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Side サムエル②

昨日、突然空が暗くなったと思いきや、クフの街にモンスターが襲い掛かってきやがった。


その数、1万はいただろう。



だが、クフの街は冒険者も兵士もレベルが高い。モンスターたちを次々と倒していき、最後には魔人ジルダスと名乗った奴を倒した。中々強い敵ではあったが、物量で押しつぶした。


魔人ジルダスを倒したら空が晴れたので、無事に乗り切れたということだろう。警戒はしながらも皆で戦勝を祝った。


翌日になっても、空は今までと変わらない空だったからホッとした。


街の外に出ると、昨日のことは嘘ではなかったと言わんばかりに、あたり一面モンスターの死骸やら何やらが埋め尽くしていやがる。


それらを街の皆で協力して掃除していくことにした。流石に、このまま放置するわけにはいかないからな。


モンスターは素材としても食料としても使える。損害もあったが、臨時収入もあった。クフの街は人も多いしな。今回のダメージも、何とか補っていけるだろう。




少しずつ、回復していけばいい。そんなことを思いっていたら空がまた暗くなりやがった。


始めは日が暮れたのかと思った。だがこの暗さは明らかに昨日と同じ暗さだ。



クソ!またモンスターの大群が襲ってくるってのか。



街の人間はすぐに気が付き、急ぎ門の内側に撤退した。門の内側にさえいれば結界が街を守ってくれる。


大魔導士クフが作った結界の魔道具は優秀だ。ドラゴンだろうと突破はできない。


ただ、結界の魔道具は門には作用していない。そこを破られたらモンスターは街の中に入りこめてしまう。


だから俺たち冒険者と兵士は門の周りを囲むようにして陣を組み、昨日と同じようにモンスターの襲撃に備える。



昨日も倒せたんだ。疲れもあるが、いけないことはないはずだ。


そう考えていた。だが、モンスターは昨日の倍以上の数がいた。



あまりにも多い数に多少ひるんだ。それでも、俺たちが街を守らなきゃいけねぇ。街中には戦えない人間がたくさんいる。だから、門は絶対に死守しないといけねぇ。




気合十分に俺たちは門でモンスターを迎え撃つ。


皆がビビっているが、俺たちドラゴンバスターズはそんなに怖がってはいない。


「この北門には、俺たちドラゴンバスターズがいる!あんなモンスターども、ドラゴンに比べりゃ屁でもねぇ!!だからみんな、安心しろよ!!」


「ガハハハ!確かにドラゴンに比べたらあんなやつら大したことないな!!」



声をかけるとビビっていたやつらもだいぶ元気になったみてぇだ。俺の声よりもアレックスの大声の方が効いたみたいで解せねえぇが。あいつの大声もたまには役に立つ。



実際ドラゴンの威圧感に比べりゃ、どんなモンスターもそこまで強そうには見えねぇ。


あの魔人だってドラゴンほどには見えなかった。




俺たちドラゴンバスターズは半年前にドラゴンを倒した。そのおかげで、今ではS級冒険者最も近いなんて言われるようになった。


ドラゴンの死体を持って帰って来た時の皆の驚きようと言えば、そりゃあ凄かった。


あんなデカ物をよく倒したもんだと戦った俺たちも思ったもんだ。


ドラゴンの死体は、素材にしたり何だりでかなりの金になった。領主からも金一封もらえたしな。


何よりもドラゴンの骨は領主が買い取って街の広場に展示することになり、その大きさに街のやつらは俺たちをさらに称賛してくれた。


あんなデカいモンスターをよく5人で倒したもんだと。




だが、本当は俺たちだけで倒したわけじゃねぇ。もう一人いた。


それも説明したが結局俺たち5人だけの名声になっちまった。


なんせ説明しようにも当のそいつはいなくなっちまったからな。本当だったらアイツも称賛されるべきだ。なのにアイツは今どこで何をしているのか分からねぇ。



アイツがいなくなった後すぐに、俺たちはアイツを探した。探し始めてすぐにナザールの街にいるという情報が入ったからみんなで向かったが、行ったときにはもうすでにアイツはいなかった。


