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異世界で闇落ちした俺は大好きだった彼女の宿敵(ラスボス)となりました。  作者: ドットオー
第6章 魔王降臨

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第70話「瓦解」

ホームルームーー

陽宝院はたしかに電話で私にそう告げた。

B組のこれからについて話し合いたいと戯言を言っていたがそれは違う。

“罠だ”

鷲御門派を潰すための罠。

ホームルームはクラス全員の合議制ーー

陽宝院派は14人、対する鷲御門派は9人しか残っていない。

ホームルームの場で私たち鷲御門派を処罰する話し合いが行われたら圧倒的に不利⋯⋯

クソッ、中立の紫芝さんたちは敵か味方かよくわからないし、アテにならない。

どうしたら⋯⋯ホームルームがはじまったらおしまいだ。


『乾さん⋯⋯』


能天気に手を振って駆け寄ってくるのは川南君だ。

「乾さんよかった無事で」

「川南君こそしぶとく生きていたのね」

「乾さん、なんか僕に当たり強くない?」

「さぁね」

川南君から視線をそらすと三好さんに連れ添われてやってくるエミルの姿が目に止まった。

「よっかたぁ〜すずのちゃんと再会できた」

エミルの顔を見たらなんだかホッとした。

「泣かないのエミル」

「なんだろうね。わざわざ僕たちをディフェクタリーキャッスルに呼び出すなんて」

「にっぶ!」

「え⁉︎ ひどくない?」

「そんなの陽宝院の企みに決まっているじゃない! 稲葉がやらかした失態を同じ鷲御門派の私たちが挽回することができなかったのよ。

挙句に右条にやられてこのザマ」

顔や防具は泥や煤だらけで汚れているし髪もボサボサで体も傷だらけ。

これじゃあコテンパンにやられて帰って来たのが丸出しじゃない。

「こんな私たちを見たら陽宝院派どう思うかしら? 」

「どうって⋯⋯」

「マウント取ってくるに違いないわ。こっちは三鷹くんも沼田君も死んで数は奴らの方が断然上よ。

これからはじまるホームルームの議題はおそらく『鷲御門派の処遇』についてーー

クラスの主導権は完全に奴らに握られた。私たちを牢屋送りにすることも処刑することも可能なのよ。

今日のホームルームで私たちは殺される」

「ハハ⋯⋯ありえないでしょ。だって僕たち同級生だよ」

ため息を吐いて頭を抑えずにいられなかった。

「だから、川南君にイラッとするんだね。私⋯⋯」

「え?」

「こうなったらホームルームがはじまる前にひとりでも多くの陽宝院派を殺す。なんとしても奴らより数で上回るの。

陽宝院の思い通りになんてさせない」

「ちょっと待って! 自分が何を言っているのかわかっているの? 乾さん」

「わかってる! そうじゃないと私たちが殺される。そうでしょ。東坂」

私が叫ぶと、柱の裏からバツが悪そうな顔で東坂が出てきた。

「やはり気づいていたか。乾」


***

東坂慎次視点

やはり乾の勘は鋭いな。

ここは観念してあいつらの前に姿を見せるしかなかった。


ウィギレスーー


はじめてフェンリファルトの皇都を歩いたとき俺は驚かされた。

“略奪、暴行、殺人”

それが平気で行われている現状を目の当たりにして、俺は日本の警察のようなものをつくらないかと陽宝院に提案した。

それはこの異世界の人たちが犯罪に怯えることなく日常を過ごせるようにしたいという気持ちからだ。

“治安を守るために働く“

そのはずが、ウィギレスができてみれば任務は仲間の監視と取り締まりばかり⋯⋯

乾たちのやりとりを見ていたら、つくづく自分の立場が嫌になってきたぜ。

月野木だって⋯⋯


「東堂、月野木はどうした?」

「それが“距離を置きたい”って言い出してリグリット村に籠っているのよ」

「は⁉︎ なにから?」

「わからない。この前、突然ひとりでどこかへ行ったかと思えば、ふらっと戻って来てそれから様子が変なの」

「ーー」

⋯⋯そうだよな。月野木も嫌になっちまうよな。

なぁ、陽宝院。お前は俺たちをどうしたいんだ?


***

昨夜のことだ。

ディフェクタリーキャッスル内にある陽宝院の執務室に呼び出された俺は陽宝院から唐突に告げられた。

「暴発⁉︎」

「“ホームルーム”と聞いて彼女は必ず暴発する。

なんせ乾すずの君はとても賢いからね。僕の考えを先読みしておもしろいように立ち回ってくれるはずだ。

きっと彼女が気づくころには僕の手のひらで踊っている」

「それでなぜ俺に乾たちを取り締まらせようとする? 仲間だろ」

「鷲御門 凌凱逮捕のためだ」

「は? どうして鷲御門を!」

「鷲御門は仲間を信じすぎた。それゆえに稲葉君の暴走を許した。そして女王陛下を危険に晒した。

罪としては充分だろ」

「だけどニュアル女王を救ったのも鷲御門だ」

「安心したまえ。君はもうじき鷲御門を逮捕せざるおえない状況を目の当たりにする」

こいつ⋯⋯

「ずいぶんと余裕だな。そんな手の内を今から俺にあかして、俺が裏切ったらどうするつもりだ」

「それは大丈夫さ。君はただ目の前で起こる状況を見ていることしかできない」

「⁉︎ ⋯⋯」


***

ここはなんとしても乾たちに今の状況が陽宝院のつくりだした陰謀だということを教えなくては。

「違うんだ乾! これはーー」


『あらー、鷲御門派の皆さんじゃない』


小鳥遊杏樹!

