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Phase•Rose(フェーズ•ローズ)  作者: 榊原つむり
第1章 始まりの歌
2/3

2話十柱の配下達

 



「うう……。」


 微睡みから覚めるとマイルームの天井が見えた。どうやらゲームを起動しながら気絶してしまったようだ。だが床で倒れた筈なのに、今いる場所はベットの上だ。とてもフカフカしている。ゲームとは思えないほど心地の良い触感を堪能しながらメニュー画面を開いた。


「…調子が悪いし今日はログアウトしよう。」


 だがメニュー画面でどれだけ探してもログアウトを示すコマンドが見当たらない。それどころか運営への問い合わせをする項目すら消えていた。とはいえPRは思考で操作するゲーム。現実世界の体を使ってHMDを頭から外せば問題ない…はずなのだが、


「私はまだ夢でも見てるのか…?」


 手で頭を触っても自分の髪の毛に触れるだけでHMDを被ってなんかいなかった。


 それは何を意味するのか。


「まさか…。」


 ゲームの世界に閉じ込められたり、ゲーム世界に転移するなんて題材のアニメや漫画が存在するが、まさに今の状態がそれではないか?と脳裏によぎった。


「いやまさかね。ゲームのやりすぎかなぁ…。」


 ハハハ、と乾いた声で笑っているとマイルームのドアが静かなノック音とともに開かれた。


「失礼いたします。ニーナ様、お加減いかがでしょうか?先ほど倒れていたときは胸が破裂するかと思いました…。それに嫌なことが立て続けに…下界にも異変が…。」


 心配そうな声で扉から現れたのは、私がこのゲームで1番最初にテイムした存在、名前はラビィ。もともとは兎型の小さな魔獣だったのだか1番初めに捕獲したため愛着があり最終段階まで進化、課金アイテムを使った強化を行い、今では私よりも背が高い人型の美しい兎人となっていた。


 それにしてもフルボイスのゲームとはいえこのように捕獲した魔物が流暢に話すことなんてできなかったはずだ。今まで定型文しか話せなかったし感情もここまで豊かに表現されることはなかった。先ほどのゲーム世界に転移したという妄想がだんだんと現実味を帯びてくる。


「ラビィ。イビルナーヴァ十柱を第一層に集めよ。至急話すべきことがある。」


「かしこまりました。しかし御身は先ほど原因不明の発作が起き倒れたばかりです。もう少しお休みになられてからのほうが良いのではないでしょうか?」


「構わない、充分休息は取れた。それよりもお前たちに話すことの方が重要だ。」


「御意。では直ちに十柱を集結させます。」


 返事するや否やラビィの姿が掻き消える。そして1人残された後何を話すべきか頭を整理しながら第一層”嘆きの祠“に足を進めるのだった。


 ***


 多種多様な十体の魔物たちが緊張した面持ちで第一層に集結していた。どの個体もフェイズ•ローズではテイムするなんて不可能だろうと思われている魔物たちばかりだ。そのうちの一体である黄金のたてがみを携えた獣王種”ガリオン”が喜色を隠せぬ顔で声を出した。


「ニーナ姫から十柱を集結せよとの命令か。ワシは外での任務が多いゆえこうして顔を合わせるのは久しぶりだ。あぁ楽しみだ。」


 鋭い牙を空気に晒しガハハと大きな声で笑っていると、そばに居た白髪の少年が嫌そうな顔をする。


「おい、そのマヌケ面をくれぐれもニーナ様の前で出すなよ。出したら首刈り取って鳥の餌にしてやる」


 物騒なことをガリオンに言う少年。見た目は中性的な大人しい顔つきの少年なのだがその右腕には身の丈を遥かに超える大きさの巨大な鎌を持っていた。彼こそは死神種“デスイーター”。この十柱の面子の中では最も新参者だが、単純な強さでは上位に食い込む存在である。


「姫は寛大な心をお持ちである。ワシがお主の言うマヌケ面をしていようがお許しくださるだろうさ。それにそんな嫌味な性格をしとると姫に嫌われるぞ?」


「…なに?」


 不穏な空気が流れる中、明るいハスキーボイスが両者の間に割り込んだ。


「でもさーガリオンの気持ちわかるよ。アタシも姫に会うこと少ないしこうして顔を合わせるってことになると、ワクワクしちゃうのは仕方ないと思うけどなー。」


 黒髪の上に付いている角から僅かに雷が瞬きながら話すのは幻獣種“リィン“。その明るい性格もあって仲があまり良くない十柱同士の関係を円滑にする。


「静かにしなさい。そろそろニーナ様がいらっしゃいます。貴方達はこのイビルナーヴァの幹部達。子供じゃないのだから、そこにいるハルを見習ってお行儀よく立っていなさい。」


「…うむ、ラヴィよ。お主の言いたいことは分かるのだがハルは立ちながら寝とるだけだと思うぞ?そやつを見習うと言うのはワシらも立ち寝したほうが良いのか?」


 淫夢族(サキュバス)のハルを指差しながら呆れた様子のガリオン。ラヴィはそれを無視して前を向いた。

 そして間もなく第一層の何もない空間から時空の歪みが突如現れた。それは高位スキルである転移魔法の予兆だ。各十柱たちは顔を引き締めながらその時空の歪みから出てくる愛すべき主人の来訪を今か今かと心待ちにした。


『待たせたね、みんな。集まってくれてありがとう。さあ話を始めよう』




 ーーー未知の世界への一歩が今始まる。




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