どこに行ったのかと聞いても誰もわからねぇと来たもんだ。


ただ、誰ともパーティーを組んでいなかったということだから、アイツ一人でなんか抱えてるんじゃねぇのかって心配になった。



それからはいくら探しても情報は何一つ見つからなかった。空でも飛んだのかってくらい足取りが全く掴めなくなった。



アイツは今頃どこで何してるんだろうな。アイツがいなきゃ今頃俺たちは死んでいたかもしれねぇ。


本当はもっと感謝したかったし、もっといろんなことを伝えたかった。


アイツは何も知らないみたいだったからな。それに、何だかんだ面白い奴だったから、せめて酒ぐらい一緒に飲みたかった。一緒に、勝ちを喜びたかった。



っと、モンスターの大群を前に、ついつい別のこと考えちまった。



アイツのことになるとどうも心配がでてきちまう。最後に見たあの辛そうな顔。アレがこびりついていつまでも離れない。


もしこのモンスターを倒したら、本格的にアイツを探しにでも行こうかね。


アイツは俺の子分であって。俺はアイツの親分であって。



親が子を見捨てちゃいけねぇんだ。




そんなことを思いつつ、俺たちは戦いに入っていった。連日の戦いだ。疲れもある。でも、ここで根を上げるわけにはいかない。



気力を振り絞り、次々にモンスターを倒していく。




だが突如として異変が起こった。街の中から火の手が上がったんだ。



「な?!どこかの門が破られたのか?!」



音魔法の【通信】が込められた魔道具で、各門と通信している奴が叫んだ。



「どこもまだ門は突破されていません!!恐らく、街壁の一部が壊されました!!」



なんだと?!この街の壁はクフが膨大な魔力で作った壁だ。そう簡単に壊れるわけがねぇ。となると、かなりの攻撃力を持った奴がいるってことだ。


そんな奴が街中に行ったとしたら・・・?



マズイ!



「おい!!兵士たち!俺は街の中を見てくるがいいか?!」


「ここは我々だけでもなんとかなります!壁が破られたのであれば相当に強力なモンスターのはず!であれば、個の能力が高いドラゴンバスターズの方々が向かうのが適任でしょう!我々に構わず討伐に向かってください!!」



流石クフの街の兵士だ。あの数の魔物相手でもちゃんと戦えていやがる。


普段からかなり鍛えてたしな。兵士長なんかアレックスより強いと来たもんだし。まぁ、きっと何とかなるだろう。




俺たちドラゴンバスターズは、門は兵士たちに任せて急ぎ街中に向かった。




煙が起こっている方に進んでいくと何匹かのモンスターが既に街中にいた。俺たちにしてみれば特に問題になりそうな奴はいなかったが、それでも一般人には危険な相手だ。急ぎ討伐していく。