おまけに国城カエナ 、菊池かおり 、南里美希(みなみざと みき)、小鳥遊の親衛隊が揃いもそろってなんだ?

ホームルームがはじまるまでまだ時間があるはずだぞ。


「アンジュ親衛隊⋯⋯」

乾が目じり吊り上げて小鳥遊たちを睨みつける。

「よせ乾、敵意を向けるな!」

「あら、おっかない顔。すずのちゃん、私好みのかわいい顔しているのに台無し」

「誰があんたなんかのためにかわいくしてやるか!」

「それでずいぶんと汚れているの?可笑し」

「とっととくたばれブス!」

そう言って剣の柄を握る乾に危機を察した菊池と南里が小鳥遊を守るように前に出る。

「杏樹様に失礼な口の聞き方は許しません!」

「そうです」

さすがは親衛隊というところだな。

「チッ親衛隊うざい⋯⋯だからお前たちをここで殺してこのうさを晴らす」

「⁉︎ ダメだ乾!」

「ならこちらも受けて立ってよ」

乾と小鳥遊の全身にオーラが帯びる。

こいつら完全に紋章の力を解放しやがった。

「お前たちよせッ! クラス内でのケンカはご法度だ」


『だったら僕が取り締まるよ』


「ナユタ⁉︎」

暗がりから靴音を鳴らしてやってくる。

如月那由多がなぜここに⋯⋯

「先に仕掛けてきたのは乾さんってことで合ってるよね?」

抜刀したナユタは小鳥遊のとなりに立って切っ先を乾たちに向ける。

「川南君、竜巻をつくって国城さんを攻撃して! 国城さんはエミルの能力を相殺してしまうわ」

「ちょっと待ってよ。乾さん!」

躊躇する川南に瞬間移動にしか見えない速さでナユタが接近して斬りかかる。

川南も咄嗟に剣で受け止めてナユタの攻撃を防ぐ。

「如月君もやめてくれ! 僕に戦う意思はない」

「意思とか関係ないよ。掟を破った人間は斬る。それがウィギレスの仕事」

「わからずや! 『シュナイダー・ハリケーン』」

風を纏った川南が体を空中で回転させて反撃に出た。

川南とナユタは目まぐるしく動き回っては一撃離脱を繰り返す。

川南もナユタもスピードと剣による連続攻撃を得意としていて2人の戦いはほぼ互角。

決着はつきようがない。


『月光蝶乱舞』


小鳥遊と言い争っていた乾がしびれをきらして攻撃に出た。

鷲御門派の乾が先に手を出す⋯⋯恐れていたことになった。

「手を出すな乾ッ!」

乾は剣から蝶の形をした光の群れを放つ。

しかし、その攻撃は小鳥遊には届かない。

すぐに親衛隊の菊池と南里がシールドを展開して防ぐ。

「カエナ」

『体力向上、能力拡張、メンタル強化!』

「さっさと私のモノになっちまいな。乾すずの!」

大理石の床にできた大きなブラックホールの中から無数の腕が伸びてきて乾の身体を縛り上げる。

そして乾の側にいた石動と三好までも。

「「「ああッ!」」」


どうしてこうなる⋯⋯

あっと言う間に陽宝院派と鷲御門派の争いがはじまっちまった。

このままじゃ陽宝院の思惑通りになっちまう⋯⋯


「⁉︎ ーー」


どうして⋯⋯どうして来ちまったんだ鷲御門⋯⋯

鷲御門は一言も発しないまま、争う両陣営の間に立った。


『7つの聖魔剣よ。愚者たちに鉄槌をーー』


「やめるんだ!鷲御門ーー」


“君はただ目の前で起こることに立ち尽くしているしかない”

陽宝院は紋章の力とかじゃなくて常に人の数手先を読むことにズバ抜けていた。

それはもはや予測の域を超えた予言⋯⋯


鷲御門の背後に出現した7つの紋章から飛び出してきた剣たちが乾や小鳥遊たちに襲い掛かる。

手がつけられなくなっていた両派の争いは圧倒的な力の前に一瞬で鎮まった。

俺はただそれを見ているしかなかった。

意識もなく床に倒れているナユタや川南、乾たちを前にしても立ち尽くすことしかできない。

そして俺自身が証人になってしまったことに気づく。

「やりすぎだ鷲御門⋯⋯こいつら全員、瀕死の状態じゃないか。これじゃあ俺はお前を逮捕しなければならない」

鷲御門は無言のまま俺に背中を向けて立ち去った。


***

次の日

俺は東堂を連れて鷲御門が謹慎している部屋へとやってきた。

手に鷲御門の逮捕状を握りしめて。

「鷲御門! 入るぞ」

俺はドアをノックして声を掛けた。


ーー


返事がない。

ドアノブに手を掛けるとドアが開く。

「⁉︎」

なぜ鍵が開いている?

俺は東堂と顔を見合わせてから一気にドアを開けた。

「鷲御門!」


「「⁉︎」」


部屋には鷲御門の姿があった。

それよりも鷲御門とテーブルを挟んで対面に座っている人物に俺たちは強い衝撃を覚えた。

「月野木⋯⋯なんでこお前がここにいるんだ⋯⋯」


つづく



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