒した後の晩飯の話をしていただけだよ。」


「ははは!5人が6人になっただけで粋がっていては、負けた時に惨めですよ?」


俺たちを煽りながら魔人は槍を繰り出してくる。同時に、俺たちもそれぞれの持ち場に散らばっていく。



「ほう?バラバラに攻撃ですか?では、一人ずつ殺していきましょうかね。」


そう言って、魔人はまず回復魔法使いのネルソンを攻撃しに行く。


やはり、戦いを熟知している。まず潰すなら回復魔法使いか魔法使いだよな。ネルソンは戦闘の中で補助魔法のサポートもし続けていたし、要であることを分かっているという事だろう。




魔人に、そんなことを考えるぐらいの知能があって助かったよ。




「やはり私のところに来ましたか。魔人とやらも、多少は考える力があるようですね。」



ネルソンへの距離2メートルほどのところで、魔人の足元で土魔法が発動した。



「な、何だ?!」


あらかじめ俺の罠術で仕掛けておいた魔道具が作用した。


その結果、魔人の足は地面に縫い付けられた。何とか槍を支えにして倒れ込んではいないが、思ったよりも固い土魔術に四苦八苦している。


「こんなもので足止めした気になるなよ!」


魔人が振り降ろした槍によってようやく土が破壊された。


しかし良い魔道具だな。だいぶ時間が稼げた。後でハルヤにあったら俺にも売ってくれねぇかな。



魔人を足止めしたところに、エドムの雷魔法が直撃する。


「く、がああああああああああ!!」


「ふん、さっきからちょこまかと。イライラしてたが多少はスッキリしたぞ。」


あれだけ避けられていたからな、エドムもイライラしていたようだ。



魔法で攻撃している間に、俺は次々に魔道具の罠を仕掛けていく。


既に魔力は全員で協力して充填済みだ。いつでも放てるようになっている。しばらくすると魔力は霧散してしまうが、この戦闘中くらいは大丈夫だろう。




魔法が直撃した魔人だが、割と元気そうだった。


「ははは!これぐらいの魔法で私は死なんぞ!それにいい作戦ではあったが、二度目はないぞ!」



まだ余裕そうに喋っているが、相手をする気はない。


嬢ちゃんの高速の拳が魔人に迫る。


「はぁあああ!」


「ぐうう!!」


何とか槍で受け止める魔人だが、速度に乗せた拳は思ったより重かったようだ。体制が崩れた。


嬢ちゃんはすぐさまその場から離れる。



そこに、間髪入れずに多数の魔道具から発生した魔法が迫る。


罠術での魔道具の使用は二つ。一つはさっき魔人の足を土魔法で固めたように、範囲内に入った瞬間に発動させるもの。


もう一つは、時間を指定して発動させるもの。


どちらも一長一短だ。前者は時間を気にしなくていいが、範囲内に仕掛けられる魔道具は一つだけ。

後者はいくつでも使えるが、照準を合わせたり、発生させるタイミングが難しい。バラバラに発動しても意味ないしな。



だから今回のように一斉に魔道具を作動させることは意外と難しい。

何とか上手くいって良かった。この辺は長年の経験がものをいったな。



俺が仕掛けられる罠はLv.6まで。嬢ちゃんの魔道具はそれ以上のものも撃てるが、残念ながら罠術以上の魔法は仕掛けられない。


それでも十分に高火力の魔法があらゆる方向から放たれたことで、魔人は逃げ場を失い、かなりの魔法が直撃した。



流石に死んだか?と確認しようとしたが、魔人の野郎は生きてやがる。しぶてぇな。

だが、だいぶダメージを与えたみてぇだ。



「クソクソクソクソ!人間風情が!竜を、魔人をなめるなよおお!!」



なんだあれは?!魔人は叫ぶと同時に、気配が一気に強くなった。


怒り狂いながら、目を大きく見開いた魔人は、羽を使い空に飛び立つ。



「貴様らには地獄を見せっ」



魔人が何かを言い終わる前に、重力魔法の魔道具が発動した。



残念だったな。罠の範囲は空中にも指定できるんだ。


空には逃がさねぇよ。




地面に撃ち落とされた魔人めがけて、アレックスの大剣が振るわれる。


「おらああああああ!!!」



あのドラゴンの首を切り落とした【渾身の一撃】だ。


【渾身の一撃】はとんでもない威力を発揮する。だが、溜め時間も多いし、さらに残念なことにその一撃で大剣が壊れちまう。


燃費が悪すぎであまり使えない技だが、今は出し惜しみしてもしょうがない。



気が付いた魔人は避けようとするが、フェリの盾術と結界の魔道具で押し返す。そこに、アレックスの大剣が振るわれた。


一刀両断、とまでは行かないが、それでも魔人の肩口から大きな傷をつけられた。



そこにエドムの雷魔法が再び飛ぶ。コイツは水魔法使いのくせに、威力ある魔法を使おうとするといつも雷魔法を選択する。おかげで、今や雷魔法の方が上手になった。



「がああああああ!!!」



流石に大ダメージを受けた魔人は、フラフラしながら、上を向いて大きく息を吸った。




・・・ハハハ!お前はやっぱり、ドラゴンなんだな!





その瞬間。場に沈黙が流れた。


魔人が口を開けているが何も聞こえねぇ。そのまま口を開けて唖然としていやがる。




俺たちがトップランカーで居続けられるのは、強いからじゃねぇ。


周到に準備するからだ。




お前が言ったんだからな?「ドラゴンと見なしてくれるか」って。


だから俺たちは、お前をドラゴンとしてちゃんと見なしてたぜ。


おかげで、【竜の咆哮】もちゃんと対策できたよ。





「終わりだな。」


聞こえないだろうが、最後ぐらいは告げてやる。




俺は短剣を片手に魔人に向かい、短剣術の【急所突き】を使う。


この技は相当に弱らせねぇと発生しないが、今のこいつなら通るはずだ。



「あばよクソトカゲ」



俺の短剣が奴の胸に吸い込まれていく。




短剣を引き抜くと、音もなく魔人は地面に倒れた。






音が何も聞こえないと、他の感覚が敏感になるな。



今日は星空が良く見える。

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