その際、いくつかの建物が壊されていることが分かった。その中には穴があけられた石造りの建物もあった。



マズイな、かなり強い個体が街中に入り込んでいるとみていいだろう。俺の気配察知にも強い個体の反応が引っかかっている。


普通だったらここまで引っかかることはない。だが、その強者は、まるで余裕だと言わんばかりに気配を隠そうともしねぇ。


俺たち5人は別々に行動した方が広範囲の人を助けることが出来る。だが、かなり強い個体がいる場合1対1は危険だ。誰か一人欠けるとそれだけで危険度が跳ね上がる。


どうしても別行動が取り辛い。俺たちは急ぎ、一番強力な個体がいるであろう場所に向かう。




街の広場。ドラゴンの死体が飾られた場所にそいつはいた。




ドラゴン・・・?いや、竜人と言うべきか。


ドラゴンのような鱗を持ち、羽を生やし、槍を持っている変な人型の何かが、ドラゴンの死体に触れて何かしゃべっている。恐らく、魔人なのだろう。



「おぉおぉ可哀想に。誰がこんなに可愛い子を殺してしまったんだ。」



おっと。それはつまり、俺たちを探しているという事か。


「ソイツをやったのは俺たちだ。」


「ん?君たちは・・・?そうか、人間にやられてしまったのか。」


「あぁ、そうだ。俺たち5人はドラゴンバスターズと言ってな。カッコいいだろう?」


「ははは!確かにカッコいい名前だな・・・。私は竜魔人のミュード。竜魔人も、ドラゴンと見なしてくれるかい?」


「・・・別にいいぜ。トカゲみたいな見た目が、ドラゴンそっくりだからな。」


「そうかいそうかい。では、晴れて君たちは私の敵となったことだし、殺すとしよう。」




その一言で、戦いが始まった。


広場の人は既に避難している。何人か、逃げ遅れてしまったのだろう倒れている人もいるが、既に動かないという事は、そう言う事だろう。


これ以上体に傷がつかないようにしてやりてぇが、それも無理そうだ。



それぐらい、強い相手だ。


奴の攻撃は一撃一撃が重い。


フェリの盾術でも間に合わねぇ。攻撃が貫通しやがる。

ネルソンのサポートがあってもかばいきれねぇ。


アレックスの大剣も、エドラの魔法も、上手く当てることが出来ねぇ。すばしっこい奴だ。



俺も近接戦闘や魔道具でサポートをするが限界がある。


いくつかの地点に罠を仕掛けていくが、上手く発動させられない。見破られているのか。



奴の爪と火のブレスは、あのドラゴンを彷彿とさせる。



だが、あの時以上に重く、速い。予備動作も少ない。


おまけにドラゴンよりも小さいから、的を絞り辛い。



「ははは!君たちは人間にしてはやるじゃないか!おかげで楽しくなってきたよ!期待以上だ!」



随分と楽しそうに戦ってくれるじゃねぇか。



だが、こっちにそんな余裕は全くない。


3人で攻撃を仕掛け続け、2人がサポートをし続けてようやく善戦できているだけだ。


全く隙がねぇ。クソ、何人か兵士来てくれねぇかな。



「ははは!楽しいねぇ!」



クソ!また火を吐きやがった!コイツの攻撃は、この街がどうなろうと知ったこっちゃねぇといった威力で攻撃しやがる。


俺たちは街に被害が出ないようにしてるってのに。ちょっとは人間の気持ちも考えろよクソトカゲ!



俺たちは何とか魔人ミュード相手に戦っていたが、分が悪くなってきた。アイツは余裕そうな顔をしているが、俺たちはかなり消耗している。


前のドラゴンみたいに演技と言うこともあるかもしれねぇが、多分違うだろう。アイツにそこまでダメージを与えているわけでもねぇしな。



そんな中、悪い状況がさらに悪くなることが起こった。




「うわぁぁぁぁん!!ママぁぁぁぁ!!どこーー?!」




子どもが、大声をあげながら一人やって来てしまった。


それも、俺たちとは反対方向、ミュードの後ろに出てきてしまった。




「おやおや。こっちは今楽しい戦いの最中なのに、水を差さないでくれたまえ。」




魔人は、そう言って子どもに向かっていく。



マズイ!


エドムの魔法も流石にこの速度には追い付けない。


俺がこの中では一番敏捷が高い。急ぎ追いかける。




だが、子どもの場所が悪すぎる。




やめろ。子どもに手を出すな!


俺たちの街の人間を、これ以上殺すなクソトカゲ!!!





「やめろおおおおおおおおおおお!!!」





その声が、その願いが叶ったのか。魔人が吹っ飛んだ。




いつだったか。あぁ、ドラゴンと戦った時だ。



アイツが、ハルヤがやってきた時も思ったな。


タイミング良すぎだろって。




今回も同じだ。だが、今回はちょっと違うな。


聞いたことのねぇ声が響いた。




「ふふふ。か弱い子どもに手を挙げてはいけませんよ。人間の世界では常識として教わるのですが、そちらの世界では教わらないのですか?」

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